seeing’s diary

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なぜ太平洋戦争中の日本はバカだったのか

(ブログ目次はここをクリック) 

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015072402000076.html

日本陸軍のフィリッピンの戦没者は、敗戦直後に77%が飢え衰弱で病死した
(1945年初めに14%前後だった病死率は徐々に増加し、敗戦直後の九月には77%に上った。)

 

日中戦争や太平洋戦争の戦没者230万人:6割「餓死」の学説も=無謀な作戦が惨劇招く

2014年08月15日

 

 歴史学者の故・藤原彰氏(一橋大名誉教授)は旧厚生省援護局作成の地域別戦没者(1964年発表)を基礎データに独自の分析を試みた。

著書の「餓死した英霊たち」(青木書店)で、全戦没者60%強、140万人前後が戦病死者だったと試算。

さらに「そのほとんどが餓死者ということになる」と結論づけた。

 

 個別の戦闘ではある程度のデータが残っている。

「戦史叢書」(防衛庁防衛研修所戦史室編さん)によると、

ガダルカナル島の戦い」(1942年8月?43年2月)では、

日本陸軍3万1000人のうち約2万人が戦没。

その約75%、約1万5000人が栄養失調症、マラリア、下痢、かっけなどによる死者だったという。

 

太平洋戦争戦跡地

戦没者の60%強140万人は餓死であった

http://www7a.biglobe.ne.jp/~mhvpip/PacificWar.html

230万人はどのように戦死したのか?

◆「英霊」たちの区分けⅡ――百数十万の日本兵の大量餓死は、なぜ引き起こされたか
ニューギニアでは、数次にわたって14万8000人の大兵力が送りこまれ、その90%を超す13万5000人が亡くなりました。自決した方面軍司令官の安達中将が「その大部は栄養失調に起因する戦病死」と記したように、原因は餓死でした。)

インパール帰還兵の証言二
(半死の状態の者は自殺用に「手榴弾をください」と訴えた。だめだというと「私を殺してください」と哀願してきた。長い軍隊生活の中でも、これほどの惨状は初めてだった。)
(インパール作戦は「糧は敵から奪うので何とかなる」という作戦だった)
(この指揮官は、安倍内閣のように部下の慎重論に一切耳を貸さなかった。あげくは、作戦に参加した3人の師団長を全員解任、更迭した。)

 

 次に、兵隊たちの過半数が餓死した戦争に至る歴史を見ます。


-日本の、 「科学を論じないしきたり」 の歴史的背景-
戦時体制下における教育思潮
から引用。

 

1917年(大正6年)から1918年(大正7年):
 第一次大戦(~1918年)の好況に社会の一部は潤いながらも、

米をはじ めとした物価は高騰を続けた。
米騒動(1918年)小作争議(1922年~)労働争議(1921年3万人の争議)(1922年~)

など、

社会全体が大きな動揺をしていた。
 また、河上肇の個人雑誌『社会問題研究』や山川 均等の『社会主義研究』等により社会主義運動が活発化した。

 

(当ブログのコメント)江戸時代では、百姓一揆を弾圧し首謀者を見せしめに処刑していたが、大正時代の政府は小作争議に対しては、問題を根本的に改善する農地改革の知恵を出した。

 しかし、労働争議に対処する知恵は出さなかったように思います。

 

1919年から27年まで、

 日本の工業生産の増加率は欧米諸国を越えていたのであるが,
このような工業発展は,中国市場を中心とする国際的進出と,国内における労働条件の低水準維持策とによって,一応支えられていたのであった。

 

1919年には、コミンテルンが成立し、共産主に基づく世界革命の可能性が現実味を帯びていきました。

 このような状況に対して、原内閣は社会主義団体の監視強化、労働運動に対する融和、そして思想善導といった対策を実施しますが成果は乏しいものでした。

 

1921年には、その手詰まり感を背景として、過激社会運動取締法案が検討されるに至った。

 この法案は、共産主義者による国内での思想宣伝行為に対処することを目的として成立が企図されたが、法案があいまいであったので廃案となった。

 しかしこのような失敗は、まさに治安維持法成立のために必要な条件と表裏一体であり、法案からあいまいな文言及び宣伝罪を排し、内務省と司法省が協力し、両院を説得し、1925年に治安維持法を成立させるに至った。

 

1922年に、非合法(治安警察法違反)の党として日本共産党創立された。

1923年9月1日、関東大震災: 震災直後に緊急勅令で治安維持令が公布された。

1923年に、日本共産党の大検挙。

1924年、全国高校で、社旗禁圧・暴圧反対運動。
1925年、一高・三高の研究会解散命令に対する学連の抗議運動。

 

1925(大正14)年、政府は大正中期以降の反体制運動の高揚に対して,普通選挙法と治安維持法を制定した。
治安維持法制定当時、政府は「慎重に運用」「一般国民とは関係ない」と説明した。


《2015年現在の状況は、1925年当時の状況と類似している。2015年施行の「秘密保護法」「集団的自衛権関連の法律」が1925年の治安維持法に対応すると思われる。》

1925年末から1926年初め、京大生を中心とする治安維持法・出版法違反事件がおきた。

 

1927年:日本での「金融恐慌」

 

1928年6月には,治安椎持法が改正された。
---------補足-----------

・1928年の治安維持法の改正の趣旨
 この時の改正は2つの目的を持っていました。
①一つは 結社罪の最高刑を 死刑 としたこと *2
②もう一つは目的遂行罪(結社に加入していなくても、国体変革等を目指す結社の目的に寄与する行動を罰するもの)の設定でした。
 特に後者について、改正後に拡大適用されて猛威を振るうことになります。

 この改正(改悪)は、 政権や公安警察にとって不都合なあらゆる現象・行動を治安維持法違反にしたという意味を持つ

---------補足おわり------

 

第1の思想弾圧事件(3.15事件)

 

 1928年3月15日:第一回普選(1928年2月)での無産政党共産党)の進出に脅威を持った政府は,選挙直後の3月15日,全国いっせいに日本共産党・労農党・労働組合評議会・無産青年同盟の関係者を多数検挙し,さらに労農党以下3団体の解散を命じた。(3.15事件)
(逮捕者の中に学生150名が含まれていた)

 

治安維持法違反被疑者の弁護人も逮捕される

 3・15事件の弁護人のリーダー格となった布施辰治は、大阪地方裁判所での弁護活動が「弁護士の体面を汚したもの」とされ、弁護士資格を剥奪された。

 さらに、1933年(昭和8年)9月13日、布施や上村進などの三・一五事件、四・一六事件の弁護士が逮捕され、前後して他の弁護士も逮捕された。

《日本労農弁護士団事件》1933年9月~11月,日本労農弁護士団に属する左派系弁護士30人が検挙された。

 その結果、治安維持法被疑者への弁護は思想的に無縁とされた弁護人しか認められなくなり、1941年の法改正では、司法大臣の指定した官選弁護人しか認められなくなった。

 

1928年7月には,内務省に保安課が新設され,思想取締まりにあたる特別高等警察を全国に設置し,憲兵隊に思想係を設置するなど,その権力は思想にまで介入することになり,反体制運動への弾圧が強化されたのであった。

 

1928(昭和3)年12月1日,政府は教学振興・国体観念養成を声明して, 「 思想善導(青少年健全育成) 」 への方向で,翌29年8月に,文部省は 教化総動員 の運動を企画し,これを全国的規模で推進した。

(当ブログのコメント: 思想善導 は、現代の日本の 青少年健全育成 に対応する概念です。)

 

 (中略)

 

★1928年に、文部省内に学生課(後の1934年の「思想局」の前身)を設置し、組織的に学生の思想を取り締まった。

 

1929年3月:国会議員の山本宣治(死後に共産党員に加えられる)が、国会で思想善導(「青少年健全育成」に対応する)について質問した後の3月5日に暗殺された。

 

(当ブログのコメント:思想善導は、現代の日本の青少年健全育成に対応する概念です。

 

 また、戦後の日本政府は、(弾圧した国民の復讐を恐れ)、日本占領軍に逆らってでも治安維持法を守ろうとした

(1945年10月4日、GHQから治安維持法の廃止を要求された東久邇内閣は、それを拒絶し総辞職した)

 しかし、戦後にアメリカから与えられた民主主義体制によって日本の治安が良好に保たれたので、

戦前の治安維持法も、共産主義者の暗殺行為も、思想善導も必要無かった。)

 

第2の思想弾圧事件(4.16事件)

 

1929 S(4)4.16事件

・3.15の思想弾圧後に再度、全国規模で全国一斉検挙 700名検挙

 報道禁止されていた

・知識階級の子弟が多く支配者層はショック

共産党にとっては壊滅的な打撃 活動は以後地下にもぐる

・日本軍の山東出兵反対運動主流派逮捕される

・1929.11.5 新聞報道を解除し「共産党事件」と発表

・幹部党員には無期懲役などの重い刑

 

1929年に、文部省内の学生課を学生部に昇格させ(後の1934年の「思想局」の前身)、学生の思想の取り締まりを強化した。

 

第3の思想弾圧事件(司法官赤化事件)

 

1932年:司法官赤化事件:

 1932年11月12日、東京地方裁判所判事・尾崎陞が日本共産党員であるとして、治安維持法違反により同地裁の書記4人とともに逮捕された

翌1933年2月から3月にかけては
長崎地方裁判所の判事と雇員各1人
札幌地方裁判所の判事1人
山形地方裁判所鶴岡支部の判事と書記各1人
も相次いで逮捕された
 逮捕された9人の容疑内容はいずれも
研究会を開いた
カンパに応じた
連絡を取り合った

などの行為だったが、
日本共産党の目的遂行のためにおこなった行為とみなされ、全員が有罪判決を受けた。

 

(これらの行為は、 政権や公安警察にとって不都合なあらゆる現象・行動を罰する治安維持法の 逮捕要件を満足する

 

これらは、共謀罪の逮捕要件 を、満足する。

 

 

第4の思想弾圧事件((長野県と)全国教員赤化事件)

 

1933年 2月4日:

 長野県で教員が思想問題で多数(66校、230名)検挙される(長野県教員赤化事件)。

 この事件を契機に、全国各地で同様の弾圧が行なわれ、1933年12月までに岩手県福島県香川県群馬県茨城県、福岡県、青森県兵庫県熊本県沖縄県で多数の教員が検挙された。

 

第5の思想弾圧事件(滝川事件)

1933年:滝川事件

 1933年3月になり共産党員およびその同調者とされた 裁判官・裁判所職員が検挙される 「司法官赤化事件」 が起こった。
 この事件をきっかけに、5月26日、文部省は文官分限令により
京都帝国大学法学部の滝川幸辰教授の休職処分を強行した。
滝川の休職処分と同時に、京大法学部は教授31名から副手に至る全教官が辞表を提出して抗議の意思を示した。

 

1934年に、

(1)文部省の学生部(1928年に設置した学生課)を 「思想局」 へ昇格させた。

(2) 国民精神文化研究所が、文部省の直轄する研究所として発足した。
 これらが教学思想を確立するための活動を開始させることとなった。

 

1936年に設置された「日本諸学振興委員会」が,学問領域の全般にわたって「日本学」の方向を打ち出した。

 

あらたな取締対象を開拓

 1937年6月の思想実務者会同で、東京地裁検事局の栗谷四郎が、検挙すべき対象がほとんど払底するという状況になっている状況を指摘し、特高警察と思想検察の存在意義が希薄化させるおそれが生じている事に危機感を表明した。

(1935年から1936年にかけて、予算減・人員減があった)

 そのため、あらたな取締対象の開拓がめざされていった。 

 

治安維持法適用対象を拡大し、宗教団体、学術研究会(唯物論研究会)、芸術団体なども摘発されていきます。

 

1937年3月には思想局(1928年の学生課)から『国体の本義』7)が発行されて、教学刷新の基準が明確にされた。

 

1937(昭和12)年7月には,すでに,教学刷新の中心機関である 思想局 (1928年の学生課)が、文部省外局 「教学局」 に昇格され,学問研究に対する統制の中枢をなした。

 

(当ブログのコメント: この 教学局は、 1937年に開始された、「国民精神総動員」運動の名のもとに先の教化総動員を再編成した大規模な 日本精神発揚の教化運動 を推進する中心であり、教化運動を計画する本部です。安倍内閣を支配している「日本会議」は、この、「 大規模な 日本精神発揚の教化運動 」を理想としていると推察します。)

 

1937(昭和12)年 の第一次近衛内閣時代には, 日中戦争の開始 (同年7月7日)という国際的危機にあって, 「国民精神総動員」運動の名のもとに,先の教化総動員を再編成して,大規模な 日本精神発揚の教化運動 が展開されることになる。戦争開始直後の8月24日に, 閣議で 『国民精神総動員実施要綱』6)が決定され,内務・文部両省を中心に運動が推進された。

(当ブログのコメント:安倍内閣が、 閣議で 『集団的自衛権』を決定したことが、この戦前のやり方に似ている)

この運動には, 全国神職全国市長会帝国在郷軍人 の他,労働組合組織など多数の団体が参加し,

(当ブログのコメント:「日本会議」はこの運動と同じく、神職会と軍人会から構成されていますね)

近衛内閣は,その運動目標として,挙匡一致・尽忠報国堅忍持久を掲げ,国体観念の宣伝,注入に努めた。

 さらに,部落・町会・隣組など隣保組織まで行政組織の末端に組入れて,上意下達の道筋を確立しようとした。
 1938(昭和13)年には,地方道府県国民精神総動員実行委員会 が活動し,地方官僚を中核に殆ど全団体の代表者を網羅した委員会の主導によって,

懇談会・講演会・映画会の開催,
ポスター・パンフレット・ビラの配布,
新聞・公報・ラジオ放送などによる宣伝,
また,祈願祭の執行,
奉公歌歌詞募集・寄金募集など,
その他,強調週間の実施などの諸行事が推進されたのであった。
 1939(昭和14)年4月,平沼内閣時代に,

国民精神総動員委員会第二回総会は,
「国民精神総動員新展開の基本方針」 を決定した。

平沼内閣のもとに,荒木貞夫大将を文相に置いたが, その主導で,
総理大臣直轄の委員会と地方府県の主務課の設置によって, 右翼団体を始めとし,その他の教化団体と行政系統とを駆使して, 皇道主義・一君万民思想の普及に徹することになった。
 1940(昭和15)年の第二次近衛内閣に至り,先の総動員本部は解散されて,生活組織を基礎に全国民を対象とする 大政翼賛会 の組織による運動が実施されることになった。

・・・

 1937(昭和12)年7月には,すでに,教学刷新の中心機関である 教学局(1928年の学生課) が文部省外局として設置され, 学問研究に対する統制 の中枢をなした。

 

・・・

算数の役割を「数理思想の滴養」(「国民学校令施行規則」)に置き,本来,科学的精神の精髄である 批判的精神を除却(除去)し た合理的精神の涵養(水が自然に土に浸透するように、出しゃばらずに ゆっくりと 国家方針に合った思想を養い育てること)が求められたのであった。

・・・

戦前の国民的な心理,意識,生活を支配し,規制していたものは, 国体論と精神主義を柱とする天皇イデオロギーであり,
それはあらゆる非科学性の根源であった。
また同時に,それは国家存立の根幹であるとみなされていたからである。
 科学は明治以降の外来,輸入のものであり.日本の伝統や国粋とはなじまぬもので,日本の欧米化を促進するもとになるという危惧の念があったと思われる。
 したがって,科学は少数の研究者に委ね,国民多数にとって必要で 大切なのは,科学的知識よりも忠孝の道である ,という認識であった。

<・・・

 ところで,1938年に, 一部軍需産業は好況を招き ,労働力不足は一定の賃金上昇をもたらした。 

・・・

 やがて戦争の影響が国民の日常生活の次元にまであらゆる角度から押し寄せてきた時に,多面的な生活科学への要求がおこってくる。 

・・・

しかし, 「科学」の名称が一定の効用をもつのもこの一時期を限りのものであった 。 

・・・

 しかし戦争の激化は,生活理念において 「科学」に代って再び「精神」が重視される ことになる。
太平洋戦争下において,それは「決戦生活」という言葉で表現された。 

・・・

 

1940年1月 「生活図画事件」
(生活綴方教育が「子どもに資本主義社会の矛盾を自覚させ、共産主義につながる」として、教員らが一斉検挙される事件が起きる。逮捕されたのは、五十六人ともいわれる。)

 

 大熊信行が,1943年7月から11月まで「婦人公論」に連載していた『新家政学』は,軍の干渉により執筆禁止となった。
その理由は,内容に天皇中心思想を欠くというものであった。
これは明らかに, 科学に代る精神主義が再び重視されてきた ことを意味している。 

・・・

  このように,戦時下の生活科学構想はそれ自体戦争協力の学でありながら,しかも権力と精神主義の攻撃の前に崩れていったのである。

 (もっと読む)

 

(注意)安倍政権を支配する「日本会議」が目指す戦前の国民的な心理,意識,生活を支配し,規制していたものは,国体論と精神主義を柱とする天皇制イデオロギーであり,それは あらゆる非科学性の根源であった。

 

1945年に、

22歳の司馬遼太郎が栃木県佐野市で陸軍少尉として終戦を迎えた。
その時に、大本営からきた東北人の少佐参謀が、
アメリカ軍(連合国軍)が東京に攻撃に来た場合に、栃木から東京に移動して攻撃を行うという作戦を命令した。
その命令の遂行方法に関して、ある若い将校が、
「市民と兵士が混乱します。そういった場合どうすればいいのでしょうか。」
と参謀に聞いたところ、
参謀は

「轢き殺してゆく」

と言った。
司馬遼太郎は、その参謀の返事を聞いて、
「なぜこんな馬鹿な戦争をする国に産まれたのだろう?
いつから日本人はこんな馬鹿になったのだろう?」
との疑問を持った。
司馬遼太郎は、その疑問に対する答えとして、
「昔の日本人はもっとましだったにちがいない」として、
「過去の22歳の自分へ手紙を書き送るようにして小説を書いた。」
と述懐している。


第41回 インパール作戦

 

 これからお話するインパールは、竹山道雄さんの小説「ピルマの竪琴」の舞台にもなっ た戦場です。

お読みになった方も多いと思いますし、映画にもなりましたが、インパールガダルカナルと共に太平洋戦争で最も悲惨な戦いが行われた所です。

「酸鼻を極める」という言葉がありますが、インパールがまさにそうでした。

1944年三月から始まったインパール作戦には、第十五軍司令官牟田口廉也中将が指揮する三個師団を中心に、約十万の将兵が参加しましたが、進撃と攻防四ヵ月、作戦が失敗に終わり、その敗走は一千キロ、五ヵ月にも及びました。

三万五百二人が戦死し、戦傷病者四万一千九百七十八人。

損耗率実に72%という莫大な犠牲者を出したのです。

 

 中でも悲惨だったのは、犠牲者の多くが戦闘で死んだのではなく、食べるものがないための栄養失調、赤痢マラリアで体力を消耗し、猛烈な豪雨の中での敗走中に倒れたことでした。

撤退して行く道は日本兵の死体だらけ、蛆虫が小山のようにたかっています。

蛆というのはあんなにちっちゃくても、これだけ集まると、人間の死体なんてもう一日で完全に食い尽くしちゃうんだそうです。

下がれば下がるほど、道の両側は日本兵の白骨で埋まり、兵隊たちは退却路を「白骨街道」、また靖国神社へ行く道だというので、「靖国街道」とも呼ぶようになったのです。

 

司令官の牟田口は作戦に反対した参謀長を更迭し、部下の反論、慎重論にも一切耳を貸しませんでした。

あげくは作戦に参加した三人の師団長を全員解任、更迭するといった、日本の陸軍史上にも例を見ない異常な事態を招いています。

問題点は、早くから数多く指摘されていたのに、大本営も「現地指揮官が出来ると言うから、やってみる」。

こんな程度の、心許ない作戦発起だったのです。

 

インパールだけではなく、ガダルカナルでもそうでしたが、
「行け行け、どんどん」の積極論だけを良しとし、慎重論を腰が引けていると見倣しがちな日本陸軍の体質にも、「インパール悲劇」の種があったように思います。

 

二月八日にチンドウィン河を渡って来たイギリス軍のウィングート少将率いる挺身部隊に、当時牟田口が師団長の第十八師団は翻弄されたのです。
イギリス軍の兵力は三、四千人と少ないものでしたが、昼間は密林に潜伏して無線進路により空中補給を受け、夜になると攻撃を仕掛けて来ます。


第十八師団は東奔西走一ヵ月、何とか撃退は出来たものの、牟田口は「ここからは攻めて来ない」と思っていたアラカン山系の峻険が、意外に安全ではないことを思い知らされたのです。


牟田口は、イギリス部隊の行動が十分な空中補給があって初めて可能なんだという、この一番重要な点を見落としていたのです。

 

第十五軍参謀長になった小畑信良少将は、「補給の権威」と言われた人で、

「補給上、到底無理だ」。

こう反対意見を述べると、たちまち更迭されてしまいました。

・・・

・・・

 実は、インパール作戦がまさに始まろうとしている時、その三日前の三月五日夜、重大な警報が出ていたのです。ウィングート少将率いる空挺部隊ビルマ北部、第十五軍の背後に降下して来たのです。

ビルマ防空を担当する罫五飛行師団長の田副登中将は、すぐ牟田口の所に駆け付け、

インパール作戦を中止し、この敢に当たるべきだ」。

こう進言したのですが、牟田口は聞きません。

「単なる後方撹乱だろう」

と言うのです。

田副は空からの偵察で、集城資材を空輸していることを掴んでいました。しかも第五飛行師団は、一月に爆撃機五十四機が南方戦線に転用され、実働可能機数は百機ほどに減っています。

「敵は飛行場を建設するでしょう。そうなればビルマは内側から混乱し、インパール部隊への補給も中絶することになります」。

第十五軍の援嘆が出来なくなると訴えたのですが、牟田口の作戦計画には最初から航空支援は入っていません。

飛行師団に求めたのはチンドウィン河渡河の際の戦闘機による援護だけで、飛行機の力というものを全く軽視していました。

「敵は自ら求めて袋の鼠になった。虎の子の空挺を降ろしてきたことは、これ以上の幸いはない。空挺作戦に注意を奪われている虚に乗じて、インパール攻略を断行する」

と言うのです。

田副はラングーンにも飛んで、河辺方面軍司令官にも作戦中止を求めたのですが、河辺は

インパール作戦は始まったばかりだ。たとえ方面軍がやめると言っても、もはや大本営はお許しにならないだろう」

と、受け付けません。

 

 ところが、この空挺部隊はそんな生易しいものではなかったのです。イギリス軍はまず百機のグライダーに二個旅団、九千人を乗せ、グライダーは使い捨てにして、兵器、弾薬と共に大量の築城資材を空輸していました。

強固なコンクリート陣地を作り上げると、飛行場建設にかかり、さらに二個旅団を送り込んで来たのです。

イギリス第四軍司令官のスリム中将は、空からの偵察で日沸軍のインパール作戦の動きを的確に掴んでいました。

手薄になった第十五軍の背後に空挺部隊を送り、ビルマ北部、中部一帯から日水軍の一掃を狙った作戦だったのです。

・・・・

インパール作戦の部隊は、「上空を飛び回っているのはイギリス機だけ」と嘆くことになり、空からの攻撃で大きな打撃を受けることになるのです。

・・・・

・・・・

 しかも、一見順調に見えた日本軍の進撃は、イギリス軍にとっては予定の行動だったのです。

スリム中将は、第十五軍の後方に空挺部隊を送ると共に、十五軍正面の部隊には後退作戦をとらせました。

日本軍に険しい山越えをさせて疲れさせ、インパール盆地に誘い込んで、補給路が延び切ったところで叩こうというのです。

形の上では日本軍が包囲していても、イギリス軍の抵抗は円筒陣地を構築して頑強でした。

砲兵を真ん中に置いて、その周りを円を描くように戦車、重火器で固め、こうした防御陣地が蜂の巣のように配置されています。

陣地同士は無線で連絡を取り合い、上空には飛行機がひっきりなしに飛んできて、攻撃、補給に当たります。

まあ、どっちが包囲しているのか、分からないようなものでしたが、戦線が膠着してくれば、補給無視がまず糧食欠乏となって、じわじわやって来ました。

 

 コヒマでは、一面のテニスコートを挾んで、わずか40~50mの間に日英両軍が対峙していたんだそうです。

話し声も聞こえるし、朝には朝食の匂いがプーンとして、すきっ腹にこたえました。

わずかにありついたのが、空からの『敵さん給与』です。

イギリス軍輸送機が色とりどりのパラシュートで補給物資を投下したのですが、お互いの第一線が余りにも近過ぎたため、かなりの量が日本軍の方に落下しました。

茶色の麻袋を開けると一斗缶が四個。

その一つずつにバン、ミルク、煙草に缶詰、チョコレートからブランデーまでぎっしり詰まっています。

それに引き替えわが兵糧といえば、焼き米に岩塩。

それさえなくなって、兵隊たちは牟田口が「食欠乏せぱ、敵を蹴散らしてこれを取れ」。

こう言っていたのを知っていましたから、「冗談じゃねえ。てめえがここまでやって来て、蹴散らしてみろってんだ。

無駄口ばかり叩きやがって…」と、怒ったそうです。 

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・・・・

 東条の「インパール作戦継続」の命令は、「インパールの悲劇」を最小限に食い止める最初のチャンスをつぶしただけではなく、かえって第十五軍を督励し、苛酷な戦闘を強いる結果になっていきます。 

・・・・

・・・・

 インパールの戦いで、「作戦決定」以上に無責任だったのが、「作戦中止」の決断だったと言ってもいいでしょう。

・・・・・

 作戦中止の決定までに、何と時間のかかったことか。

しかし作戦は中止されても、悲惨な撤退はまだまだ続いていたのです。

マラリア赤痢、そして飢えに喘ぐ兵隊たちは、猛烈な豪雨の中、三々五々と長蛇の列を作り、泥濘(でいねい:ぬかるみ)の道をよろめきながら、ひたすら歩きました。

イギリス軍の爆撃、戦車に追われ、山道にハシゴをかけ、木の根を伝って逃げましたが、小銃は捨てても飯倉だけは放さなかったそうです。

道端には、行き倒れの兵隊が増えていきました。

虚ろな目を間いたまま、願中に群がる蝿を追い払う気力もなく、忍び寄る死を待つだけ。

ボロボロの軍服の兵隊が夢遊病者のように寄ってきて、

「兵隊さん、お願いです。米を…」

とすがります。

兵隊が兵隊を見て

「兵隊さん」

と言う。

まさに「兵隊乞食」でした。

 

 朝日新聞記者として従軍した丸山静雄は、爆音が聞こえて、橋桁の下に駆け込むと、兵隊が一人寝ています。敵機が去ってホッとしてその兵隊を見ると、白骨の兵隊でした。

頭蓋骨が戦闘帽をかぷり、白骨の手が手袋をはめ、白骨の足が靴を履いていると言うのです。

丸山は「インパール作戦従軍記」に、書いています。

 

 「死体はポツンと、ただ一体だけ横たわっているようなことはなく、一体の死体のあるところには数十の死体が続いていた。

人間は孤独であるとか、孤独を愛するなどというが、やはり一人ぽっちでは死ねないのであろう。

よく見ると、死体の横たわっている側はやや高く、山径に面して勾配があり、あたりにはあまり木がなく、比較的明るくひらけていた。

濃密なジャングル内の薄暗く、ジメジメした地域や湿地帯にはあまり死体はなかった。

やはり、こざっぱりした少しでも美しいところで最後は息を引きとりたかったのであろう」。

悲しい話です。

・・・・

・・・・

 インパールの日水軍将兵は、圧倒的な戦力の違いの中で実によく戦いました。

悲惨な敗戦の責任は、全て牡損な作戦計画を強行した牟田口にありましたが、

当の本人は最後まで自己弁護に終始したのです。

昭和四十年代、新聞社やテレピ局、雑誌社を訪ねては、『わが作戦に誤りなし』と吹聴して回る牟田口の姿が見られました。

そして丸山記者の「インパール作戦従軍記」を読むと、「牟田口の下に、この将軍あり」といった感じの、ひどい将軍の話が出てきます。 

 

 

『敗北を抱きしめて』(岩波書店)歴史家ジョン・ダワー著

 

1945年4月から6月まで続いた沖縄戦では、1万人以上のアメリカ人が死んだ。11万人以上の日本軍が壊滅した。沖縄住民の約3分の1、おそらく15万人におよぶ男女と子供が殺された。

 

 日本の降伏により、日本軍の実態が明らかになった。日本軍の集団としてのまとまりや規律は、軍部がくりかえし宣伝した「忠」とか「和」とかいった理念の上にではなく、実は上からの抑圧を強制していく権威主義的な仕組みの上に築かれていた。上官は、尊敬よりも恐怖によって命令を徹底させていた。そのため、敗戦になると、それまで抑圧されていた深い復讐願望が一挙に解放されることになった。

 極端な場合には、そうした敵意から、元上官を殺害した者もいた。

 降伏後、こうした感情は、はじめて公然と表現された。ある復員軍人は、自軍の指揮官たちの暴虐によって殺された戦友たちの霊を、どう慰めたらいいのかと問いかけていた。昔の言葉に、敵を「冥土の土産にする」というのがある。これは自分が死ぬときは敵を道連れにするという意味であったが、自分の戦友たちは、いざ玉砕のおりには敵ではなくて上官の1人を冥土の土産に連れていくつもりであったと述べている。

 日本の降伏の前には考えられなかったこうした実態暴露は、「1億1心」なる戦争中の宣伝が、たわ言にすぎなかったことを白日の下にさらした。

 

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 この日本軍の体質は、太平洋戦争中は日本の支配下にあった韓国の軍隊にも遺伝しているのではないか、と推察します。
(1)韓国軍での乱射事件捜査結果を発表(韓国軍内のいじめが原因)(2014年7月15日)
(2)2014年7月31日、韓国海軍の「要注意(関心)兵士」が、所属していた軍艦内で首をつって自殺していたことが分かった (2014年8月1日)
(このところ韓国では、6月にGOP(一般前哨)銃乱射、7月27日には陸軍兵士2人が自殺と、同様の事件が相次いでいる。)
(3)韓国軍の兵士集団暴行死で引責:韓国陸軍参謀総長が辞意(2014年8月5日)
(4)韓国で軍人による犯罪は昨年7530件 過去5年で最多(2014年8月7日)
(5)韓国軍兵士の4割がうつ病、日常的ないじめなどが原因(2014年8月18日)

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1945年

 占領軍の指揮官のマッカーサーは、日本の徹底改革&天皇制維持の姿勢を決めていた。ワシントン政府は、日本の改革・天皇制いずれにもフラフラしてた。結局はマッカーサーが独断専行で決めていく。

 そのマッカーサーを、日本国民は熱烈歓迎する。
ここで労働基準法を作り組合活動を合法化し、戦前・戦中に拘束されていた社会主義者・共産主義者が釈放される

1945年10月4日、

 マッカーサーから治安維持法共謀罪)の廃止を要求された日本の東久邇内閣は、それを拒絶し総辞職した。

 すなわち、日本の支配層は、敗戦後に、弾圧した国民の復讐を恐れ、日本占領軍に逆らってでも治安維持法を守ろうとした

 

 しかし、戦後にアメリカから与えられた民主主義体制によって日本の治安が良好に保たれたので、

戦前の治安維持法共謀罪)も、共産主義者の暗殺行為も、思想善導も必要無かった。

 

 

「児童を保護するため」と言った児童ポルノ規制法は、実際は、

「児童ポルノ単純所持罪は児童を逮捕するための法律かも」

でした。

(このグラフの元データは、警察庁の生活安全の確保に関する統計のうち、「平成25年中の少年非行情勢について」の報告による)

 

同様に、「国民をテロから保護するため」と言うテロ準備罪は、

「国民を逮捕するための法律」のようです。

 

もう一度言う、福島原発事故の主犯は安倍晋三だ! 第一次政権時に地震対策拒否、事故後もメディア恫喝で隠蔽…
2016.03.11
京都大学工学部原子核工学科出身の吉井議員(共産党)は、2006年3月に、津波で冷却水を取水できなくなる可能性を国会で質問。第一次安倍政権が誕生 して3カ月後の2006年12月13日には「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」を政府宛に 提出。「巨大な地震の発生によって、原発の機器を作動させる電源が喪失する場合の問題も大きい」として、電源喪失によって原子炉が冷却できなくなる危険性 があることを指摘した。

 同年12月22日、「内閣総理大臣 安倍晋三」名での答弁書では、吉井議員の以下の質問に以下の返答をした。

(吉井):「原発からの高圧送電鉄塔が倒壊すると、原発の負荷電力ゼロになって原子炉停止(スクラムがかかる)だけでなく、停止した原発の機器冷却系を作動させるための外部電源が得られなくなるのではないか。」
(安倍):「外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも、非常用所内電源からの電力により、停止した原子炉の冷却が可能である。」』 

 

 【 特定秘密保護法、自由主義社会からの脱落への途を歩み出した日本 】
AP通信 / ワシントンポスト 11月26日
(自由・平等を保障する民主主義に、キバをむき始めた安倍政権
「日本の報道の自由に対する深刻な脅威」国外の有識者からも深刻な懸念
国民の監視の目が届かないところで、国民の目に触れることなく、自分たちが望む形にこの国を変えてしまうための環境づくり)

また自民党は、テロ準備罪(治安維持法)の成立に向けて、以下の憲法改悪案で運用したいと考えているようです。

憲法36条)公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

自民党案では:「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、これを禁ずる。」に変えます。
テロ準備罪(治安維持法)の運用等で止むお得ないと総理大臣(安倍)が判断した場合は、拷問を許可するようです。 

 

共謀罪で日本の同人マンガが壊滅する

共謀罪は、

非実在児童ポルノを雑誌などに掲載する者と、

その雑誌などを見る者を

児童ポルノ共謀罪で逮捕する。
それは、以下の法律によって定められる。

 

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律

 

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部改正)

第一条 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)の一部を次のように改正する。

 

(中略)

 

第六条の次に次の一条を加える。

(実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画)

第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的犯罪集団

(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)

の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、

 

その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、

関係場所の下見

その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、

当該各号に定める刑に処する。

 

 ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

 

 

(中略)

 

 

別表第三(第六条の二関係)

(中略)

 

八十 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第五条第一項(児童買春周旋)、

 第六条第一項(児童買春勧誘)又は第七条第六項から第八項まで(児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対する提供等)の罪

 

(以下、省略)

 

※ 法案テキストは以上です。

 

もし「共謀罪」が成立したら、私たちはどうなるか【全国民必読】 

 本来、日本国における児童買春・児童ポルノ処罰法は、実在する児童のみを保護するために立法されており、実在の児童をモデルにしていない絵が処罰対象となるはずはないのである。

 しかし、表現の自由に対し抑圧的な意見が世論の有力な一角を占めていることは事実である。

共謀罪の適用に関しても、取締機関がこれに迎合する形で摘発のターゲットを定めることは十分に考えられる。

 

 

(本情報掲載元記者のコメント) 

 

 

今後について

 既に報道されている通り、上記政府案については、テロ対策という名目であるにもかかわらず、法案内に「テロ」「テロリズム」という文言がないことが指摘されています。これについては与党内からも問題視する声があがり、テロに関する記述の追加が検討されているようなので、今後上記法案にこの点の変更が生じる可能性があります。

 

今後、逐一の変更に応じて上記内容の更新をしていけるかどうかは断言できませんが、他記事等を通じて公開できればとは考えています。

 

また、内容についても、以前共謀罪法案の問題点を指摘した記事の時点と根本的に問題は変わらない状態ですが、政府側の説明を踏まえ検討した内容を別途記事を書ければと思っています。が、いつになるかは不明です…。

 

以前書いた共謀罪(テロ等準備罪)法案の問題点についての記事は下記のものです

 

 

当記事には上記最新版の法案内容は反映していませんのでご了承ください(もっとも基本的な問題点はほとんど変わりません)。

 

 

2005年(平成17年)政府提出案

2005年(平成17年)第三次小泉内閣の時代に3度目の法案提出となった「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」において、共謀罪については以下のように規定されています。

 

(組織的な犯罪の共謀)
第六条の二
次の各号に掲げる罪に当たる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
 一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮
 二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、第三条第二項に規定する目的で行われるものの遂行を共謀した者も、前項と同様とする。

この条文によれば、共謀罪として処罰されるのは、

 


 

  1. 4年以上の懲役・禁錮の犯罪が
  2. その犯罪行為を実行するための組織により行われる場合に
  3. その犯罪を実行しようという具体的・現実的な合意をすること

 


となります。しかし、2005年から2006年の国会継続審議の中で与党が修正案として提出した法案の最終形では下記のようになっています。

 

第六条の二
 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的な犯罪集団の活動(組織的な犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が死刑若しくは無期若しくは長期五年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪又は別表第一(第一号を除く。)に掲げる罪を実行することにある団体をいう。)の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該組織的な犯罪集団に帰属するものをいう。)として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、その共謀をした者のいずれかによりその共謀に係る犯罪の実行に必要な準備その他の行為が行われた場合において、当該各号に定める刑に処する。ただし、死刑又は無期若しくは長期五年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪に係るものについては、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減刑し、又は免除する。
 一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮
 二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、第三条第二項に規定する目的で行われるものの遂行を共謀した者も 、前項と同様とする。
3 前二項の規定の適用に当たっては、思想及び良心の自由並びに結社の自由その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限するようなことがあってはならず、かつ、労働組合その他の団体の正当な活動を制限するようなことがあってはならない。

この条文は、2005年提出の政府原案と比べて、下記の点が変更となっています。

 


 

  1. 組織の定義について、一定の重大犯罪の実行を目的とするものに限定した。
  2. 対象となる犯罪について、組織の意思決定に基づき、その効果・利益が組織に帰属するものに限定した。
  3. 共謀罪成立には、共謀だけでなく、共謀者のいずれかが犯罪準備行為を行うことが必要とした。

 


この3回目の法案提出以降、何度か法案提出の動きがあったものの実際には提出されていません。この法案を原案としつつ、その後の政府与党内の検討を経て修正された法案が提出されるものと思います。

 

与党修正案の可能性

この記事を執筆している2017.1.17時点の報道によれば、政府自民党党は強い懸念(特に連立与党である公明党)に配慮し、上記法案の内容よりも犯罪構成要件を厳しくした内容に修正して法案提出する予定と報じられています。

条文を見ないとその実質はわかりませんが、下記のような修正が行われるようです。

 


 

  1. 共謀罪成立の要件として具体的な準備行為を必要とする
  2. 共謀罪の対象となる犯罪を原案の676から300程度に減らす

 


参照:「共謀罪」対象300程度に=公明要求で絞り込み-政府:時事ドットコム

 

問題点(論点)

 

共謀罪新設の必要性(立法事実)はあるのか

立法事実とは、その法律を制定する根拠となる事実であり、その法律の合理性を支える社会的、経済的、政治的、科学的事実です。

もう少し簡単な言い方をすると、その法律が必要とされる理由となるような事実、そしてその法律の目的や手段が正当で合理的なものだと言える理由になるような事実のことです。

共謀罪(テロ等準備罪)を新設する組織犯罪処罰法改正案について言えば、テロ犯罪が発生する具体的な危険があること、また、それが認められたとしてテロ犯罪の具体的な危険に現行法では十分対処できず共謀罪(テロ等準備罪)新設が必要であること、あるいは、その他特別な事情(国際関係等)により共謀罪(テロ等準備罪)新設が必要不可欠であること等です。

また、法改正の必要性が認められたとしても、その法改正の内容がその必要性・目的に照らして必要最低限の合理的なものになっているかも問題になります。

 

テロ対策の必要性

 

テロの不安

諸外国で頻発するテロ事件に関する報道を日々目にすれば、日本においてもテロ犯罪対策は必要だと感じるのは当然だと思います。また、国際テロ組織が日本を敵として認定したことや、日本で過去に起きた地下鉄サリン事件の例を想起すれば、日本がテロ犯罪に無縁ではないと考えるのも無理はないことです。

こした不安からすれば、2020年のオリンピック・パラリンピック開催との関係でテロ対策の必要性を主張する安倍首相の言葉に同意する人たちもいるでしょう。

 

安倍晋三首相は十日、共同通信社との単独インタビューに応じ、政府が通常国会に提出する方針を固めた「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案に関し、成立させなければテロ対策で各国と連携する国際組織犯罪防止条約が締結されず「二○二○年東京五輪パラリンピックが開催できない」と指摘。

2017.1.11付東京新聞紙面より

しかしながらまず、以前よりも日本国内でテロが起きる現実的危険性が高まっているのかどうかについて、慎重に検討する必要があります。諸外国でテロが頻発しているから、日本国内でもテロが起きる可能性は高いだろうという抽象的な推測だけでは、国民の権利を制限する法改正の基礎となる立法事実とは言えません。現実にその危険性が高まっていることを示す事実が必要です。

これについては、少なくとも議論の際に問題となるようないわゆるテロ行為が行われた事実や、その計画が発覚したというような事実は、私の知る限りではありません。もちろん、国際情勢と無関係に考えることも出来ませんが、かといって諸外国でテロが頻発しているからというだけでは国内法の立法事実には足りません。具体的な国内におけるテロの危険性の「現実的」危険性を改正を推進する側が証明しなければなりませんが、それについて明確な説明はまだされているとは言えません。

今後の国会での議論・答弁を見ていくしかないでしょうが、現在のところは共謀罪(テロ等準備罪)の必要性の基礎となるようなテロの現実的危険性は無いように思えます。実際、これまでの法務省の説明においても、このようなテロの危険を前提にした立法の必要性はほとんど説明されず、後程述べる条約との関係での必要性のみが強調されてきたように思います。

 

現行法でテロ対策は不十分なのか

さらに、仮にテロの現実的危険性が高まっているとして(あくまでも仮定ですが)、共謀罪(テロ等準備罪)が存在しない現在の日本は、テロ対策が不十分なのでしょうか。

■ 現行法も既遂→未遂→予備→共謀と法益の重要性に応じて処罰規定を用意している

日本の刑法は、原則として法益侵害(法によって保護される利益、例えば生命・身体・財産等への侵害)が生じて(既遂)初めて犯罪が成立することを原則としています(原則として既遂処罰)。しかし、共謀罪(テロ等準備罪)新設が必要だとする立場からは、テロによって重大な結果が生じる前に摘発・処罰できなければ実効あるテロ対策は行えないということなのでしょう。

一方、日本の刑法には既遂犯処罰の例外として、法益侵害の結果が発生していなくても、その犯罪行為にとりかかり(実行の着手)があれば、法益侵害の危険性を発生させたとして処罰できる未遂犯処罰の規定があります。結果が発生する前に摘発しても一定の行為があれば摘発・処罰できます。例えば、殺人罪、放火罪、往来危険罪等をはじめとした多くの犯罪に未遂処罰の規定があります*2。しかし、テロ対策を強調する立場からすれば、それでもまだ足りない、ということなのでしょうね。実行の着手があってから摘発するのでは間に合わないと。とすれば、テロ犯罪として重大な法益侵害をもたらすような犯罪については、実行の着手がある前、つまり犯罪の準備段階でも摘発・処罰できるような法整備が必要だという主張につながります。

ところが、日本の刑法では、既遂・未遂処罰以外に、一定の重罪についてはその犯罪の準備を行う「予備」を例外的に処罰しています。例えば殺人予備罪、放火予備罪、内乱予備罪等です*3。これらは犯罪の実行に至らなくても、犯罪の予備行為を直接処罰できるものです。多くのテロ犯罪の準備行為は、殺人予備罪や放火予備罪によっても摘発・処罰は可能です。

もちろん、予備罪の成立には、その犯罪を犯す目的とともに、犯罪の実行に実質的に役に立つ準備行為が必要なので、共謀罪(テロ等準備罪)新設を主張する立場からは、それではダメなのだ、行為がなくても罰することが出来なければ足りないのだ、という主張が聞こえてきそうです。ただ、先ほど見たように、政府与党は共謀罪(テロ等準備罪)法案成立のために、「共謀罪成立の要件として具体的な準備行為を必要とする」という法案の修正を行うと報道されています。とすれば、予備罪で対応できる内容と実質的には変わらないのではないでしょうか。逆にそうではないとすると、要件追加される「具体的な準備行為」には大きな意味はないことを自白するようなものです。

また、具体的な準備行為を必要とせず「共謀」のみで成立する犯罪が現行刑法にもあります。特別重大な法益侵害の危険性のある犯罪行為については「共謀」そのものを犯罪として処罰する、という考えです。具体的には内乱陰謀罪(78条)、外患陰謀罪(88条)、私戦陰謀罪(93条)です。

 

行刑法では、原則既遂を処罰、例外的に未遂を処罰、さらにより例外として予備を処罰、そして本当に特別な場合にのみ共謀を処罰するものとしており、それらの違いは各犯罪によって侵害される法益の重要性や大きさ等を主な基準としているのです。

 

しかし、共謀罪(テロ等準備罪)法案においては当初、600を超える犯罪について「共謀」を犯罪として処罰するものとして一気に範囲を拡大しようとしています。現時点(2017.1.17)の報道では、政府与党は対象犯罪を300程度まで減らす方向で調整中とのことですが、それでも今までの刑法のあり方からすれば、相当な範囲の拡大です。 

 

テロ犯罪対策として抑止・検挙・処罰すべきなのは、我々がテロという言葉で思い浮かぶような無差別殺人、大量殺人であり、直接これらと関係のない犯罪にまで拡大する必要はないはずではないでしょうか。

 

■ 銃刀法、さらには共謀共同正犯理論によっても準備に参加した者を処罰できる

また、日本は銃砲刀剣類所持等取締法という銃砲や刀剣の所持を厳しく取り締まる法律があり、実際も諸外国に比べて厳しい運用が行われているのは周知の事実です。これによっていわゆる実際の殺人等の実行行為にいたらない、いわゆるテロ行為の準備行為を取り締まることも十分可能です。

加えて、刑法には明確な規定はないものの、判例によって共謀共同正犯理論が確立されており*4、これによれば共謀に参加しただけで直接実行行為を行っていない者の処罰も実際に行われています。

■ テロ防止に関連する国際条約で国内法上の犯罪を規定

さらに、テロ防止に関連して13の国際条約を締結*5、そのうち1つを除きすべての条約を批准して、条約上の行為を国内法上の犯罪として規定しています。これらの犯罪の中には未遂以前の段階で処罰可能なものが含まれており、テロ対策として、実行行為に至る前の準備段階で摘発・処罰できる体制があります。

 

これほどに、重大犯罪や国際テロ犯罪について、実行行為に至る前の準備段階でも摘発・処罰できる法がある現状であり、加えて近年においていわゆるテロ犯罪やテロ犯罪の準備段階について摘発された例は私の知る限りありません。これまでの法体制で対応できないような現実が我々の前に存在すると言える状況ではない、と私は思います。

 

国際組織犯罪防止条約第5条は立法事実となるのか

この点は多少込み入った話でわかりにくい部分もあるのですが、簡単に書いておきます。日弁連のサイトにこの部分の詳細説明があるので、関心があれば参考にしてください。

日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:日弁連は共謀罪に反対します(共謀罪法案対策本部)

 

共謀罪を新設しないと条約が批准できないのか

国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(国際組織犯罪防止条約(パレルモ条約))は、「重大な犯罪」について共謀罪を設けることなどを求めています。

 

第5条  組織的な犯罪集団への参加の犯罪化
1 締約国は、故意に行われた次の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
(a) 次の一方又は双方の行為(犯罪行為の未遂又は既遂に係る犯罪とは別個の犯罪とする。)
 (i) 金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの
 (ii) 組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為
   a 組織的な犯罪集団の犯罪活動
   b 組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)
(以下略)

これを受けて政府与党は、共謀罪を設けなければこの条約5条の求める義務を充たせずこの条約を批准することができない、としています。安倍首相が先ほど引用した共同通信のインタビューで「成立させなければテロ対策で各国と連携する国際組織犯罪防止条約が締結されず」と言うのも同じ趣旨です。

ところで、法務省の説明などを読んでも、共謀罪(テロ等準備罪)の立法事実として政府与党が主張しているのは、テロの現実的危険性が高まっているという事柄ではなく、「この条約を批准しなければ国際的に批判され、批准するためには共謀罪新設が必要」ということが専ら言われています(前述したテロ発生の現実的危険性がないにも関わらず、テロ対策として共謀罪を新設しようとするその姿勢に強い疑問を感じますが、ここでは一旦置きます)。

しかし、政府与党が成立させようとしている共謀罪(テロ等準備罪)を国内で規定しなければ、本当にこの条約を批准することができないのでしょうか。

国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約第34条は、これに関する規定をしています。

 

第三十四条 条約の実施
1 締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置(立法上及び行政上の措置を含む。)をとる。(以下略)

つまり、日本は日本の法律の基本原則を逸脱するような措置をする必要はないのです。もし共謀罪(テロ等準備罪)が日本の刑法体系を逸脱したり矛盾したりするなら、条約批准のためにそのようなものを設ける必要はない、と条約は言っているのです。そして、後ほど述べる通り、共謀罪(テロ等準備罪)は日本の法律の基本原則に反します。

そもそも各国が行う条約の批准について、国連がその適否を審査するわけではなく、またこの条約上も締約国会議が審査するともされていません。つまり、各国が一方的に批准の意思表示をすれば足りるので、現状で批准の障害となるものはありません。この条約を批准していない先進国はごくわずかであり、批准しないと国際的に批判を受ける可能性はあります。しかし、批准できないのは国内に共謀罪がないからではなく、内閣が国会の承認を経て批准の意思表示を行わないからに過ぎません。

また、この国際組織犯罪防止条約以外の条約で、各国に立法措置を求めているにもかかわらず、日本はその立法措置を行わないまま条約を批准しているものすらあります。例えば、人種差別撤廃条約です。この条約は「人種的優越又は憎悪に基づくあらゆる思想の流布」「人種差別の扇動」等について処罰立法措置をとることを義務づけていますが、日本はこれを留保したまま条約を批准しています *6ヘイトスピーチを処罰するような法律は日本にはありませんが、この条約を政府は批准しているのです。なぜ、国際組織犯罪防止条約についてだけ、共謀罪を成立させないと批准できない、と言い張っているのでしょうか。極めて疑問です。

 

諸外国の例

それでは、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を既に批准している他の国は、各国内で包括的な共謀罪の法整備を行っているのでしょうか。もしそうであれば、日本政府が共謀罪の新設を行わなければ条約を批准できないというプレッシャーを国際社会から受けていると言えなくもないかも知れません。

これについては、日弁連が調査をしています。それによれば、米国、ブラジル、モロッコ、エルサルバドルアンゴラ、メキシコも、組織犯罪の関与する重大犯罪の全てについて共謀罪の対象としていないことを認めているそうです。特に米国においては、州刑法の中には共謀罪が極めて限定的で条約の要求する処罰範囲が確保されていないことを前提にしつつ、州での立法をせずに批准に際し留保(条約の特定の規定に関して自国についての適用を排除・変更する目的をもって行われる一方的宣言)を行っています。

 

国際組織犯罪防止条約はテロ対策ではない

そもそも、共謀罪(テロ等準備罪)新設の理由としている国際組織犯罪防止条約は、テロ対策を念頭に置いて成立した条約ではなく、マフィア等の国際組織犯罪への対処を目的としたものでした。条約の採択は2000年(平成12年)であり現在とは国際情勢が大きく異なります。アメリカで起きた9.11のテロ事件も2001年の出来事であり、条約採択後のことです。

条約の中身を見ても、犯罪収益の洗浄や司法妨害等についての対処が中心となっており、テロリズムに焦点は当てられてはいません。しかも、2020年東京でのオリンピック開催が決定したのは2013年で、それ以前に政府与党は共謀罪法案を3度国会に提出しています。そもそも、国内でのテロ対策という理由は共謀罪の立法事実としてはほとんど考慮されてこなかったのです。

にもかかわらず、その後の諸外国でのテロの蔓延や、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催にあたりテロ対策が重要だとして、この条約を引き合いに出すのは、あまりにもご都合主義です。

 

国民への欺瞞だけでなく国際社会への欺瞞でもある

政府は長年にわたり、共謀罪を新設しなければ国際組織犯罪防止条約を批准できない、としてほとんどの先進国が批准しているこの条約を批准しないできました。しかし、これまで見てきた通り、共謀罪新設なしに条約を批准することは可能であり、諸外国の例からも共謀罪がないことを理由に批准しないことには合理性はありません。他の条約においては留保の上批准をしているにもかかわらず、この条約だけ批准しないのは一貫性を欠いています。共謀罪新設の根拠としてきたこの条約に対する態度は、共謀罪新設という目的のために条約を利用しているのではないかという疑義すら感じます。

このような態度は日本国民を欺くのみならず、強力を求める国際社会への欺瞞ですらあると私には感じられます。

 

結論:立法事実の存在は疑わしい

このように見ていくと、

 

  1. 日本国内においてこれまでになかった新たなテロの現実的危険性は確認できない。
  2. 現行法においても重大犯罪の準備行為について摘発・処罰は十分可能。
  3. 国際組織犯罪防止条約は包括的な共謀罪(テロ等準備罪)の新設なしに批准可能である。

ということから、共謀罪(テロ等準備罪)を新設する法改正を行うような立法事実はない、つまり法改正をする必要はないと考えられます。

 

刑法の基本原則や憲法との関係

次に、共謀罪(テロ等準備罪)と刑法の基本原則や憲法との関係を検討します。

 

刑法の基本原則と憲法

 

内心を処罰する共謀罪(テロ等準備罪)

刑法は、処罰の対象を外部から客観的に認識できるような「行為」のみに限定し、何かを心の中で考えただけの場合それが例え「悪い」内心であっても処罰しないとしています。これは憲法19条で思想・良心の自由を絶対的に保障している日本国憲法の大原則が基礎にあります。

共謀は、二人以上の犯罪を行うという意思の合致ですが、それが共謀罪(テロ等準備罪)に該るかどうかを決めるのは、その合意の内容です。その合意の内容とは、人の内心にのみ存在するものである以上、共謀罪(テロ等準備罪)は内心そのものを処罰の対象とするものと言わざるを得ません。これは絶対的自由を保障する憲法19条の思想・良心の自由と真っ向から矛盾します。

 

危険性のない段階で処罰

また、先に見たように、刑法は既遂処罰を原則とし、例外として未遂を罰し、より例外的なものとして予備を罰し、非常に重大な法益に対するものについてだけ共謀を罰しています。これは、「悪い」内心が内心にとどまらず行為として表れた場合でも、それを直ちに罰するのではなく、法益侵害やその可能性がない限り罰しない、という刑法の姿勢を表しています。

なぜなら、刑罰を科するということは、人の自由・権利を強力に制限するものであるため、できるだけ必要最低限のものに限らなければならない、という「刑法の謙抑性」の考え方に基づいているものです。これは、フランス人権宣言の時代からある近代法の基本原理の一つです。より有り体に言えば、なんでもかんでも犯罪にすべきではなく、犯罪にしなくて済むものは犯罪にすべきではなく他の手段を使うべきだ、といったものでしょうか。

この考え方に基づいて、日本の刑法はきちんと法的侵害の度合い、危険性に応じて、既遂→未遂→予備→共謀といった順に原則→例外という体系をとって犯罪を規定しています。

しかし共謀罪(テロ等準備罪)はこの原則を無視して、一気に「共謀」を広く罰するように変更しようとしています。これは近代刑法の原則に真っ向から対立するものです。

 

要件を加えても問題は解決しない

過去の修正案と現時点での報道を踏まえると、当初「共謀」のみをもって犯罪が成立するように規定していた政府与党も、「共謀」だけではなく、「共謀者のいずれかが犯罪準備行為を行うこと」を要件に加えるものとしました。これで一見、内心のみを処罰するものとは異なると主張できるように見えます。

しかしこの犯罪準備行為は過去の法務省の説明によれば「犯罪の実行に向けた具体的な行為」とされているだけで、法益侵害の危険性との関連で設定される要件ではありません。つまり、要件として加えられる準備行為自体が持つ法益侵害の危険性は問わないといのが政府の見解です。一方で、刑法が例外的に罰する予備罪における予備行為については、法益侵害の危険性が高まったことを客観的に判断する必要があることは学説判例の蓄積によって確立しています。

つまり、準備行為が必要との修正がされたとしても、それは予備罪におけるような法益侵害の危険性が問題とならないことから、「共謀」があったとさえすれば、どのような行為でも「準備行為」だと認定されてしまう危険性があるのです。

結局のところ、「共謀」の中身との関係で何らかの行為を捉えれば共謀罪(テロ等準備罪)が成立するとされかねない曖昧な要件に過ぎず、このことからすれば、この要件を加えたところで「共謀」という人の内心にのみ存在するものを直接処罰しようとする共謀罪(テロ等準備罪)の本質は変わりません

 

誰かが準備すれば処罰される可能性

政府与党案によれば、共謀があり、共謀者のいずれかが犯罪準備行為を行えば、共謀に加わった者は処罰されるものとしています。しかしながら、先にみたように「犯罪準備行為」は法益侵害の危険性が高まったかどうかと無関係な要件であり、何を行えばこれに該当するのかは曖昧です。

そのような中で、人の内心にある「共謀」に着目して検挙されたある人が、自分が認識していなかった「犯罪準備行為」をメンバーの誰かがしただけで、共謀罪として処罰されるのが政府与党案です。これによれば、たとえば30人のグループで何か相談があった中で、その中の1人の行った行為を「犯罪準備行為」と認定すれば、共謀罪となる可能性すらある、ということです。

共謀罪をテロ等準備罪と言い換えて、犯罪準備行為を要件に加えたとしても、「共謀」とされる話し合いに加わっただけで何らの準備行為に関わっていない人間からすれば、「準備罪」ではなく「共謀罪」そのものであり、内心そのものに着目してそれを処罰するものになってしまいます。

 

結論:法体系を揺るがし人権を侵害しかねない

日本の刑法が、予備罪ですら例外中の例外とし、共謀を罰するのは数個の犯罪に過ぎないとしているのは、近代刑法の原則や日本国憲法の保障する思想良心の自由をしっかりと踏まえた上でのことです。

これに対し、共謀罪(テロ等準備罪)は、現時点で政府与党が言うような準備行為の要件を加えたとしても、結局は法益侵害の危険性が高まったかどうかとは無関係な、内心そのものへの処罰という性質を免れないと思います。これでは日本の刑法の謙抑性、日本国憲法における思想・良心の自由をとは相容れないものとして許されないのではないかと思います。

そして、先に述べた国際組織犯罪防止条約第三十四条では「自国の国内法の基本原則に従って」とあるのですから、この条約を理由に共謀罪(テロ等準備罪)を新設する理由にはならないということも、ここで重ねて言えます。

 

現実問題として全ての人に関係が生じそうな捜査の問題

 

監視、盗聴という捜査手法が正当化される

ここまでは、共謀罪(テロ等準備罪)が内心そのものを処罰するのと変わらないという点や、その成立要件が曖昧であることなどを書いてきましたが、それよりも最もこの法案が成立した場合に心配されるのは、共謀罪(テロ等準備罪)摘発のための捜査に関してです。

通常の犯罪捜査においては、何がしかの客観的な犯罪結果や、外から認識できる犯罪行為を追っていくことになります。それは例えば犯罪被害の状況であったり、犯罪現場に残された容疑者の痕跡(持ち物や足跡、指紋など)から、容疑者を追っていき特定していくという手法です。捜査官が追うのは、もちろん、証人や容疑者本人からの証言、自白等もありますが、その主なものは外から認識できる犯罪結果や犯罪行為等の証拠、つまり、客観的に痕跡が残るものです。

しかし、共謀罪(テロ等準備罪)は、共謀、つまり話し合いをして犯罪を実行することを合意したことそのものが犯罪となるので、その捜査の対象は話し合いそのものとなります。とすれば、捜査当局が「組織犯罪集団」との疑いを持つ集団に対しては、日常的に監視し、あるいは話し合い自体を盗聴しなければ、有効な捜査はできません。そしてまた、共謀の段階では、具体的な行為によって法益侵害の危険性は高まっていないので、共謀そのものを危険なものとして捜査対象とするしかないとも言えます

とすれば、実際に危険があるかどうかもわからない段階で、捜査機関が「組織犯罪集団」との疑いをもちさえすれば、監視や盗聴が正当化される可能性が高いということです。

 

2016年刑事訴訟法改正による盗聴対象の拡大との関係

2016年に刑事訴訟法が改正される以前は、盗聴という捜査手法は、薬物、銃器、組織的殺人などいわゆる暴力団関係の組織犯罪4類型を対象とする捜査に限定されており、なおかつ、通信事業者の常時立ち会いが義務付けられていました。ところが昨年の改正によって、盗聴の対象となる犯罪は窃盗、詐欺、恐喝、逮捕監禁、傷害等の一般的な刑法犯を含む広い範囲にまで拡大されました。さらに、通信事業者の立ち合いも不要となっています。

この法改正自体、1999年に世論の反対に配慮して適用対象を限定せざるをえなかったものを、2016年になって解除したものと言え大きな問題がありますが、さらに、今回の共謀罪(テロ等準備罪)が成立すれば、より盗聴は蔓延ることになるでしょう。通常の犯罪の場合は、その犯罪に関わる嫌疑等との関連で盗聴の必要性等が少なくとも勘案されますが、共謀罪は共謀そのものが犯罪行為とされるため、盗聴の必要性は容易に認められてしまう可能性が高いからです。

 

司法取引制度との関係

また、同改正で成立したものの中に司法取引制度があります。これは、他人の犯罪の立証に協力する代わりに自分の罪の減免をしてもらうよう検察官と合意をするものです。

共謀罪(テロ等準備罪)はその性質上、話し合い内容を立証する場合に、共謀に参加したとされるものの証言は重要なものと扱われるでしょうが、司法取引制度と共謀罪(テロ等防止罪)の自首減免制度を悪用すれば、虚偽の密告と自白をすることで、誰かを共謀罪へと陥れることも不可能ではありません。一方で、このような場合に、冤罪にさらされる側は犯罪事実がないことの反証をすることは容易ではありません。

共謀罪(テロ等準備罪)と司法取引の組み合わせは、新たな冤罪の強力な温床となる可能性があると思います。

 

一般人には関係ないという説明について

テロ等準備罪についての政府与党の説明の中に、「一般人は対象外」というものがあります。

 

政府が検討しているのはテロ等準備罪であり、従前の共謀罪とは別物だ。犯罪の主体を限定するなど(要件を絞っているため)一般の方々が対象になることはあり得ない

共謀罪「一般人は対象外」=菅官房長官:時事ドットコム

しかし、組織犯罪集団の構成員であるとか、犯罪予備・共謀をしたのだとか、そのような認定を当局からされるまでは誰もが「一般人」です。一方で、そのような認定を当局からされてしまえば、その途端に菅官房長官のいうような「一般人」ではなくなるわけです。

ここで大切なことは、当局の認定というのは裁判を経た有罪判決ではない、ということです。裁判手続きを経て有罪判決を受ける前に、テロ等準備罪の捜査の対象となるかどうかを認定するのは、主に警察当局であり、その認定は正式な裁判手続きではない多分に恣意が入る可能性のあるものです。

そもそも、テロ防止を目的としてテロ等準備罪を新設するのである以上、その対象は暴力団暴力団の構成員ではありません。テロリストです。そして諸外国のテロ事件の例を見れば、テロリストは一般人と変わらぬ生活をしていることも多いです。そのようなテロリストをテロ等準備罪で摘発するためには、一般人にも広く嫌疑をかけるしか方法はありません。つまり、テロ等準備罪は本来、一般人を捜査の対象とすることを認めなければ意味のないものなのです。

誤った起訴がされても必ず無罪になる、冤罪は発生しない、という脳天気な裁判所への信頼を前提にしたとしても、先の述べたように、共謀罪(テロ等防止罪)は、捜査手法として監視と盗聴を広く求めるものです。もし、百歩譲って「一般人」が直接の捜査対象にならないとしても、監視・盗聴は犯罪事実だけを対象とするものではなく、多くの犯罪事実とはならない行動や会話をも対象とせざるを得ないものなので、「一般人」も警察当局からの監視を常に受けてしまう可能性もあります。

いずれにせよ、「一般人は対象外」という説明は欺瞞です。加えて、先に述べた刑訴法の改正を見てもわかるように、世論の反対が強い事項については、最初は小さく立法しておいて後で対象を拡大しなし崩し的に何でもできるようにする、というのは従前からの手法とも言えます。一度、法案が通過したら、それを廃止するのはおろか、拡大を止めることも難しくなるのは容易に想像できるはずです。

 

まとめ

以上見てきたように、共謀罪(テロ等準備罪)については、テロ対策という観点からも必要性は非常に疑わしく、さらに、国際組織犯罪防止条約との関係でも新設の必要性はありません。

他方、共謀罪(テロ等準備罪)が新設されれば、現在聞こえているような修正を加味したとしても、日本国憲法の思想良心の自由や、刑法の基本原則と対立し、曖昧な要件の下で幅広い犯罪を成立させる可能性のある危険なものです。

そして何よりも、共謀罪(テロ等準備罪)の新設は、昨年の刑訴法改正とも相まって、国民生活に対して加速度的に盗聴による捜査が入り込んだり、冤罪を増やしてしまうような結果を招く危険性が非常に高いと思われます。

何よりも、立法に関しては、その立法の本来の目的、建前ではなく法案を何としても通過させたい勢力の思惑をよく理解する必要があります。それは主観的な思い込み、推測では足りませんが、法案の提出過程や修正過程を追って行けばわかるはずです。

この記事の中で、最初に修正前の政府案を上げたのは、この共謀罪(テロ等準備罪)の目的がどこにあるのかが良くわかるから、という意味もありました。再度ここに掲載します。

 

(組織的な犯罪の共謀)
第六条の二
次の各号に掲げる罪に当たる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
 一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮
 二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、第三条第二項に規定する目的で行われるものの遂行を共謀した者も、前項と同様とする。

ここには、共謀罪成立を願う側の望みが端的に表れています。彼らは、ほとんど対象を限定せずに、共謀罪が成立するものとしたかったのです。

それは、誰もかれもを犯罪で罰したいからとは限りません。犯罪そのものの成立よりも、「共謀が行われているのではないか」という嫌疑の下に広く捜査活動を行える根拠が欲しいのかも知れません。もちろん、いざとなれば立件できますが、そうでなくてもターゲットを決めれば、盗聴・監視を合法的に行えるような法的基礎を手に入れたい、その執念が、今この高い政権支持率の中で今結実しようとしているのです。

共謀罪(テロ等予備罪)の成立によって不当に人権を制約される可能性のあるのは、いわゆる左翼、労働組合、社会運動等に関与している人々だけではありません。あなたが右翼であれ、特別な政治的立場を自覚していない人であったとしても、もしこの法案が成立したなら、この2017年を日本社会が暗い方向へと向かった年として思い出すことになるかも知れません。

 

繰り返しますが、テロ対策という建前とは関係なく、この共謀罪(テロ等準備罪)は、政府当局がその気になりさえすれば国民の誰を監視対象にしても許されるとするものです。誰でもです。あなたがどんな政治的立場にあろうと、まっとうに暮らしていようとです。

 

 

 

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日弁連は共謀罪に反対します(共謀罪法案対策本部) 

 

治安維持法によるあらたな取締対象を開拓

 1937年6月の思想実務者会同で、東京地裁検事局の栗谷四郎が、検挙すべき対象がほとんど払底するという状況になっている状況を指摘し、特高警察と思想検察の存在意義が希薄化させるおそれが生じている事に危機感を表明した。

(1935年から1936年にかけて、予算減・人員減があった)

 そのため、あらたな取締対象の開拓がめざされていった。 

 

治安維持法適用対象を拡大し、宗教団体、学術研究会(唯物論研究会)、芸術団体なども摘発されていきます。

 

 1940年1月 「生活図画事件」
(生活綴方教育が「子どもに資本主義社会の矛盾を自覚させ、共産主義につながる」として、教員らが一斉検挙される事件が起きる。逮捕されたのは、五十六人ともいわれる。)


 1940(昭和15)年の第二次近衛内閣に至り,先の総動員本部は解散されて,生活組織を基礎に全国民を対象とする 大政翼賛会 の組織による運動が実施されることになった。

・・・

 1937(昭和12)年7月には,すでに,教学刷新の中心機関である 教学局(1928年の学生課) が文部省外局として設置され, 学問研究に対する統制 の中枢をなした。

・・・

算数の役割を「数理思想の滴養」(「国民学校令施行規則」)に置き,本来,科学的精神の精髄である 批判的精神を除却(除去)し た合理的精神の涵養(水が自然に土に浸透するように、出しゃばらずに ゆっくりと 国家方針に合った思想を養い育てること)が求められたのであった。

・・・

戦前の国民的な心理,意識,生活を支配し,規制していたものは, 国体論と精神主義を柱とする天皇イデオロギーであり,
それはあらゆる非科学性の根源であった。
また同時に,それは国家存立の根幹であるとみなされていたからである。
 科学は明治以降の外来,輸入のものであり.日本の伝統や国粋とはなじまぬもので,日本の欧米化を促進するもとになるという危惧の念があったと思われる。
 したがって,科学は少数の研究者に委ね,国民多数にとって必要で 大切なのは,科学的知識よりも忠孝の道である ,という認識であった。

 

1945年

 占領軍の指揮官のマッカーサーは、日本の徹底改革&天皇制維持の姿勢を決めていた。ワシントン政府は、日本の改革・天皇制いずれにもフラフラしてた。結局はマッカーサーが独断専行で決めていく。

 そのマッカーサーを、日本国民は熱烈歓迎する。
ここで労働基準法を作り組合活動を合法化し、戦前・戦中に拘束されていた社会主義者・共産主義者が釈放される

1945年10月4日、

 マッカーサーから治安維持法共謀罪)の廃止を要求された日本の東久邇内閣は、それを拒絶し総辞職した。

 すなわち、日本の支配層は、敗戦後に、弾圧した国民の復讐を恐れ、日本占領軍に逆らってでも治安維持法を守ろうとした

 

 しかし、戦後にアメリカから与えられた民主主義体制によって日本の治安が良好に保たれたので、

戦前の治安維持法共謀罪)も、共産主義者の暗殺行為も、思想善導も必要無かった。

 

「児童を保護するため」と言った児童ポルノ規制法は、実際は、

「児童ポルノ単純所持罪は児童を逮捕するための法律かも」

でした。

(このグラフの元データは、警察庁の生活安全の確保に関する統計のうち、「平成25年中の少年非行情勢について」の報告による)

 

同様に、「国民をテロから保護するため」と言うテロ準備罪は、

「国民を逮捕するための法律」のようです。

 

また自民党は、テロ準備罪(治安維持法)の成立に向けて、以下の憲法改悪案で運用したいと考えているようです。

憲法36条)公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

自民党案では:「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、これを禁ずる。」に変えます。
テロ準備罪(治安維持法)の運用等で止むお得ないと総理大臣(安倍)が判断した場合は、拷問を許可するようです。 

 

 

治安維持法――なぜ政党政治は「悪法」を生んだか(その2)  

 

あらたな取締対象を開拓

 1937年6月の思想実務者会同で、東京地裁検事局の栗谷四郎が、検挙すべき対象がほとんど払底するという状況になっている状況を指摘し、特高警察と思想検察の存在意義が希薄化させるおそれが生じている事に危機感を表明した。

(1935年から1936年にかけて、予算減・人員減があった)

 そのため、あらたな取締対象の開拓がめざされていった。

 

治安維持法適用対象を拡大し、宗教団体、学術研究会(唯物論研究会)、芸術団体なども摘発されていきます。

 

共謀罪なんかいらない

共謀罪なんかいらない


 東京オリンピック開催に向けたテロ対策の名のもと、

言論や集会の自由に規制をかける共謀罪

/この法案は自民党政権の下でたびたび審議されていますが、

これまで二度廃案になっています。

/その理由は

「組織的な犯罪の共謀罪

という抽象的であいまいな表現の解釈によって、

その対象は広範囲におよぶことが予想されるため、

多くの人が反対してきたからです。


/さらに恐ろしいのは、犯罪行為の実行や準備だけでなく、

「共謀=話し合い」までが刑罰の対象となること。

/よろしいですか?

話し合いといっても、日時や場所の打ち合わせではなく

「お金が足りないからコンビニ強盗でもすっかww」とか

「アイツ許せねぇ、ブッ殺してやる!」

なんていう会話までが、罪になるんですよ?

/この「共謀罪法案」が、

1月下旬から召集される通常国会において再び上程されようとしています。

この法律が制定されれば、

テロリズムとは無関係でも、

政治的な目的がなくても、

数名の集会やセミナーやワークショップ、

あるいは親しい仲間との集まりなども

規制や届け出が必要となる恐れがあるのです。

/このグループは、

日本北朝鮮化法案とでも呼びたくなる恐ろしい「共謀罪法案」

を阻止したいと思う人たちのFB上の情報交換の場とします。

♪ぜひご参加ください。


https://www.facebook.com/groups/670290836477398/?multi_permalinks=67233299627


菅官房長の「一般方々が対象になることはあり得ない」という発言を受けて、


次のようにツイッターをした。[小田嶋隆さん]


《「一般人は対象外」という理屈の背後には、

「共謀に与するような人間は一般人ではない」

というトートロジーが隠れている。

この言い方を応用すると、たとえば道路交通法も「一般人は対象外」として運用されているてな話になる。

なぜなら「信号を無視するような市民は一般人ではない」わけだから。》


《「犯罪者以外は罰せられないのだから一般人には関係ありません」

という説明で簡単に安心してはいけない。

犯罪者以外が罰せられないのは、どの法律でも同じことで、

この言明そのものにさしたる意味は無い。

大切なポイントは

「その法律が想定している『犯罪者』がどういう人間なのか」ということだぞ。》


Masamiti Tanaka さん 1/13

共謀罪が成立すると、思想信条の自由、言論の自由内心の自由が奪われます。

内政批判もできない国が民主国家と言えるでしょうか? 何としても阻止しなければ!』

 

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1945年

 占領軍の指揮官のマッカーサーは、日本の徹底改革&天皇制維持の姿勢を決めていた。ワシントン政府は、日本の改革・天皇制いずれにもフラフラしてた。結局はマッカーサーが独断専行で決めていく。

 そのマッカーサーを、日本国民は熱烈歓迎する。
ここで労働基準法を作り組合活動を合法化し、戦前・戦中に拘束されていた社会主義者・共産主義者が釈放される

1945年10月4日、

 マッカーサーから治安維持法共謀罪)の廃止を要求された日本の東久邇内閣は、それを拒絶し総辞職した。

 すなわち、日本の支配層は、敗戦後に、弾圧した国民の復讐を恐れ、日本占領軍に逆らってでも治安維持法を守ろうとした

 

 しかし、戦後にアメリカから与えられた民主主義体制によって日本の治安が良好に保たれたので、

戦前の治安維持法共謀罪)も、共産主義者の暗殺行為も、思想善導も必要無かった。

 

「児童を保護するため」と言った児童ポルノ規制法は、実際は、

「児童ポルノ単純所持罪は児童を逮捕するための法律かも」

でした。

 

 

(このグラフの元データは、警察庁の生活安全の確保に関する統計のうち、「平成25年中の少年非行情勢について」の報告による)

 

同様に、「国民をテロから保護するため」と言うテロ準備罪は、

「国民を逮捕するための法律」のようです。

 

また自民党は、テロ準備罪(治安維持法)の成立に向けて、以下の憲法改悪案で運用したいと考えているようです。

憲法36条)公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

自民党案では:「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、これを禁ずる。」に変えます。
テロ準備罪(治安維持法)の運用等で止むお得ないと総理大臣(安倍)が判断した場合は、拷問を許可するようです。 

 

 

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あらたな取締対象を開拓

 1937年6月の思想実務者会同で、東京地裁検事局の栗谷四郎が、検挙すべき対象がほとんど払底するという状況になっている状況を指摘し、特高警察と思想検察の存在意義が希薄化させるおそれが生じている事に危機感を表明した。

(1935年から1936年にかけて、予算減・人員減があった)

 そのため、あらたな取締対象の開拓がめざされていった。

 

治安維持法は適用対象を拡大し、宗教団体、学術研究会(唯物論研究会)、芸術団体なども摘発されていきます。

 

 

「組織犯罪処罰法改正案」政府案(2017.3.1現在)テキスト全文

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律

第一条 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)の一部を次のように改正する。

第一条中「かんがみ」を「鑑み、並びに国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を実施するため」に改める。

第二条第二項第一号中「別表に」を「次に」に改め、同号に次のように加える。

イ 死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪(ロに掲げる罪及び国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号。以下「麻薬特例法」という。)第二条第二項各号に掲げる罪を除く。)

ロ 別表第一(第三号を除く。)又は別表第二に掲げる罪

第二条第二項第二号イ中「覚せい剤原料」を「覚醒剤原料」に改め、同項第三号を次のように改める。

三 次に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により供与された財産

イ 第七条の二(証人等買収)の罪

ロ 不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第十八条第一項の違反行為に係る同法第二十一条第二項第七号(外国公務員等に対する不正の利益の供与等)の罪

第二条第二項に次の一号を加える。

五 第六条の二(実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画)の罪の犯罪行為である計画(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならば当該罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)をした者が、計画をした犯罪の実行のための資金として使用する目的で取得した財産

第二条第五項中「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号。以下「麻薬特例法」という。)」を「麻薬特例法」に改める。

第三条第二項中「この項」の下に「及び第六条の二第二項」を加える。

第六条の次に次の一条を加える。

(実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画)

第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。

一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役または禁錮

二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮

2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又は組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。

第七条の次に次の一条を加える。

(証人等買収)

第七条の二 次に掲げる罪に係る自己又は他人の刑事事件に関し、証言をしないこと、若しくは虚偽の証言をすること、又は証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造すること、若しくは偽造若しくは変造の証拠を使用することの報酬として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

一 死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪(次号に掲げる罪を除く。)

ニ 別表第一に掲げる罪

2 前項各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われた場合、又は同項各号に掲げる罪が第三条第二項に規定する目的で犯された場合において、前項の罪を犯した者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第十二条中「第九条第一項」を「第三条第一項第九号、第十一号、第十二号及び第十五号に掲げる罪に係る同条の罪、第六条第一項第一号に掲げる罪に係る同条の罪並びに第六条の二の罪は刑法第四条の二の例に、第九条第一項」に、「、刑法」を「同法」に改める。

十三条第二項中第六号を削り、第五号を第十二号とし、第四号の次に次の七号を加える。

五 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)第二十九条(不正の手段による補助金等の受交付等)の罪

六 航空機工業振興法(昭和三十三年法律第百五十号)第二十九条(不正の手段による交付金等の受交付等)の罪

七 人質による強要行為等の処罰に関する法律(昭和五十三年法律第四十八号)第一条から第四条まで(人質による強要等、加重人質強要、人質殺害)の罪

八 金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成八年法律第九十五号)第五百四十九条(詐欺更生)の罪

九 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百五十五条(詐欺再生)の罪

十 会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第二百六十六条(詐欺更生)の罪

十一 破産法(平成十六年法律第七十五号)第二百六十五条(詐欺破産)の罪

第二十二条第一項中「別表若しくは第二条第二項第二号イからニまでに掲げる罪、同項第三号若しくは第四号に規定する罪又は第九条第一項から第三項まで、第十条」を「第二条第二項第一号イ若しくはロ若しくは同項第二号ニに掲げる罪又は第十条第三項」に改め、「不法財産であって」を削り、「もの」を「財産」に改める。

第四十二条第一項及び第五十九条第一項第一号中「別表若しくは第二条第二項第二号イからニまでに掲げる罪、同項第三号若しくは第四号に規定する罪又は第九条第一項から第三項まで、第十条」を「第二条第二項第一号イ若しくはロ若しくは同項第二号ニに掲げる罪又は第十条第三項」に改める。

第七十四条中「行われたとしたならば」の下に「第六条の二第一項第二号に掲げる罪に係る同条の罪又は」を加える。

別表を次のように改める。

別表第一(第二条、第七条の二関係)

一 第六条の二(実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画)の罪

ニ 第七条の二(証人等買収)の罪

三 第十条(犯罪収益等隠匿)若しくは第十一条(犯罪収益等収受)の罪又は麻薬特例法第六条(薬物犯罪収益等隠匿)若しくは第七条(薬物犯罪収益等収受)の罪

四 刑法第百五十五条第一項(有印公文書偽造)若しくは第二項(有印公文書変造)の罪、同法第百五十六条(有印虚偽公文書作成等)の罪(同法第百五十五条第一項又は第二項の例により処断すべきものに限る。)又は同法第百五十九条第一項(有印私文書偽造)若しくは第二項(有印私文書変造)の罪

五 刑法第百九十七条から第百九十七条の四まで(収賄、受託収賄及び事前収賄、第三者供賄、加重収賄及び事後収賄、あっせん収賄)又は第百九十八条(贈賄)の罪

六 刑法第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取罪、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪

七 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六十条第二項(児童の引渡し及び支配)の罪(同法三十四条第一項第七号又は第九号の違反行為に係るものに限る。)

八 出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第七十条第一項第一号(不法入国)、第二号(不法上陸)若しくは第五号(不法残留)若しくは第二項(不法在留)の罪(正犯により犯されたものを除く。)、同法第七十四条(集団密航者を不法入国させる行為等)、第七十四条の二(集団密航者の輸送)若しくは第七十四条の四(集団密航者の収受等)の罪、同法第七十四条の六(不法入国等援助)の罪(同法第七十条第一項第一号又は第二号に規定する行為に係るものに限る。)、同法第七十四条の六の二第一項第一号(難民旅行証明書等の不正受交付)若しくは第二号(偽造外国旅券等の所持等)若しくは第二項(営利目的の難民旅行証明書等の不正受交付等)の罪、同法第七十四条六の三(未遂罪)の罪(同法第七十四条の六の二第一項第三号及び第四号の罪に係る部分を除く。)又は同法第七十四条の八(不法入国者等の蔵匿等)の罪

九 旅券法(昭和二十六年法律第二百六十七号)第二十三条第一項第一号(旅券等の不正受交付)若しくは第三号から第五号まで(自己名義旅券等の譲渡等、他人名義旅券等の譲渡等、偽造旅券等の譲渡等)若しくは第二項(営利目的の旅券等の不正受交付等)の罪又はこれらの罪に係る同条第三項(未遂罪)の罪

十 刑法第九十五条(公務執行妨害及び職務強要)の罪、(裁判、検察又は警察の職務を行う公務員による次に掲げる罪に係る審判又は捜査の職務の執行を妨害する目的で犯されたものに限る。)又は同法第二百二十三条(強要)の罪(次に掲げる罪に係る自己又は他人の刑事事件に関し、証言をさせず、若しくは虚偽の証言をさせ、又は証拠を隠滅させ、偽造させ、若しくは変造させ、若しくは偽造若しくは変造の証拠を使用させる目的で犯されたものに限る。)

イ 死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定めらえれている罪(ロに掲げる罪を除く。)

ロ この表に掲げる罪

別表第一の次に次の三表を加える。

別表第二(第二条関係)

一 刑法第百六十三条の四(支払用カード電磁的記録不正作出準備)の罪、同法第百六十三条の五(未遂罪)の罪(同法第百六十三条の四第一項の罪に係る部分に限る。)又は同法第百七十五条(わいせつ物頒布等)若しくは第百八十六条第一項(常習賭博)の罪

ニ 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)第十八条第二号(損失補填に係る利益の収受等)の罪

三 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第九十九条の九第一号(損失補填に係る利益の収受等)の罪

四 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二百条第十四号(損失補填に係る利益の収受等)の罪

五 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第四十九条第一号(無許可営業)の罪

六 消費者生活協同組合法(昭和二十三年法律第二百号)第九十八条の四(損失補填に係る利益の収受等)の罪

七 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第百二十九条の三第一号(損失補填に係る利益の収受等)の罪

八 中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一条)第百十二条の三(損失補填に係る利益の収受等)の罪

九 協同組合による金融事業に関する法律(昭和二十四年法律第八十三号)第十条の二の二(損失補填に係る利益の収受等)の罪

十 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十七条第三号(非弁護士の法律事務の取扱い等)又は第四号(業として行う譲り受けた権利の実行)の罪

十一 商品先物取引法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第三百六十三条第九号(損失補填に係る利益の収受等)の罪

十二 毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)第二十四条第一号(無登録販売等)の罪(同法第三条の違反行為に係るものに限る。)又は同法第二十四条の二第一号(興奮等の作用を有する毒物等の販売等)の罪

十三 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二百三十六条第二項(投資主の権利の行使に関する利益の受供与)又は第二百四十三条第二号(損失補填に係る利益の収受等)の罪

十四 信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)第九十条の四の二(損失補填に係る利益の収受等)の罪

十五 覚せい罪取締法第四十一条の十三(覚醒剤原料の譲渡しと譲受けとの周旋)の罪

十六 出入国管理及び難民認定法第七十三条の二第一項(不法就労助長)又は第七十三条の五(在留カード偽造等準備)の罪

十七 長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二十五条の二の二(損失補填に係る利益の収受等)の罪

十八 武器等製造法(昭和二十八年法律第百四十五号)第三十一条の三第一号(鉄砲及び鉄砲弾以外の武器の無許可製造)の罪

十九 労働金庫法(昭和二十八年法律第二百二十七号)第百条の四の二(損失補填に係る利益の収受等)の罪

二十 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第八条第三項(元本を保証して行う出資金の受入れ等)の罪(同法第一条又は第二条第一項の違反行為に係るものに限る。)

二十一 売春防止法第六条第一項(周旋)、第七条(困惑等による売春)又は第十条(売春をさせる契約)の罪

二十二 銃砲刀剣類所持等取締法第三十一条の十五(拳銃等の譲渡しと譲受けの周旋等)、第三十一条の十六第一項第一号(拳銃等及び猟銃以外の鉄砲等の所持)、第二号(拳銃部品の所持)若しくは第三号(拳銃部品の譲渡し等)若しくは第二項(未遂罪)、第三十一条の十七(拳銃等としての物品の輸入等)、第三十一条の十八第一号(拳銃実包の譲渡しと譲受けの周旋)又は第三十二条第一号(拳銃部品の譲渡しと譲受けの周旋等)の罪

二十三 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第八十四条第九号(無許可医薬品販売業)の罪

二十四 無限連鎖講の防止に関する法律(昭和五十三年法律第百一号)第五条(開設等)の罪

二十五 銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第六十一条第一号(無免許営業)又は第六十三条の二の二(損失補填に係る利益の収受等)の罪

二十六 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第五十九条第一号(禁止業務についての労働者派遣事業)の罪(同法第四条第一項の違反行為に係るものに限る。)

二十七 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)第二十八条(特別永住者証明書偽造等準備)の罪

二十八 不動産特定共同事業法(平成六年法律第七十七号)第五十三条第三号(損失補填に係る利益の収受等)の罪

二十九 保険業法(平成七年法律第百五号)第三百十七条の二第二号(損失補填に係る利益の収受等)又は第三百三十一条第二項(株主等の権利の行使に関する利益の受供与)の罪

三十 資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二百九十七条第一号(損失補填に係る利益の収受等)又は第三百十一条第三項(社員等の権利等の行使に関する利益の受供与)の罪

三十一 農林中央金庫法(平成十三年法律第九十三号)第九十九条の二の二(損失補填に係る利益の収受等)の罪

三十二 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律第五条(公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行のために利用されるものとしての資金等の提供等)の罪

三十三 信託業法(平成十六年法律第百五十四号)第九十四条第七号(損失補填に係る利益の収受等)の罪

三十四 会社法第九百七十条第二項(株主等の権利の行使に関する利益の受供与)の罪

三十五 放射線を発散させて人の生命に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(平成十九年法律第三十八号)第六条第三項(特定核燃料物質の輸出入の予備)の罪

三十六 株式会社商工組合中央金庫法(平成十九年法律第七十四号)第七十三条第一項第二号(損失補填に係る利益の収受等)の罪

三十七 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第四十九条(個人番号の提供及び盗用)又は第五十一条第一項(詐欺等行為等による個人番号の取得)の罪

別表第三(第六条の二関係)

一 第三条(組織的な殺人等)、第九条第一項から第三項まで(不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為)、第十条第一項(犯罪収益等隠匿)又は第十一条(犯罪収益等収受)の罪

二イ 刑法第七十七条第一項(内乱)の罪(同項第三号に係る部分を除く。)又は同法第七十九条(内乱等幇助)の罪(同項の罪(同項第三号に係る部分に限る。)及び同法第七十七条第二項の罪に係るものを除く。)

 ロ 刑法第八十一条(外患誘致)又は第八十二条(外患援助)の罪

 ハ 刑法第百六条(騒乱)の罪(同条第三号に係る部分を除く。)

 二 刑法第百八条(現住建造物等放火)、第百九条第一項(非現住建造物等放火)若しくは第百十条第一項(建造物等以外放火)の罪又は同法第百十七条第一項(激発物破裂)の罪(同法第百八条、第百九条第一項又は第百十条第一項の例により処断すべきものに限る。)

 ホ 刑法第百十九条(現住建造物等浸害)又は第百二十条(非現住建造物等浸害)の罪

 へ 刑法第百二十五条(往来危険)又は第百二十六条第一項若しくは第二項(汽車転覆等)の罪

 ト 刑法第百三十六条(あへん煙輸入等)、第百三十七条(あへん煙吸食器具輸入等)又は第百三十九条第二項(あへん煙吸食のための場所提供)の罪

 チ 刑法第百四十三条(水道汚染)、第百四十六条前段(水道毒物等混入)又は第百四十七条(水道損壊及び閉塞)の罪

 リ 刑法第百四十八条(通貨偽造及び行使等)又は第百四十九条(外国通貨偽造及び行使等)の罪

 ヌ 刑法第百五十五条第一項(有印公文書偽造)若しくは第二項(有印公文書変造)の罪、同法第百五十六条(有印虚偽公文書作成等)の罪(同法第百五十五条第一項又は第二項の例により処断すべきものに限る。)若しくは同法第百五十七条第一項(公正証書原本不実記載等)の罪若しくはこれらの罪に係る同法第百五十八条第一項(偽造公文書行使等)の罪、同法第百五十九条第一項(有印私文書偽造)若しくは第二項(有印私文書変造)の罪若しくはこれらの罪に係る同法第百六十一条第一項(偽造私文書等行使)の罪又は同法第百六十一条の二第一項から第三項まで(電磁的記録不正作出及び供用)の罪

 ル 刑法第百六十二条(有価証券偽造等)又は第百六十三条第一項(偽造有価証券行使等)の罪

 ヲ 刑法第百六十三条の二(支払用カード電磁的記録不正作出等)又は第百六十三条の三(不正電磁的記録カード所持)の罪

 ワ 刑法第百六十五条(公印偽造及び不正使用等)の罪

 カ 刑法第百七十六条(強制わいせつ)、第百七十七条(強制性交等)又は第百七十八条(準強制わいせつ及び準強制性交等)の罪

 ヨ 刑法第百九十一条(墳墓発掘死体損壊等)の罪

 タ 刑法第百九十七条第一項前段(収賄)若しくは第二項(事前収賄)、第百九十七条の二から第百九十七条の四まで(第三者供賄、加重収賄及び事後収賄、あっせん収賄)又は第百九十八条(贈賄)の罪

 レ 刑法第二百四条(傷害)の罪

 ソ 刑法第二百二十四条(未成年者略取及び誘拐)、第二百二十五条(営利目的等略取及び誘拐)、第二百二十六条(所在国外移送目的略取及び誘拐)、第二百二十六条の二第一項、第四項若しくは第五項(人身売買)、第二百二十六条の三(被略取者等所在国外移送)又は第二百二十七条第一項、第三項若しくは第四項(被略取者引渡し等)の罪

 ツ 刑法第二百三十四条の二第一項(電子計算機損壊等業務妨害)の罪

 ネ 刑法第二百三十五条から第二百三十六条まで(窃盗、不動産侵奪、強盗)、第二百三十八条(事後強盗)又は第二百三十九条(昏睡強盗)の罪

 ナ 刑法第二百四十六条の二から第二百四十八条まで(電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺)の罪

 ラ 刑法第二百五十二条(横領)の罪

 ム 刑法第二百五十六条第二項(盗品有償譲受け等)の罪

三 爆発物取締罰則明治十七年太政官布告第三十二号)第一条(爆発物の使用)又は第三条、第五条若しくは第六条(爆発物の製造等)の罪

四 外国において流通する貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及び模造に関する法律(明治三十八年法律第六十六号)第一条(偽造等)、第二条(偽造外国流通貨幣等の輸入)又は第三条第一項(偽造外国流通貨幣等の行使等)の罪

五 印紙犯罪処罰法(明治四十二年法律第三十九号)第一条(偽造等)又は第二条第一項(偽造印紙等の使用等)の罪

六 海底電信線保護万国連合条約罰則(大正五年法律第二十号)第一条第一項(海底電信線の損壊)の罪

七 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第百十七条(強制労働)の罪

八 職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第六十三条(暴行等による職業紹介等)の罪

九 児童福祉法第六十条第一項(児童淫行)の罪又は同条第二項(児童の引渡し及び支配)の罪(同法第三十四条第一項第七号又は第九号の違反行為に係るものに限る。)

十 郵便法(昭和二十二年法律第百六十五号)第八十五条第一項(切手類の偽造等)の罪

十一 金融商品取引法第百九十七条(虚偽有価証券届出書等の提出等)又は第百九十七条の二(内部者取引等)の罪

十二 大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)第二十四条第一項(大麻の栽培等)、第二十四条の二第一項(大麻の所持等)又は第二十四条の三第一項(大麻の使用等)の罪

十三 船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第百十一条(暴行等による船員職業紹介等)の罪

十四 競馬法(昭和二十三年法律第百五十八号)第三十条(無資格競馬等)の罪

十五 自転車競技法(昭和二十三年法律第二百九号)第五十六条(無資格自転車競走等)の罪

十六 外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第六十九条の六第一項若しくは第二項(国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等)又は第六十九条の七第一項(特定技術提供目的の無許可取引等)の罪

十七 電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第百八条の二第一項(電気通信業務等の用に供する無線局の無線設備の損壊等)の罪

十八 小型自動車競争法(昭和二十五年法律第二百八号)第六十一条(無資格小型自動車競走等)の罪

十九 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第百九十三条重要文化財の無許可輸出)、第百九十五条第一項(重要文化財の損壊等)又は第百九十六条第一項(史跡名勝天然記念物の滅失等)の罪

二十 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第百四十四条の三十三第一項(軽油等の不正製造)又は第百四十四条の四十一第一項から第三項まで若しくは第五項(軽油引取税に係る脱税)の罪

二十一 商品先物取引法第三百五十六条(商品市場における取引等に関する風説の流布等)の罪

二十二 道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第百条第一項(自動車道における自動車往来危険)又は第百一条第一項(事業用自動車の転覆等)の罪

二十三 投資信託及び投資法人に関する法律第二百三十六条第四項(投資主の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為)の罪

二十四 モーターボート競争法(昭和二十六年法律第二百四十二号)第六十五条(無資格モーターボート競走等)の罪

二十五 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第百九十八条(保安林の区域内における森林窃盗)、第二百一条第二項(森林窃盗の贓物の運搬等)又は第二百二条第一項(他人の森林への放火)の罪

二十六 覚せい剤取締法第四十一条第一項(覚醒剤の輸入等)、第四十一条の二第一項若しくは第二項(覚醒剤の所持等)、第四十一条の三第一項若しくは第二項(覚醒剤の使用等)又は第四十一条の四第一項(管理外覚醒剤の施用等)の罪

二十七 出入国管理及び難民認定法第七十条第一項第一号(不法入国)、第二号(不法上陸)若しくは第五号(不法残留)若しくは第二項(不法在留)の罪(正犯により犯されたものを除く。)、同法第七十三条の三第一項から第三項まで(在留カード偽造等)、第七十三条の四(偽造在留カード等所持)、第七十四条第一項(集団密航者を不法入国させる行為等)、第七十四条の二(集団密航者の輸送)若しくは第七十四条の四第一項(集団密航者の収受等)の罪、同法第七十四条の六(不法入国等援助)の罪(同法第七十条第一項第一号又は第二号に規定する行為に係るものに限る。)又は同法第七十四条の六の二第一項第一号(難民旅行証明書等の不正受交付)若しくは第二号(偽造外国旅券等の所持等)若しくは第二項(営利目的の難民旅行証明書等の不正受交付等)若しくは第七十四条の八第一項若しくは第二項(不法入国者等の蔵匿等)の罪

二十八 旅券法第二十三条第一項(旅券等の不正受交付等)の罪

二十九 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法(昭和二十七年法律第百三十八号)第五条(軍用物の損壊等)の罪

三十 麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)第六十四条第一項(ジアセチルモルヒネ等の輸入等)、第六十四条の二第一項若しくは第二項(ジアセチルモルヒネ等の製剤等)、第六十四条の三第一項若しくは第二項(ジアセチルモルヒネ等の施用等)、第六十五条第一項若しくは第二項(ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等)、第六十六条第一項(ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等)、第六十六条の二第一項(麻薬の施用等)、第六十六条の三第一項(向精神薬の輸入等)又は第六十六条の四第二項(営利目的の向精神薬の譲渡等)の罪

三十一 有線電気通信法(昭和二十八年法律第九十六号)第十三条第一項(有線電気通信設備の損壊等)の罪

三十二 武器等製造法第三十一条第一項(鉄砲の無許可製造)若しくは第三十一条の二第一項(鉄砲弾の無許可製造)の罪又は同法第三十一条の三第四号(猟銃等の無許可製造)の罪(猟銃の製造に係るものに限る。)

三十三 ガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第百九十二条第一項(ガス工作物の損壊等)の罪

三十四 関税法(昭和二十九年法律第六十一号)第百八条の四第一項若しくは第二項(輸出してはならない貨物の輸出)、第百九条第一項若しくは第二項(輸入してはならない貨物の輸入)、第百九条の二第一項若しくは第二項(輸出してはならない貨物の保税地域への蔵置等)、第百十条第一項若しくは第二項(偽りにより関税を免れる行為等)、第百十一条第一項若しくは第二項(無許可輸出等)又は第百十二条第一項(輸出してはならない貨物の運搬等)の罪

三十五 あへん法(昭和二十九年法律第七十一号)第五十一条第一項若しくは第二項(けしの栽培等)又は第五十二条第一項(あへんの譲渡し等)の罪

三十六 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第百二十一条(自衛隊の所有する武器等の損壊等)の罪

三十七 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第五条(高金利等)、第五条の二第一項(高保証料)、第五条の三(保証料がある場合の高金利等)又は第八条第一項若しくは第二項(業として行う著しい高金利の脱法行為等)の罪

三十八 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第二十九条(不正の手段による補助金等の受交付等)の罪

三十九 売春防止法第八条第一項(対償の収受等)、第十一条第二項(業として行う場所の提供)、第十二条(売春をさせる業)又は第十三条(資金等の提供)の罪

四十 高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第二十六条第一項(高速自動車国道の損壊等)の罪

四十一 水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第五十一条第一項(水道施設の損壊等)の罪

四十二 銃砲刀剣類所持等取締法第三十一条第二項若しくは第三項(拳銃等の発射)、第三十一条の二第一項(拳銃等の輸入)、第三十一条の三第三項若しくは第四項(拳銃等の所持等)、第三十一条の四第一項若しくは第二項(拳銃等の譲渡し等)、第三十一条の六(偽りの方法による許可)、第三十一条の七第一項(拳銃実包の輸入)、第三十一条の八(拳銃実包の所持)、第三十一条の九第一項(拳銃実包の譲渡し等)、第三十一条の十一第一項(猟銃の所持等)又は第三十一条の十三(拳銃等の輸入に係る資金等の提供)の罪

四十三 下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第四十四条第一項(公共下水道の施設の損壊等)の罪

四十四 特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第百九十六条又は第百九十六条の二(特許権等の侵害)の罪

四十五 実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第五十六条(実用新案権等の侵害)の罪

四十六 意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第六十九条又は第六十九条の二(意匠権等の侵害)の罪

四十七 商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第七十八条又は第七十八条の二(商標権等の侵害)の罪

四十八 道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第百十五条(不正な信号機の操作等)の罪

四十九 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第八十三条の九(業として行う指定薬物の製造等)の罪

五十 新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法(昭和三十九年法律第百十一号)第二条第一項(自動列車制御設備の損壊等)の罪

五十一 電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第百十五条第一項(電気工作物の損壊等)の罪

五十二 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二百三十八条第一項若しくは第三項若しくは第二百三十九条第一項(偽りにより所得税を免れる行為等)又は第二百四十条第一項(所得税の不納付)の罪

五十三 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第百五十九条第一項又は第三項(偽りにより法人税を免れる行為等)の罪

五十四 公海に関する条約の実施に伴う海底電線等の損壊行為の処罰に関する法律(昭和四十三年法律第百二号)第一条第一項(海底電線の損壊)又は第二条第一項(海底パイプライン等の損壊)の罪

五十五 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第百十九条第一項又は第二項(著作権の侵害等)の罪

五十六 航空機の強取等の処罰に関する法律(昭和四十五年法律第六十八号)第一条第一項(航空機の強取等)又は第四条(航空機の運航阻害)の罪

五十七 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二十五条第一項(無許可廃棄物処理業等)の罪

五十八 火炎びんの使用等の処罰に関する法律(昭和四十七年法律第十七号)第二条第一項(火炎びんの使用)の罪

五十九 熱供給事業法(昭和四十七年法律第八十八号)第三十四条第一項(熱供給施設の損壊等)の罪

六十 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(昭和四十九年法律第八十七号)第一条(航空危険)、第二条第一項(航行中の航空機の墜落させる行為等)、第三条第一項(業務中の航空機の破壊等)又は第四条(業務中の航空機内への爆発物等の持込み)の罪

六十一 人質による強要行為等の処罰に関する法律第一条第一項若しくは第二項(人質による強要等)又は第二条(加重人質強要)の罪

六十二 細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律(昭和五十七年法律第六十一号)第九条第一項(生物兵器等の使用)若しくは第二項(生物剤等の発散)又は第十条第一項(生物兵器等の製造)若しくは第二項(生物兵器等の所持等)の罪

六十三 貸金業法(昭和五十八年法律第三十二号)第四十七条(無登録営業等)の罪

六十四 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第五十八条(有害業務目的の労働者派遣)の罪

六十五 流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法(昭和六十二年法律第百三号)第九条第一項(流通食品への毒物の混入等)の罪

六十六 消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第六十四条第一項又は第四項(偽りにより消費税を免れる行為等)の罪

六十七 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法第二十六条第一項から第三項まで(特別永住者証明書の偽造等)又は第二十七条(偽造特別永住者証明書等の所持)の罪

六十八 麻薬特例法第六条第一項(薬物犯罪収益等隠匿)又は第七条(薬物犯罪収益等収受)の罪

六十九 絶滅の恐れのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七十五号)第五十七条の二(国内希少野生動植物種の捕獲等)の罪

七十 不正競争防止法第二十一条第一項から第三項まで(営業秘密の不正取得等)の罪

七十一 化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律(平成七年法律第六十五号)第三十八条第一項(化学兵器の使用)若しくは第二項(毒性物質等の発散)又は第三十九条第一項(化学兵器の製造)、第二項(化学兵器の所持等)若しくは第三項(毒性物質等の製造等)の罪

七十二 サリン等による人身被害の防止に関する法律第五条第一項(サリン等の発散)又は第六条第一項(サリン等の製造等)の罪

七十三 保険業法第三百三十一条第四項(株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為)の罪

七十四 臓器の移植に関する法律(平成九年法律第百四号)第二十条第一項(臓器売買等)の罪

七十五 スポーツ振興投票の実施等に関する法律(平成十年法律第六十三号)第三十二条(無資格スポーツ振興投票)の罪

七十六 種苗法(平成十年法律第八十三号)第六十七条(育成者権等の侵害)の罪

七十七 資産の流動化に関する法律第三百十一条第六項(社員等の権利等の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為)の罪

七十八 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第六十七条第一項(一種病原体等の発散)、第六十八条第一項若しくは第二項(一種病原体等の輸入)、第六十九条第一項(一種病原体等の所持等)又は第七十条(二種病原体等の輸入)の罪

七十九 対人地雷の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律(平成十年法律第百十六号)第二十二条第一項(対人地雷の製造)又は第二十三条(対人地雷の所持)の罪

八十 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第五条第一項(児童買春周旋)、第六条第一項(児童買春勧誘)又は第七条第六項から第八項まで(児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対する提供等)の罪

八十一 民事再生法第二百五十五条(詐欺再生)又は第二百五十六条(特定の債権者に対する担保の供与等)の罪

八十二 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律第二条第一項(公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為)又は第三条第一項から第三項まで若しくは第四条第一項(公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等)の罪

八十三 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)第七十三条第一項(不実の署名用電子証明書等を発行させる行為)の罪

八十四 会社更生法第二百六十六条(詐欺更生)又は第二百六十七条(特定の債権者等に対する担保の供与等)の罪

八十五 破産法第二百六十五条(詐欺破産)又は第二百六十六条(特定の債権者に対する担保の供与等)の罪

八十六 会社法第九百六十三条から第九百六十六条まで(会社財産を危うくする行為、虚偽文書行使等、預合い、株式の超過発行)、第九百六十八条(株主等の権利の行使に関する贈収賄)又は第九百七十条第四項(株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為)の罪

八十七 放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律第三条第一項(放射線の発散等)、第四条第一項(原子核分裂等装置の製造)、第五条第一項若しくは第二項(原子核分裂等装置の所持等)、第六条第一項(特定核燃料物質の輸出入)、第七条(放射性物質等の使用の告知による脅迫)又は第八条(特定核燃料物質の窃取等の告知による強要)の罪

八十八 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律第三条第一項又は第三項(海賊行為)の罪

ハ十九 クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律(平成二十一年法律第八十五号)第二十一条第一項(クラスター弾等の製造)又は第二十二条(クラスター弾等の所持)の罪

九十 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)第六条第一項(汚染廃棄物等の投棄等)の罪

別表第四(第六条の二関係)

一 別表第三に掲げる罪(次に掲げる罪を除く。)

イ 第十一条(犯罪収益等収受)の罪

ロ 刑法第七十七条第一項(内乱)の罪(同項第三号に係る部分を除く。)並びに同法第八十一条(外患誘致)、第八十二条(外患援助)及び第百九十八条(贈賄)の罪

ハ 爆発物取締罰則第一条(爆発物の使用)の罪

二 児童福祉法第六十条第二項(児童引渡し及び支配)の罪(同法第三十四条第一項第七号又は第九号の違反行為に係るものに限る。)

ホ 出入国管理及び難民認定法第七十条第一項第一号(不法入国)、第二号(不法上陸)及び第五号(不法残留)並びに第二項(不法在留)の罪(正犯により犯されたものを除く。)、同法第七十四条の二第一項(集団密航者の輸送)の罪、同法第七十四条の六(不法入国等援助)の罪(同法第七十条第一項第一号又は第二号に規定する行為に係るものに限る。)並びに同法第七十四条の六の二第一項第一号(難民旅行証明書等の不正受交付)及び第二号(偽造外国旅券等の所持等)並びに第七十四条の八第一項(不法入国者等の蔵匿等)の罪

へ 麻薬特例法第七条(薬物犯罪収益等収受)の罪

ニ 第七条(組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等)(同条第一項第一号から第三号までに掲げる者に係るものに限る。)の罪及び第七条の二第二項(証人等買収)の罪

三イ 刑法第九十八条(加重逃走)、第九十九条(被拘禁者奪取)又は第百条第二項(逃走援助)の罪

 ロ 刑法第百六十九条(偽証)の罪

四 爆発物取締罰則第九条(爆発物の使用、製造等の犯人の蔵匿等)の罪

五 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法第四条第一項(偽証)の罪

六 国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成十九年法律第三十七号)第五十六条(組織的な犯罪に係る証拠隠滅等)又は第五十七条第一項(偽証)の罪

爆発物取締罰則の一部改正)

第二条 爆発物取締罰則明治十七年太政官布告第三十二号)の一部を次のように改正する。

第十条中「第三条」を「第六条」に改める。

(刑法の一部改正)

第三条 刑法(明治四十年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。

第三条中第十六号を第十七号とし、第六号から第十五号までを一号ずつ繰り下げ、第五号の次に次の一号を加える。

六 第百九十八条(贈賄)の罪

(暴力行為等処罰に関する法律の一部改正)

第四条 暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)の一部を次のように改正する。

第一条ノ三に次の一項を加える。

前項(刑法第二百四条ニ係ル部分ヲ除ク)ノ罪ハ同法第四条の二ノ例ニ従フ

児童福祉法の一部改正)

第五条 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。

第六十条第五項中「第二項」を「第一項及び第二項」に、「及び」を「又は」に改める。

(細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律の一部改正)

第六条 細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律(昭和五十七年法律第六十一号)の一部を次のように改正する。

第十一条中「第九条」を「前二条」に改める。

第七条 サリン等による人身被害の防止に関する法律(平成七年法律第七十八号)の一部を次のように改正する。

第八条中「第五条第一項及び第二項」を「第五条」に改める。

第八条 犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)の一部を次のように改正する。

十三条第一項中「税関職員」を「国税庁国税局若しくは税務署の当該職員、税関職員、徴税吏員、公正取引委員会の職員(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第百一条第一項の指定を受けた者に限る。)」に、「別表若しくは第二条第二項第二号イからニまでに掲げる罪、同項第三号若しくは第四号に規定する罪」を「第二条第二項第一号イ若しくはロ若しくは同項第二号ニに掲げる罪」に、「第九条第一項から第三項まで、第十条」を「第十条第三項」に、「第六条」を「第六条第三項」に改める。

国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律の一部改正)

第九条 国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成十九年法律第三十七号)の一部を次のように改正する。

第五十五条を次のように改める。

(証人等買収)

第五十五条 自己又は他人の管轄刑事事件に関し、証言をしないこと、若しくは虚偽の証言をすること、又は証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造すること、若しくは偽造若しくは変造の証拠を使用することの報酬として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第五十六条第一項中「第五十三条第一項又は第五十四条」を「前三条(第五十三条第二項を除く。次項において同じ。)のいずれか」に改め、同条第二項中「第五十三条第一項又は第五十四条」を「前三条のいずれか」に改める。

附則

(施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

一 第一条中組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)第十二条の改正規定、第二条及び第四条から第七条までの規定並びに附則第四条の規定 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約が日本国について効力を生ずる日

二 附則第五条第二項 刑法の一部を改正する法律(平成二十九年法律第   号。同条において「刑法一部改正法」という。)の施行の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日

(経過措置)

第二条 組織的犯罪処罰法第九条第一項から第三項まで、第十条及び第十一条の規定は、この法律の施行前に財産上の不正の利益を得る目的で犯した第一条の規定による改正後の組織的犯罪処罰法(以下「新組織的犯罪処罰法」という。)第二条第二項第一号イ又は別表第一第五号若しくは第七号から第十号までに掲げる罪(第一条の規定による改正前の組織的犯罪処罰法別表に掲げる罪を除く。)の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪にあたり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産に関してこの法律の施行後にした行為に対しても、適用する。この場合において、これらの財産は、新組織的犯罪処罰法第二条第二項第一号の犯罪収益とみなす。

第三条 新組織的犯罪処罰法の規定(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の一部を改正する法律(平成十二年法律第九十七号。以下この条において「特定資産流動化法等一部改正法」という。)附則第六十五条又は職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律(平成十五年法律第八十二号。以下この条において「職業安定法等一部改正法」という。)附則第十二条の規定により適用されることとなる罰則の規定を除く。)の適用については、特定資産流動化法等一部改正法附則第六十五条の規定によりなお従前の例によることとされている場合における特定資産流動化法等一部改正法第二条の規定による改正前の証券投資信託及び証券投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二百三十六条第二項の罪は、新組織的犯罪処罰法別表第二第十三号に掲げる罪とみなし、職業安定法等一部改正法附則第十二条の規定によりなお従前の例によることとされている場合における職業安定法等一部改正法第二条の規定による改正前の労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)附則第六項の罪は、同表第二十六号に掲げる罪とみなす。

第四条 新組織的犯罪処罰法第十二条(刑法第四条の二に係る部分に限る。)の規定、第二条の規定による改正後の爆発物取締罰則第十条(爆発物取締罰則第四条から第六条までに係る部分に限る。)の規定、第四条の規定による改正後の暴力行為等処罰に関する法律第一条ノ三第二項の規定、第五条の規定による改正後の児童福祉法第六十条第五項(同条第一項に係る部分に限る。)の規定、第六条の規定による改正後の細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律第十一条(同法第十条に係る部分に限る。)の規定及び第七条の規定に改正後のサリン等による人身被害の防止に関する法律第八条(同法第五条第三項に係る部分に限る。)の規定は、附則第一条第一号に掲げる規定の施行の日以降に日本国について効力を生ずる条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされている罪に限り、適用する。

(調整規定)

第五条 刑法一部改正法の施行の日がこの法律の施行の日後となる場合には、刑法一部改正法の施行の日の前日までの間における新組織的犯罪処罰法別表第三第二号カの規定の適用については、同号カ中「(強制性交等」とあるのは「(強姦」と、「準強制性交等」とあるのは「準強姦」とする。

2 前項の場合においては、刑法一部改正法のうち刑法第三条の改正規定中「同条第十二号」とあるのは「同条第十三号」と、「同条第十三号」とあるのは「同条第十四号」とし、刑法一部改正法附則第六条の規定は、適用しない。

(裁判所法の一部改正)

第六条 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)の一部を次のように改正する。

第二十六条第二項中「左の」を「次に掲げる」に改め、同項ただし書中「但し」を「ただし」に、「定が」を「定めが」に、「定に」を「定めに」に改め、同項第二号中「あたる」を「当たる」に、「第一条ノ三」を「第一条ノ三第一項」に改める。

核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律の一部改正)

第七条 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律(平成九年法律第八十号)の一部を次のように改正する。

附則に次の一項を加える。

4 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)の一部を次のように改正する。

別表第三第四十号の次に次の一号を加える。

四十の二 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第七十六条の二第一項(核爆発を生じさせる行為)の罪

(情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律の一部改正)

第八条 情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律(平成二十三年法律第七十四号)の一部を次のように改正する。

附則第一条第三号を次のように改める。

三 削除

附則第一条第四号中「施行日」を「この法律の施行の日(以下「施行日」という。)」に改める。

附則第二条中「第三条の規定による改正後の」及び「(以下「新組織的犯罪処罰法」という。)」を削る。

附則第三条中「新組織的犯罪処罰法」を「組織犯罪処罰法」に改める。

附則第四条及び第五条を次のように改める。

第四条及び第五条 削除

附則第五十八条及び第五十九条を次のように改める。

第五十八条及び第五十九条 削除

刑事訴訟法等の一部を改正する法律の一部改正)

第九条 刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第五十四号)の一部を次のように開始絵する。

第二条のうち刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二編中第四章を第五章とし、第三章の次に一章を加える改正規定のうち第三百五十条の二第二項第五号に係る部分中「第七条第一項第一号から第三号までに掲げる者に係る同条の罪」を「第七条の罪(同条第一項第一号から第三号までに掲げる者に係るものに限る。)若しくは組織的犯罪処罰法第七条の二の罪」に改める。

(不動産特定共同事業法の一部を改正する法律の一部改正)

第十条 不動産特定共同事業法の一部を改正する法律(平成二十九年法律第   号。次条において「不動産特定共同事業法一部改正法」という。)の一部を次のように改正する。

附則第十三条のうち組織的犯罪処罰法別表第六十一号の改正規定中「別表第六十一号」を「別表第二第二十八号」に改める。

(調整規定)

第十一条 この法律の施行の日が不動産特定共同事業法一部改正法の施行の日後となる場合には、前条の規定は、適用しない。この場合において、第一条のうち組織的犯罪処罰法別表第一の次に三表を加える改正規定のうち別表第二第二十八号に係る部分中「第五十三条第三号」とあるのは、「第八十条第三号」とする。

理 由

近年における犯罪の国際化及び組織化の状況に鑑み、並びに国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結に伴い、実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画等の行為についての処罰規定、犯罪収益規制に関する規定その他所要の規定を整備する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

 

(本情報掲載元記者のコメント) 

 

 

※ 法案テキストは以上です。

 

今後について

既に報道されている通り、上記政府案については、テロ対策という名目であるにもかかわらず、法案内に「テロ」「テロリズム」という文言がないことが指摘されています。これについては与党内からも問題視する声があがり、テロに関する記述の追加が検討されているようなので、今後上記法案にこの点の変更が生じる可能性があります。

 

今後、逐一の変更に応じて上記内容の更新をしていけるかどうかは断言できませんが、他記事等を通じて公開できればとは考えています。

 

また、内容についても、以前共謀罪法案の問題点を指摘した記事の時点と根本的に問題は変わらない状態ですが、政府側の説明を踏まえ検討した内容を別途記事を書ければと思っています。が、いつになるかは不明です…。

 

以前書いた共謀罪(テロ等準備罪)法案の問題点についての記事は下記のものです

 

 

当記事には上記最新版の法案内容は反映していませんのでご了承ください(もっとも基本的な問題点はほとんど変わりません)。

 

 

2005年(平成17年)政府提出案

 

2005年(平成17年)第三次小泉内閣の時代に3度目の法案提出となった「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」において、共謀罪については以下のように規定されています。

 

(組織的な犯罪の共謀)
第六条の二
次の各号に掲げる罪に当たる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
 一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮
 二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、第三条第二項に規定する目的で行われるものの遂行を共謀した者も、前項と同様とする。

この条文によれば、共謀罪として処罰されるのは、

 


 

  1. 4年以上の懲役・禁錮の犯罪が
  2. その犯罪行為を実行するための組織により行われる場合に
  3. その犯罪を実行しようという具体的・現実的な合意をすること

 


となります。しかし、2005年から2006年の国会継続審議の中で与党が修正案として提出した法案の最終形では下記のようになっています。

 

第六条の二
 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的な犯罪集団の活動(組織的な犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が死刑若しくは無期若しくは長期五年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪又は別表第一(第一号を除く。)に掲げる罪を実行することにある団体をいう。)の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該組織的な犯罪集団に帰属するものをいう。)として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、その共謀をした者のいずれかによりその共謀に係る犯罪の実行に必要な準備その他の行為が行われた場合において、当該各号に定める刑に処する。ただし、死刑又は無期若しくは長期五年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪に係るものについては、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減刑し、又は免除する。
 一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮
 二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、第三条第二項に規定する目的で行われるものの遂行を共謀した者も 、前項と同様とする。
3 前二項の規定の適用に当たっては、思想及び良心の自由並びに結社の自由その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限するようなことがあってはならず、かつ、労働組合その他の団体の正当な活動を制限するようなことがあってはならない。

この条文は、2005年提出の政府原案と比べて、下記の点が変更となっています。

 


 

  1. 組織の定義について、一定の重大犯罪の実行を目的とするものに限定した。
  2. 対象となる犯罪について、組織の意思決定に基づき、その効果・利益が組織に帰属するものに限定した。
  3. 共謀罪成立には、共謀だけでなく、共謀者のいずれかが犯罪準備行為を行うことが必要とした。

 


この3回目の法案提出以降、何度か法案提出の動きがあったものの実際には提出されていません。この法案を原案としつつ、その後の政府与党内の検討を経て修正された法案が提出されるものと思います。

 

与党修正案の可能性

この記事を執筆している2017.1.17時点の報道によれば、政府自民党党は強い懸念(特に連立与党である公明党)に配慮し、上記法案の内容よりも犯罪構成要件を厳しくした内容に修正して法案提出する予定と報じられています。

条文を見ないとその実質はわかりませんが、下記のような修正が行われるようです。

 


 

  1. 共謀罪成立の要件として具体的な準備行為を必要とする
  2. 共謀罪の対象となる犯罪を原案の676から300程度に減らす

 


参照:「共謀罪」対象300程度に=公明要求で絞り込み-政府:時事ドットコム

 

問題点(論点)

 

共謀罪新設の必要性(立法事実)はあるのか

立法事実とは、その法律を制定する根拠となる事実であり、その法律の合理性を支える社会的、経済的、政治的、科学的事実です。

もう少し簡単な言い方をすると、その法律が必要とされる理由となるような事実、そしてその法律の目的や手段が正当で合理的なものだと言える理由になるような事実のことです。

共謀罪(テロ等準備罪)を新設する組織犯罪処罰法改正案について言えば、テロ犯罪が発生する具体的な危険があること、また、それが認められたとしてテロ犯罪の具体的な危険に現行法では十分対処できず共謀罪(テロ等準備罪)新設が必要であること、あるいは、その他特別な事情(国際関係等)により共謀罪(テロ等準備罪)新設が必要不可欠であること等です。

また、法改正の必要性が認められたとしても、その法改正の内容がその必要性・目的に照らして必要最低限の合理的なものになっているかも問題になります。

 

テロ対策の必要性

 

テロの不安

諸外国で頻発するテロ事件に関する報道を日々目にすれば、日本においてもテロ犯罪対策は必要だと感じるのは当然だと思います。また、国際テロ組織が日本を敵として認定したことや、日本で過去に起きた地下鉄サリン事件の例を想起すれば、日本がテロ犯罪に無縁ではないと考えるのも無理はないことです。

こした不安からすれば、2020年のオリンピック・パラリンピック開催との関係でテロ対策の必要性を主張する安倍首相の言葉に同意する人たちもいるでしょう。

 

安倍晋三首相は十日、共同通信社との単独インタビューに応じ、政府が通常国会に提出する方針を固めた「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案に関し、成立させなければテロ対策で各国と連携する国際組織犯罪防止条約が締結されず「二○二○年東京五輪パラリンピックが開催できない」と指摘。

2017.1.11付東京新聞紙面より

しかしながらまず、以前よりも日本国内でテロが起きる現実的危険性が高まっているのかどうかについて、慎重に検討する必要があります。諸外国でテロが頻発しているから、日本国内でもテロが起きる可能性は高いだろうという抽象的な推測だけでは、国民の権利を制限する法改正の基礎となる立法事実とは言えません。現実にその危険性が高まっていることを示す事実が必要です。

これについては、少なくとも議論の際に問題となるようないわゆるテロ行為が行われた事実や、その計画が発覚したというような事実は、私の知る限りではありません。もちろん、国際情勢と無関係に考えることも出来ませんが、かといって諸外国でテロが頻発しているからというだけでは国内法の立法事実には足りません。具体的な国内におけるテロの危険性の「現実的」危険性を改正を推進する側が証明しなければなりませんが、それについて明確な説明はまだされているとは言えません。

今後の国会での議論・答弁を見ていくしかないでしょうが、現在のところは共謀罪(テロ等準備罪)の必要性の基礎となるようなテロの現実的危険性は無いように思えます。実際、これまでの法務省の説明においても、このようなテロの危険を前提にした立法の必要性はほとんど説明されず、後程述べる条約との関係での必要性のみが強調されてきたように思います。

 

現行法でテロ対策は不十分なのか

さらに、仮にテロの現実的危険性が高まっているとして(あくまでも仮定ですが)、共謀罪(テロ等準備罪)が存在しない現在の日本は、テロ対策が不十分なのでしょうか。

■ 現行法も既遂→未遂→予備→共謀と法益の重要性に応じて処罰規定を用意している

日本の刑法は、原則として法益侵害(法によって保護される利益、例えば生命・身体・財産等への侵害)が生じて(既遂)初めて犯罪が成立することを原則としています(原則として既遂処罰)。しかし、共謀罪(テロ等準備罪)新設が必要だとする立場からは、テロによって重大な結果が生じる前に摘発・処罰できなければ実効あるテロ対策は行えないということなのでしょう。

一方、日本の刑法には既遂犯処罰の例外として、法益侵害の結果が発生していなくても、その犯罪行為にとりかかり(実行の着手)があれば、法益侵害の危険性を発生させたとして処罰できる未遂犯処罰の規定があります。結果が発生する前に摘発しても一定の行為があれば摘発・処罰できます。例えば、殺人罪、放火罪、往来危険罪等をはじめとした多くの犯罪に未遂処罰の規定があります*2。しかし、テロ対策を強調する立場からすれば、それでもまだ足りない、ということなのでしょうね。実行の着手があってから摘発するのでは間に合わないと。とすれば、テロ犯罪として重大な法益侵害をもたらすような犯罪については、実行の着手がある前、つまり犯罪の準備段階でも摘発・処罰できるような法整備が必要だという主張につながります。

ところが、日本の刑法では、既遂・未遂処罰以外に、一定の重罪についてはその犯罪の準備を行う「予備」を例外的に処罰しています。例えば殺人予備罪、放火予備罪、内乱予備罪等です*3。これらは犯罪の実行に至らなくても、犯罪の予備行為を直接処罰できるものです。多くのテロ犯罪の準備行為は、殺人予備罪や放火予備罪によっても摘発・処罰は可能です。

もちろん、予備罪の成立には、その犯罪を犯す目的とともに、犯罪の実行に実質的に役に立つ準備行為が必要なので、共謀罪(テロ等準備罪)新設を主張する立場からは、それではダメなのだ、行為がなくても罰することが出来なければ足りないのだ、という主張が聞こえてきそうです。ただ、先ほど見たように、政府与党は共謀罪(テロ等準備罪)法案成立のために、「共謀罪成立の要件として具体的な準備行為を必要とする」という法案の修正を行うと報道されています。とすれば、予備罪で対応できる内容と実質的には変わらないのではないでしょうか。逆にそうではないとすると、要件追加される「具体的な準備行為」には大きな意味はないことを自白するようなものです。

また、具体的な準備行為を必要とせず「共謀」のみで成立する犯罪が現行刑法にもあります。特別重大な法益侵害の危険性のある犯罪行為については「共謀」そのものを犯罪として処罰する、という考えです。具体的には内乱陰謀罪(78条)、外患陰謀罪(88条)、私戦陰謀罪(93条)です。

行刑法では、原則既遂を処罰、例外的に未遂を処罰、さらにより例外として予備を処罰、そして本当に特別な場合にのみ共謀を処罰するものとしており、それらの違いは各犯罪によって侵害される法益の重要性や大きさ等を主な基準としているのです。

しかし、共謀罪(テロ等準備罪)法案においては当初、600を超える犯罪について「共謀」を犯罪として処罰するものとして一気に範囲を拡大しようとしています。現時点(2017.1.17)の報道では、政府与党は対象犯罪を300程度まで減らす方向で調整中とのことですが、それでも今までの刑法のあり方からすれば、相当な範囲の拡大です。テロ犯罪対策として抑止・検挙・処罰すべきなのは、我々がテロという言葉で思い浮かぶような無差別殺人、大量殺人であり、直接これらと関係のない犯罪にまで拡大する必要はないはずではないでしょうか。

■ 銃刀法、さらには共謀共同正犯理論によっても準備に参加した者を処罰できる

また、日本は銃砲刀剣類所持等取締法という銃砲や刀剣の所持を厳しく取り締まる法律があり、実際も諸外国に比べて厳しい運用が行われているのは周知の事実です。これによっていわゆる実際の殺人等の実行行為にいたらない、いわゆるテロ行為の準備行為を取り締まることも十分可能です。

加えて、刑法には明確な規定はないものの、判例によって共謀共同正犯理論が確立されており*4、これによれば共謀に参加しただけで直接実行行為を行っていない者の処罰も実際に行われています。

■ テロ防止に関連する国際条約で国内法上の犯罪を規定

さらに、テロ防止に関連して13の国際条約を締結*5、そのうち1つを除きすべての条約を批准して、条約上の行為を国内法上の犯罪として規定しています。これらの犯罪の中には未遂以前の段階で処罰可能なものが含まれており、テロ対策として、実行行為に至る前の準備段階で摘発・処罰できる体制があります。

これほどに、重大犯罪や国際テロ犯罪について、実行行為に至る前の準備段階でも摘発・処罰できる法がある現状であり、加えて近年においていわゆるテロ犯罪やテロ犯罪の準備段階について摘発された例は私の知る限りありません。これまでの法体制で対応できないような現実が我々の前に存在すると言える状況ではない、と私は思います。

 

国際組織犯罪防止条約第5条は立法事実となるのか

この点は多少込み入った話でわかりにくい部分もあるのですが、簡単に書いておきます。日弁連のサイトにこの部分の詳細説明があるので、関心があれば参考にしてください。

日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:日弁連は共謀罪に反対します(共謀罪法案対策本部)

 

共謀罪を新設しないと条約が批准できないのか

国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(国際組織犯罪防止条約(パレルモ条約))は、「重大な犯罪」について共謀罪を設けることなどを求めています。

 

第5条  組織的な犯罪集団への参加の犯罪化
1 締約国は、故意に行われた次の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
(a) 次の一方又は双方の行為(犯罪行為の未遂又は既遂に係る犯罪とは別個の犯罪とする。)
 (i) 金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの
 (ii) 組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為
   a 組織的な犯罪集団の犯罪活動
   b 組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)
(以下略)

これを受けて政府与党は、共謀罪を設けなければこの条約5条の求める義務を充たせずこの条約を批准することができない、としています。安倍首相が先ほど引用した共同通信のインタビューで「成立させなければテロ対策で各国と連携する国際組織犯罪防止条約が締結されず」と言うのも同じ趣旨です。

ところで、法務省の説明などを読んでも、共謀罪(テロ等準備罪)の立法事実として政府与党が主張しているのは、テロの現実的危険性が高まっているという事柄ではなく、「この条約を批准しなければ国際的に批判され、批准するためには共謀罪新設が必要」ということが専ら言われています(前述したテロ発生の現実的危険性がないにも関わらず、テロ対策として共謀罪を新設しようとするその姿勢に強い疑問を感じますが、ここでは一旦置きます)。

しかし、政府与党が成立させようとしている共謀罪(テロ等準備罪)を国内で規定しなければ、本当にこの条約を批准することができないのでしょうか。

国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約第34条は、これに関する規定をしています。

 

第三十四条 条約の実施
1 締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置(立法上及び行政上の措置を含む。)をとる。(以下略)

つまり、日本は日本の法律の基本原則を逸脱するような措置をする必要はないのです。もし共謀罪(テロ等準備罪)が日本の刑法体系を逸脱したり矛盾したりするなら、条約批准のためにそのようなものを設ける必要はない、と条約は言っているのです。そして、後ほど述べる通り、共謀罪(テロ等準備罪)は日本の法律の基本原則に反します。

そもそも各国が行う条約の批准について、国連がその適否を審査するわけではなく、またこの条約上も締約国会議が審査するともされていません。つまり、各国が一方的に批准の意思表示をすれば足りるので、現状で批准の障害となるものはありません。この条約を批准していない先進国はごくわずかであり、批准しないと国際的に批判を受ける可能性はあります。しかし、批准できないのは国内に共謀罪がないからではなく、内閣が国会の承認を経て批准の意思表示を行わないからに過ぎません。

また、この国際組織犯罪防止条約以外の条約で、各国に立法措置を求めているにもかかわらず、日本はその立法措置を行わないまま条約を批准しているものすらあります。例えば、人種差別撤廃条約です。この条約は「人種的優越又は憎悪に基づくあらゆる思想の流布」「人種差別の扇動」等について処罰立法措置をとることを義務づけていますが、日本はこれを留保したまま条約を批准しています *6ヘイトスピーチを処罰するような法律は日本にはありませんが、この条約を政府は批准しているのです。なぜ、国際組織犯罪防止条約についてだけ、共謀罪を成立させないと批准できない、と言い張っているのでしょうか。極めて疑問です。

 

諸外国の例

それでは、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を既に批准している他の国は、各国内で包括的な共謀罪の法整備を行っているのでしょうか。もしそうであれば、日本政府が共謀罪の新設を行わなければ条約を批准できないというプレッシャーを国際社会から受けていると言えなくもないかも知れません。

これについては、日弁連が調査をしています。それによれば、米国、ブラジル、モロッコ、エルサルバドルアンゴラ、メキシコも、組織犯罪の関与する重大犯罪の全てについて共謀罪の対象としていないことを認めているそうです。特に米国においては、州刑法の中には共謀罪が極めて限定的で条約の要求する処罰範囲が確保されていないことを前提にしつつ、州での立法をせずに批准に際し留保(条約の特定の規定に関して自国についての適用を排除・変更する目的をもって行われる一方的宣言)を行っています。

 

国際組織犯罪防止条約はテロ対策ではない

そもそも、共謀罪(テロ等準備罪)新設の理由としている国際組織犯罪防止条約は、テロ対策を念頭に置いて成立した条約ではなく、マフィア等の国際組織犯罪への対処を目的としたものでした。条約の採択は2000年(平成12年)であり現在とは国際情勢が大きく異なります。アメリカで起きた9.11のテロ事件も2001年の出来事であり、条約採択後のことです。

条約の中身を見ても、犯罪収益の洗浄や司法妨害等についての対処が中心となっており、テロリズムに焦点は当てられてはいません。しかも、2020年東京でのオリンピック開催が決定したのは2013年で、それ以前に政府与党は共謀罪法案を3度国会に提出しています。そもそも、国内でのテロ対策という理由は共謀罪の立法事実としてはほとんど考慮されてこなかったのです。

にもかかわらず、その後の諸外国でのテロの蔓延や、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催にあたりテロ対策が重要だとして、この条約を引き合いに出すのは、あまりにもご都合主義です。

 

国民への欺瞞だけでなく国際社会への欺瞞でもある

政府は長年にわたり、共謀罪を新設しなければ国際組織犯罪防止条約を批准できない、としてほとんどの先進国が批准しているこの条約を批准しないできました。しかし、これまで見てきた通り、共謀罪新設なしに条約を批准することは可能であり、諸外国の例からも共謀罪がないことを理由に批准しないことには合理性はありません。他の条約においては留保の上批准をしているにもかかわらず、この条約だけ批准しないのは一貫性を欠いています。共謀罪新設の根拠としてきたこの条約に対する態度は、共謀罪新設という目的のために条約を利用しているのではないかという疑義すら感じます。

このような態度は日本国民を欺くのみならず、強力を求める国際社会への欺瞞ですらあると私には感じられます。

 

結論:立法事実の存在は疑わしい

このように見ていくと、

 

  1. 日本国内においてこれまでになかった新たなテロの現実的危険性は確認できない。
  2. 現行法においても重大犯罪の準備行為について摘発・処罰は十分可能。
  3. 国際組織犯罪防止条約は包括的な共謀罪(テロ等準備罪)の新設なしに批准可能である。

ということから、共謀罪(テロ等準備罪)を新設する法改正を行うような立法事実はない、つまり法改正をする必要はないと考えられます。

 

刑法の基本原則や憲法との関係

次に、共謀罪(テロ等準備罪)と刑法の基本原則や憲法との関係を検討します。

 

刑法の基本原則と憲法

 

内心を処罰する共謀罪(テロ等準備罪)

刑法は、処罰の対象を外部から客観的に認識できるような「行為」のみに限定し、何かを心の中で考えただけの場合それが例え「悪い」内心であっても処罰しないとしています。これは憲法19条で思想・良心の自由を絶対的に保障している日本国憲法の大原則が基礎にあります。

共謀は、二人以上の犯罪を行うという意思の合致ですが、それが共謀罪(テロ等準備罪)に該るかどうかを決めるのは、その合意の内容です。その合意の内容とは、人の内心にのみ存在するものである以上、共謀罪(テロ等準備罪)は内心そのものを処罰の対象とするものと言わざるを得ません。これは絶対的自由を保障する憲法19条の思想・良心の自由と真っ向から矛盾します。

 

危険性のない段階で処罰

また、先に見たように、刑法は既遂処罰を原則とし、例外として未遂を罰し、より例外的なものとして予備を罰し、非常に重大な法益に対するものについてだけ共謀を罰しています。これは、「悪い」内心が内心にとどまらず行為として表れた場合でも、それを直ちに罰するのではなく、法益侵害やその可能性がない限り罰しない、という刑法の姿勢を表しています。

なぜなら、刑罰を科するということは、人の自由・権利を強力に制限するものであるため、できるだけ必要最低限のものに限らなければならない、という「刑法の謙抑性」の考え方に基づいているものです。これは、フランス人権宣言の時代からある近代法の基本原理の一つです。より有り体に言えば、なんでもかんでも犯罪にすべきではなく、犯罪にしなくて済むものは犯罪にすべきではなく他の手段を使うべきだ、といったものでしょうか。

この考え方に基づいて、日本の刑法はきちんと法的侵害の度合い、危険性に応じて、既遂→未遂→予備→共謀といった順に原則→例外という体系をとって犯罪を規定しています。

しかし共謀罪(テロ等準備罪)はこの原則を無視して、一気に「共謀」を広く罰するように変更しようとしています。これは近代刑法の原則に真っ向から対立するものです。

 

要件を加えても問題は解決しない

過去の修正案と現時点での報道を踏まえると、当初「共謀」のみをもって犯罪が成立するように規定していた政府与党も、「共謀」だけではなく、「共謀者のいずれかが犯罪準備行為を行うこと」を要件に加えるものとしました。これで一見、内心のみを処罰するものとは異なると主張できるように見えます。

しかしこの犯罪準備行為は過去の法務省の説明によれば「犯罪の実行に向けた具体的な行為」とされているだけで、法益侵害の危険性との関連で設定される要件ではありません。つまり、要件として加えられる準備行為自体が持つ法益侵害の危険性は問わないといのが政府の見解です。一方で、刑法が例外的に罰する予備罪における予備行為については、法益侵害の危険性が高まったことを客観的に判断する必要があることは学説判例の蓄積によって確立しています。

つまり、準備行為が必要との修正がされたとしても、それは予備罪におけるような法益侵害の危険性が問題とならないことから、「共謀」があったとさえすれば、どのような行為でも「準備行為」だと認定されてしまう危険性があるのです。

結局のところ、「共謀」の中身との関係で何らかの行為を捉えれば共謀罪(テロ等準備罪)が成立するとされかねない曖昧な要件に過ぎず、このことからすれば、この要件を加えたところで「共謀」という人の内心にのみ存在するものを直接処罰しようとする共謀罪(テロ等準備罪)の本質は変わりません

 

誰かが準備すれば処罰される可能性

政府与党案によれば、共謀があり、共謀者のいずれかが犯罪準備行為を行えば、共謀に加わった者は処罰されるものとしています。しかしながら、先にみたように「犯罪準備行為」は法益侵害の危険性が高まったかどうかと無関係な要件であり、何を行えばこれに該当するのかは曖昧です。

そのような中で、人の内心にある「共謀」に着目して検挙されたある人が、自分が認識していなかった「犯罪準備行為」をメンバーの誰かがしただけで、共謀罪として処罰されるのが政府与党案です。これによれば、たとえば30人のグループで何か相談があった中で、その中の1人の行った行為を「犯罪準備行為」と認定すれば、共謀罪となる可能性すらある、ということです。

共謀罪をテロ等準備罪と言い換えて、犯罪準備行為を要件に加えたとしても、「共謀」とされる話し合いに加わっただけで何らの準備行為に関わっていない人間からすれば、「準備罪」ではなく「共謀罪」そのものであり、内心そのものに着目してそれを処罰するものになってしまいます。

 

結論:法体系を揺るがし人権を侵害しかねない

日本の刑法が、予備罪ですら例外中の例外とし、共謀を罰するのは数個の犯罪に過ぎないとしているのは、近代刑法の原則や日本国憲法の保障する思想良心の自由をしっかりと踏まえた上でのことです。

これに対し、共謀罪(テロ等準備罪)は、現時点で政府与党が言うような準備行為の要件を加えたとしても、結局は法益侵害の危険性が高まったかどうかとは無関係な、内心そのものへの処罰という性質を免れないと思います。これでは日本の刑法の謙抑性、日本国憲法における思想・良心の自由をとは相容れないものとして許されないのではないかと思います。

そして、先に述べた国際組織犯罪防止条約第三十四条では「自国の国内法の基本原則に従って」とあるのですから、この条約を理由に共謀罪(テロ等準備罪)を新設する理由にはならないということも、ここで重ねて言えます。

 

現実問題として全ての人に関係が生じそうな捜査の問題

 

監視、盗聴という捜査手法が正当化される

ここまでは、共謀罪(テロ等準備罪)が内心そのものを処罰するのと変わらないという点や、その成立要件が曖昧であることなどを書いてきましたが、それよりも最もこの法案が成立した場合に心配されるのは、共謀罪(テロ等準備罪)摘発のための捜査に関してです。

通常の犯罪捜査においては、何がしかの客観的な犯罪結果や、外から認識できる犯罪行為を追っていくことになります。それは例えば犯罪被害の状況であったり、犯罪現場に残された容疑者の痕跡(持ち物や足跡、指紋など)から、容疑者を追っていき特定していくという手法です。捜査官が追うのは、もちろん、証人や容疑者本人からの証言、自白等もありますが、その主なものは外から認識できる犯罪結果や犯罪行為等の証拠、つまり、客観的に痕跡が残るものです。

しかし、共謀罪(テロ等準備罪)は、共謀、つまり話し合いをして犯罪を実行することを合意したことそのものが犯罪となるので、その捜査の対象は話し合いそのものとなります。とすれば、捜査当局が「組織犯罪集団」との疑いを持つ集団に対しては、日常的に監視し、あるいは話し合い自体を盗聴しなければ、有効な捜査はできません。そしてまた、共謀の段階では、具体的な行為によって法益侵害の危険性は高まっていないので、共謀そのものを危険なものとして捜査対象とするしかないとも言えます

とすれば、実際に危険があるかどうかもわからない段階で、捜査機関が「組織犯罪集団」との疑いをもちさえすれば、監視や盗聴が正当化される可能性が高いということです。

 

2016年刑事訴訟法改正による盗聴対象の拡大との関係

2016年に刑事訴訟法が改正される以前は、盗聴という捜査手法は、薬物、銃器、組織的殺人などいわゆる暴力団関係の組織犯罪4類型を対象とする捜査に限定されており、なおかつ、通信事業者の常時立ち会いが義務付けられていました。ところが昨年の改正によって、盗聴の対象となる犯罪は窃盗、詐欺、恐喝、逮捕監禁、傷害等の一般的な刑法犯を含む広い範囲にまで拡大されました。さらに、通信事業者の立ち合いも不要となっています。

この法改正自体、1999年に世論の反対に配慮して適用対象を限定せざるをえなかったものを、2016年になって解除したものと言え大きな問題がありますが、さらに、今回の共謀罪(テロ等準備罪)が成立すれば、より盗聴は蔓延ることになるでしょう。通常の犯罪の場合は、その犯罪に関わる嫌疑等との関連で盗聴の必要性等が少なくとも勘案されますが、共謀罪は共謀そのものが犯罪行為とされるため、盗聴の必要性は容易に認められてしまう可能性が高いからです。

 

司法取引制度との関係

また、同改正で成立したものの中に司法取引制度があります。これは、他人の犯罪の立証に協力する代わりに自分の罪の減免をしてもらうよう検察官と合意をするものです。

共謀罪(テロ等準備罪)はその性質上、話し合い内容を立証する場合に、共謀に参加したとされるものの証言は重要なものと扱われるでしょうが、司法取引制度と共謀罪(テロ等防止罪)の自首減免制度を悪用すれば、虚偽の密告と自白をすることで、誰かを共謀罪へと陥れることも不可能ではありません。一方で、このような場合に、冤罪にさらされる側は犯罪事実がないことの反証をすることは容易ではありません。

共謀罪(テロ等準備罪)と司法取引の組み合わせは、新たな冤罪の強力な温床となる可能性があると思います。

 

一般人には関係ないという説明について

テロ等準備罪についての政府与党の説明の中に、「一般人は対象外」というものがあります。

 

政府が検討しているのはテロ等準備罪であり、従前の共謀罪とは別物だ。犯罪の主体を限定するなど(要件を絞っているため)一般の方々が対象になることはあり得ない

共謀罪「一般人は対象外」=菅官房長官:時事ドットコム

しかし、組織犯罪集団の構成員であるとか、犯罪予備・共謀をしたのだとか、そのような認定を当局からされるまでは誰もが「一般人」です。一方で、そのような認定を当局からされてしまえば、その途端に菅官房長官のいうような「一般人」ではなくなるわけです。

ここで大切なことは、当局の認定というのは裁判を経た有罪判決ではない、ということです。裁判手続きを経て有罪判決を受ける前に、テロ等準備罪の捜査の対象となるかどうかを認定するのは、主に警察当局であり、その認定は正式な裁判手続きではない多分に恣意が入る可能性のあるものです。

そもそも、テロ防止を目的としてテロ等準備罪を新設するのである以上、その対象は暴力団暴力団の構成員ではありません。テロリストです。そして諸外国のテロ事件の例を見れば、テロリストは一般人と変わらぬ生活をしていることも多いです。そのようなテロリストをテロ等準備罪で摘発するためには、一般人にも広く嫌疑をかけるしか方法はありません。つまり、テロ等準備罪は本来、一般人を捜査の対象とすることを認めなければ意味のないものなのです。

誤った起訴がされても必ず無罪になる、冤罪は発生しない、という脳天気な裁判所への信頼を前提にしたとしても、先の述べたように、共謀罪(テロ等防止罪)は、捜査手法として監視と盗聴を広く求めるものです。もし、百歩譲って「一般人」が直接の捜査対象にならないとしても、監視・盗聴は犯罪事実だけを対象とするものではなく、多くの犯罪事実とはならない行動や会話をも対象とせざるを得ないものなので、「一般人」も警察当局からの監視を常に受けてしまう可能性もあります。

いずれにせよ、「一般人は対象外」という説明は欺瞞です。加えて、先に述べた刑訴法の改正を見てもわかるように、世論の反対が強い事項については、最初は小さく立法しておいて後で対象を拡大しなし崩し的に何でもできるようにする、というのは従前からの手法とも言えます。一度、法案が通過したら、それを廃止するのはおろか、拡大を止めることも難しくなるのは容易に想像できるはずです。

 

まとめ

以上見てきたように、共謀罪(テロ等準備罪)については、テロ対策という観点からも必要性は非常に疑わしく、さらに、国際組織犯罪防止条約との関係でも新設の必要性はありません。

他方、共謀罪(テロ等準備罪)が新設されれば、現在聞こえているような修正を加味したとしても、日本国憲法の思想良心の自由や、刑法の基本原則と対立し、曖昧な要件の下で幅広い犯罪を成立させる可能性のある危険なものです。

そして何よりも、共謀罪(テロ等準備罪)の新設は、昨年の刑訴法改正とも相まって、国民生活に対して加速度的に盗聴による捜査が入り込んだり、冤罪を増やしてしまうような結果を招く危険性が非常に高いと思われます。

何よりも、立法に関しては、その立法の本来の目的、建前ではなく法案を何としても通過させたい勢力の思惑をよく理解する必要があります。それは主観的な思い込み、推測では足りませんが、法案の提出過程や修正過程を追って行けばわかるはずです。

この記事の中で、最初に修正前の政府案を上げたのは、この共謀罪(テロ等準備罪)の目的がどこにあるのかが良くわかるから、という意味もありました。再度ここに掲載します。

 

(組織的な犯罪の共謀)
第六条の二
次の各号に掲げる罪に当たる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
 一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮
 二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、第三条第二項に規定する目的で行われるものの遂行を共謀した者も、前項と同様とする。

ここには、共謀罪成立を願う側の望みが端的に表れています。彼らは、ほとんど対象を限定せずに、共謀罪が成立するものとしたかったのです。

それは、誰もかれもを犯罪で罰したいからとは限りません。犯罪そのものの成立よりも、「共謀が行われているのではないか」という嫌疑の下に広く捜査活動を行える根拠が欲しいのかも知れません。もちろん、いざとなれば立件できますが、そうでなくてもターゲットを決めれば、盗聴・監視を合法的に行えるような法的基礎を手に入れたい、その執念が、今この高い政権支持率の中で今結実しようとしているのです。

共謀罪(テロ等予備罪)の成立によって不当に人権を制約される可能性のあるのは、いわゆる左翼、労働組合、社会運動等に関与している人々だけではありません。あなたが右翼であれ、特別な政治的立場を自覚していない人であったとしても、もしこの法案が成立したなら、この2017年を日本社会が暗い方向へと向かった年として思い出すことになるかも知れません。

 

繰り返しますが、テロ対策という建前とは関係なく、この共謀罪(テロ等準備罪)は、政府当局がその気になりさえすれば国民の誰を監視対象にしても許されるとするものです。誰でもです。あなたがどんな政治的立場にあろうと、まっとうに暮らしていようとです。

 

 

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日弁連は共謀罪に反対します(共謀罪法案対策本部)

 

1945年

 占領軍の指揮官のマッカーサーは、日本の徹底改革&天皇制維持の姿勢を決めていた。ワシントン政府は、日本の改革・天皇制いずれにもフラフラしてた。結局はマッカーサーが独断専行で決めていく。

 そのマッカーサーを、日本国民は熱烈歓迎する。
ここで労働基準法を作り組合活動を合法化し、戦前・戦中に拘束されていた社会主義者・共産主義者が釈放される

1945年10月4日、

 マッカーサーから治安維持法共謀罪)の廃止を要求された日本の東久邇内閣は、それを拒絶し総辞職した。

 すなわち、日本の支配層は、敗戦後に、弾圧した国民の復讐を恐れ、日本占領軍に逆らってでも治安維持法を守ろうとした

 

 しかし、戦後にアメリカから与えられた民主主義体制によって日本の治安が良好に保たれたので、

戦前の治安維持法共謀罪)も、共産主義者の暗殺行為も、思想善導も必要無かった。

 

「児童を保護するため」と言った児童ポルノ規制法は、実際は、

「児童ポルノ単純所持罪は児童を逮捕するための法律かも」

でした。

(このグラフの元データは、警察庁の生活安全の確保に関する統計のうち、「平成25年中の少年非行情勢について」の報告による)

 

同様に、「国民をテロから保護するため」と言うテロ準備罪は、

「国民を逮捕するための法律」のようです。

 

また自民党は、テロ準備罪(治安維持法)の成立に向けて、以下の憲法改悪案で運用したいと考えているようです。

憲法36条)公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

自民党案では:「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、これを禁ずる。」に変えます。
テロ準備罪(治安維持法)の運用等で止むお得ないと総理大臣(安倍)が判断した場合は、拷問を許可するようです。 

 

治安維持法――なぜ政党政治は「悪法」を生んだか(その2)  

 

あらたな取締対象を開拓

 1937年6月の思想実務者会同で、東京地裁検事局の栗谷四郎が、検挙すべき対象がほとんど払底するという状況になっている状況を指摘し、特高警察と思想検察の存在意義が希薄化させるおそれが生じている事に危機感を表明した。

(1935年から1936年にかけて、予算減・人員減があった)

 そのため、あらたな取締対象の開拓がめざされていった。

 

治安維持法適用対象を拡大し、宗教団体、学術研究会(唯物論研究会)、芸術団体なども摘発されていきます。

 

「共謀罪」ついに姿を現すが、 「3回廃案の焼き直し」そのもの

「共謀罪」ついに姿を現すが、 「3回廃案の焼き直し」そのもの

2017年02月28日 保坂展人


国会では、衆議院の予算審議の後半で、「森友学園問題」が大きな焦点となりました。

一方で、金田法務大臣による答弁が右往左往した「共謀罪」についても、政府は3月10日の閣議決定を予定して、与党内の調整を急いでいると伝えられています。

 

すると、2月28日、東京新聞が政府提出法案の全文を入手したとして報道しています。

かねてから予想していたように、「テロ等準備罪」と声高に宣伝していたにもかかわらず、

「テロ」という文言は見当たらないそうです。


--------------引用開始----------------------------------------------------------------


テロ準備罪に「テロ」表記なし 「共謀罪」創設の改正案を全文入手:東京新聞2017年2月28日


本紙が入手した法案全文によると、処罰されるのは「実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画」で、「計画罪」と呼ぶべきものとなっている。政府が与党に説明するために作成した資料では、対象とする二百七十七の犯罪を「テロの実行」「薬物」など五つに分類していたが、本紙が入手した法案全文には「テロ」の文言はなく、分類もされていなかった。特定秘密保護法で規定されているようなテロリズムの定義もなかった。


法案は、共同の目的が犯罪の実行にある「組織的犯罪集団」の活動として、その実行組織によって行われる犯罪を二人以上で計画した者を処罰対象としている。計画に参加した者の誰かが資金や物品の手配、関係場所の下見、「その他」の実行準備行為をしたときに処罰すると規定。また「(犯罪)実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、または免除する」との規定もある。


--------------引用おわり----------------------------------------------------------------


記事を読む私には、11年前に激しく論戦した「共謀罪」の記憶がよみがえります。

安倍晋三首相が「テロ等準備罪で、共謀罪と呼ぶのは間違いです」と何度繰り返しても、

上記の内容はかつての「共謀罪」そのものです。

 

私は、これまで以下のように予測していました。


--------------引用開始----------------------------------------------------------------


「オルタナティブ・ファクト」と「共謀罪と呼ばないトリック」(2017年1月31日)


政府提出予定の新法案には、かつての「共謀罪」が「合意罪」「計画罪」と記述される予定だと思われます。ただ、「合意(計画)とは何か」と問えば、「実行しようとする犯罪の手順等について、具体的・現実的に合意(計画)すること」と説明することでしょう。つまり、「共謀」を「合意(計画)」と言い替えているだけなので、(国際組織犯罪防止)条約批准にも支障がないというトリックなのです。


--------------引用おわり----------------------------------------------------------------


すなわち「共謀」を「合意」や「計画」と言い替えているだけで、

本質は変わっていないのです。

 

「共謀」は評判が悪いから、多くの人が納得する「テロ等防止罪」と呼称を変えて「まったく別の代物」「共謀罪と呼ぶのは間違い」と言ってきたのですが、

法案の内容では「テロ」を使用することなく、

「共謀」を「計画」に差し替えてきたということです。

 

改めて、「共謀罪」が提案されたと受けとめ、

問題点をピックアップしたいと思います。


11年前、共謀罪の国会論戦においても、「一般市民や労働組合等に乱用されるおそれはないか」という議論が交わされていました。

 

当時の法務省からは、「組織的犯罪集団が対象なので、一般の人には影響がありません」という見解が語られ、

「およそ一般に存在している団体が共謀罪の対象となることはなく、『犯罪』を共同の目的とした場合に絞られる」との答弁が続きました。


しかし、「建設関係の工務店の一部の課が、『リフォーム詐欺』を繰り返している場合には、共謀罪は適用できるか」という問いに答えて、

当時の法務省は、「企業や会社という正当な目的をもって存在している組織・団体の中で、一部が「犯罪」を共同の目的として活動をし始めた場合には、共謀罪が成立する場合もある」という見解が示されていました。


この論点は、衆議院予算委員会でふたたび浮上しました。

 

先にふれたように、安倍晋三首相は「共謀罪と呼ぶのは間違い。一般市民が対象となることはありえない」と断言してきました。

 

一方で、金田勝年法務大臣は「一般市民は、『組織的犯罪集団』という定義に入らないということでいいのか」という民主党階猛(しなたけし)議員の質問に答えて、

 

「団体の性質が一変したと認められなければ、組織的犯罪集団と認められることはない」と答弁しています。


ひらたく言えば、先の工務店内「リフォーム詐欺課」のような場合をさして、

当初から「犯罪遂行」を目的として結成された組織・団体でなくても、

犯罪遂行を目的とするように「団体の性質が一変」した場合には、

共謀罪の適用対象になるとしているのです。

 

以前から繰り返し行われてきた議論ですが、

首相と法務大臣の見解が違うとして、

民進党は「政府統一見解」を求めていたところ、

2月16日、法務省は「統一見解」を出しています。


--------------引用開始----------------------------------------------------------------


共謀罪、一般人対象の余地「犯罪行う団体に一変の場合」:朝日新聞 2017年2月17日


 犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の要件を変え、「テロ等準備罪」を新設する法案をめぐり、法務省は16日、「正当に活動する団体が犯罪を行う団体に一変したと認められる場合は、処罰の対象になる」との見解を明らかにした。

これまで政府は、「一般の市民は対象にならない」としてきたが、捜査当局の解釈や裁量によっては対象になることが明らかになった。


衆院予算委員会の理事懇談会で、法務省が文書を示した。

法案はまだ国会に提出されておらず、

「テロ等準備罪の具体的内容は検討中」と前置きしたうえで、

対象となる「組織的犯罪集団」については「結合の目的が重大な犯罪などを実行する団体」という趣旨で検討していると説明した。


加えて、「もともと正当な活動をしていた団体」も、その目的が「犯罪を実行することにある団体」に一変したと認められる場合は、組織的犯罪集団に当たり得るとの見解を示した。


--------------引用おわり----------------------------------------------------------------


 この段階でも、「従来の共謀罪とはまるで違う」(安倍首相)どころか、「11年前の共謀罪の議論とそっくり」と感じます。

 

「組織的犯罪集団に限る」と言いながら、

一般の企業や団体であっても、

正当な団体の目的から逸脱し、「犯罪」を共同の目的とするような団体に「変質」した場合は組織的犯罪集団となると答弁した過去の議論を、法務省は見事に踏襲していることがわかります。

 

「一般市民を対象としない」と断言するのなら、

組織的犯罪集団の定義を暴力団やテロ組織、

薬物密売組織、振り込め詐欺集団等に限定した上で、

「常習性」「反復継続性」を付記すべきと日本弁護士連合会の「共謀罪創設反対の意見書」の指摘する通りだと思います。

 

「法案全文」を伝えた東京新聞の記事の後半を読んでみましょう。


--------------引用開始----------------------------------------------------------------


テロ準備罪に「テロ」表記なし 共謀罪」創設の改正案を全文入手:東京新聞2017年2月28日


政府はこれまでの国会答弁で「合意に加えて、準備行為がなければ逮捕令状は出ないように立法する」などと説明してきた。

しかし、条文は「実行準備行為をしたときに」処罰するという規定になっており、

合意したメンバーの誰かが準備行為をしなければ逮捕できないとは読み取れない。


準備行為がなければ起訴はできないが、計画や合意の疑いがある段階で逮捕や家宅捜索ができる可能性が残ることになる。

 

合意の段階で捜査できるのは、本質的には内心の処罰につながる共謀罪と変わらない。


「組織的犯罪集団」は政府統一見解では、普通の団体が性質を変えた場合にも認定される可能性がある。

 

団体の性質が変わったかどうかを判断するのは主に捜査機関。

その裁量次第で市民団体や労働組合などが処罰対象となる余地がある。


--------------引用おわり----------------------------------------------------------------


11年前の共謀罪をめぐる国会論戦で、もっとも懸念したのが「乱用への危惧」です。

「準備行為」とは、共謀の内容を実行するために、「お金を降ろす」「切符を予約する」等の具体的行為をさすとされていますが

それら自体は誰もが日常的に行なっている行為にすぎません。

 

「共謀」が存在し、その実行のための「お金」「切符」と断定するためには、事前に情報をつかんでおく必要があります。


共謀罪が適用される場合、犯罪は「計画」どまりで、未だ実行されていません。

「どんな会話をかわしたか」

「メールやLINEのやりとり」のみならず、

「内心どのように考えていたか」

「心の中で決意したどうか」

の立証が問われることになります。

 

政府は、ここに共謀・合意のみならず「準備行為」を入れたことで厳格となったと強調していますが、はたしてそうでしょうか。

 

日本弁護士連合会の意見書は次のように述べています。


--------------引用開始----------------------------------------------------------------


「準備行為」の要件は適切に機能しないこと


共謀罪法案は,計画(合意)のみならず,当該犯罪の実行の「準備行為」がなされることを処罰条件として付加されており,内心や思想を処罰するものではない,とされている。しかしながら,今回,「準備行為」の例として,資金又は物品の取得が例示されていることから分かるように,準備行為自体は,予備罪や準備罪における予備行為又は準備行為のように,その行為自体が結果発生の危険性を帯びる行為とはされておらず,計画に基づく行為(その行為は,我々が日常生活において通常行っている行為でも構わない。)が外部に現れれば,処罰条件は具備されたことになると理解される。


また「準備行為」は処罰条件に過ぎないため,「計画」の時点から犯罪の嫌疑がありとして犯罪捜査の対象となり得る。そうすると、「準備行為」がなされたことを処罰条件とするとしても, 共謀罪法案は,依然として,犯罪を共同して実行する意思を処罰の対象としていることと実質的には変わらないと言わざるを得ない。 (日本弁護士連合会意見書)


--------------引用おわり----------------------------------------------------------------


「準備行為」を処罰条件としたと言っても、

「犯罪を共同して実行する意思」つまり「共謀・合意」を処罰対象としていることと変わらないという点は、

具体的事例をあげて考えてみるとわかりやすいと思います。

 

共謀の結果、「お金を降ろす」「切符を予約する」ことを「準備行為」とするわけであって、

そもそも共謀がなければ何らとがめられることのない日常の一コマです。

 

犯罪とされるのは、「共謀・合意による計画立案」なのです。

与党内でも、共謀罪への「異論」の声があがったとの報道もあります。


--------------引用開始----------------------------------------------------------------


「共謀罪」、与党からも異論 閣議決定ずれ込みも 日本経済新聞 2017年2月24日


犯罪を計画段階から処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案をめぐり、政府の説明に対する不満が野党だけでなく、与党内からも高まってきた。「組織的犯罪集団」や「実行準備行為」の定義について「明確性に欠ける」などの指摘が相次いでいる。政府は当初、3月10日の閣議決定を目指していたが困難な情勢だ。


「このままだと反対だ。刑事法として非常に欠陥がある」。23日の自民党法務部会は参加議員から異論が噴出した。


--------------引用おわり----------------------------------------------------------------


自民党内では、野党が指摘した問題点も議論されたようです。

自民党法務部会では「一般の団体から組織的犯罪集団に切り替わるのは何が基準になるのか」との声があがったといいます。

公明党もまた、「3月10日の閣議決定は非常に厳しい」(漆原良夫・中央幹事会会長)と表明しています。


--------------引用開始----------------------------------------------------------------


「共謀罪」、政府が与党に説明=公明幹部「最大の対決法案」時事ドットコム 2017年2月28日


政府は28日午前、「共謀罪」の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案について公明党に説明した。同党の意向に配慮して対象犯罪を277に絞り込んだことや、処罰対象を「組織的犯罪集団」に限定したことを伝え、理解を求めた。


 同党の漆原良夫中央幹事会長は、政府の説明を聴取する党会合の冒頭、「今国会最大の与野党対決法案だ。テロ未然防止の観点から、この法案がどう必要なのか、しっかり審議していただきたい」と呼び掛けた。(2017/02/28-09:11)


--------------引用おわり----------------------------------------------------------------


共謀罪は過去3回、廃案となっています。

 

私は、『共謀罪はなぜ過去3回廃案になったのか』(2017年1月21日) で、かつての経過をふりかえっています。

 

今回、注目に値するのは、過去に何回も自民・公明修正案として衆議院法務委員会に提出したり、自民党小委員会でまとめられた案と比較して、

政府が今回まとめた法案がどのレベルにあるかという点です。

 

「組織的犯罪集団に絞る」「準備行為を加える」等、すでに11年前に議論していたことで、何一つ新しい要素はありません。

 

「今国会最大の与野党対決法案」というなら、その検証は不可欠です。


関連記事


共謀罪はなぜ過去3回廃案になったのか


「オルタナティブ・ファクト」と「共謀罪と呼ばないトリック」


「共謀罪」論議で浮き彫りになった矛盾と「法務大臣の謝罪」

 

日弁連は共謀罪に反対します(共謀罪法案対策本部)

 

1945年

 占領軍の指揮官のマッカーサーは、日本の徹底改革&天皇制維持の姿勢を決めていた。ワシントン政府は、日本の改革・天皇制いずれにもフラフラしてた。結局はマッカーサーが独断専行で決めていく。

 そのマッカーサーを、日本国民は熱烈歓迎する。
ここで労働基準法を作り組合活動を合法化し、戦前・戦中に拘束されていた社会主義者・共産主義者が釈放される

1945年10月4日、

 マッカーサーから治安維持法共謀罪)の廃止を要求された日本の東久邇内閣は、それを拒絶し総辞職した。

 すなわち、日本の支配層は、敗戦後に、弾圧した国民の復讐を恐れ、日本占領軍に逆らってでも治安維持法を守ろうとした

 

 しかし、戦後にアメリカから与えられた民主主義体制によって日本の治安が良好に保たれたので、

戦前の治安維持法共謀罪)も、共産主義者の暗殺行為も、思想善導も必要無かった。

 

「児童を保護するため」と言った児童ポルノ規制法は、実際は、

「児童ポルノ単純所持罪は児童を逮捕するための法律かも」

でした。

http://sightfree.blogspot.jp/2014/03/blog-post.html

(このグラフの元データは、警察庁の生活安全の確保に関する統計のうち、「平成25年中の少年非行情勢について」の報告による)

 

同様に、「国民をテロから保護するため」と言うテロ準備罪は、

「国民を逮捕するための法律」のようです。

 

また自民党は、テロ準備罪(治安維持法)の成立に向けて、以下の憲法改悪案で運用したいと考えているようです。

憲法36条)公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

自民党案では:「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、これを禁ずる。」に変えます。
テロ準備罪(治安維持法)の運用等で止むお得ないと総理大臣(安倍)が判断した場合は、拷問を許可するようです。 

 

 

治安維持法――なぜ政党政治は「悪法」を生んだか(その2)  

 

 その1では1925年の成立に至るまでの過程をまとめましたが、本記事(その2)では1940年頃までの運用と改正についてまとめたいと思います。

成立当時の政権は「言論文章の自由の尊重」(内相・若槻礼次郎)をうたっており、宣伝ではなく結社を取り締まるものとして制定された同法ですが、運用の実態はいかなるものだったのでしょうか?

そしてなぜ改正を必要としたのでしょうか?

第3章から第5章までをまとめました。

 

  • 赤化宣伝


 
結社を取り締まる法律として成立した治安維持法は、本来赤化宣伝を直接取り締まるものではありませんでした。

日ソ基本条約には「宣伝禁止条項」が含まれていましたが、

同条項はあくまでも「政府の命令を受けた人間と政府から財政支援を受けた団体」が宣伝をすることを禁止したに過ぎず、

コミンテルンが事実上ソ連政府と密接な関係をもっていたにも関わらず、その宣伝行為をも取り締まることは困難でした。

まして幣原協調外交のもとでは、宣伝禁止条項の厳格な運用を達成することもできず、同条項は条約締結から1年を待たずに形骸化します。

その結果、当局は治安維持法適用対象拡大に動くことになります。



1925年11月、同志社大学軍事教育に反対するビラがまかれ、京都府特高課は京都地裁検事局検事正と協議の上で京都大学社会科学研究会の一斉捜索を決定します。

内務省は若い学生の検挙に消極的でしたが、司法省は本件への治安維持法適用に積極姿勢を見せていました。

予審の結果、本件では治安維持法第1条によるところの「結社罪」ではなく、第2条で定義されている「協議罪」*1適用が争われることになります。

結果としては第一審において、「私有財産制度否認」を目的とした「協議罪」で有罪が宣告されます。

治安維持法はその最初の事案において、投書の目的である「結社を取り締まる法律」としては機能しなかったのです。



日本共産党1925年上海会議でコミンテルンから再建を指示され、「君主制の廃止」をうたった27テーゼに基づいて活動を展開していきます。

テーゼ君主制の廃止」を明記していたため、それまで曖昧だった共産主義が「国体変革」を禁止する治安維持法と一直線に接続されることになります。

1928年の第1回男子普通選挙において、共産党は11名の党員を労農党から立候補させます。

この公然とした活動は内務省を刺激し、治安維持法第1条の「結社罪」適用を目的とした全国一斉検挙につながることになります。

1928年3月15日、全国で1600名が一斉に検挙されます。

ところが、共産党事務局長の家から押収された名簿に記載されていたのは409名であり、検挙者の大半は共産党に加入していないことが発覚します。

さらに第1条の結社罪の定義においては、結社には「情ヲ知リテ」すなわち「結社の目的を知った上で」加入していることが要件となっており、名簿に名前があっても結社(加入)罪が成立しないケースさえありました。

最終的な起訴数は488名となりましたが、治安維持法はその最初の大規模検挙から、怪しい容疑者を手当たり次第検挙するという「粗雑な運用」を許してしまったのです。



 
この時の改正は2つの目的を持っていました。

一つは結社罪の最高刑を死刑としたこと*2

もう一つは目的遂行罪(結社に加入していなくても、国体変革等を目指す結社の目的に寄与する行動を罰するもの)の設定でした。

特に後者について、改正後に拡大適用されて猛威を振るうことになります。


 
3.15事件は治安維持法適用という意味では「失敗」だったとはいえ、共産主義勢力の伸長に対して政府危機感を抱くには十分なものでした。

田中内閣の原司法相と小川鉄道相は同事件を受けて治安維持法改正に積極的に動くことになります。

1928年4月25日、治安維持法改正案は内閣に提出され、次いで第55特別議会で議論されることになります。

大きな問題を孕んでいた目的遂行罪についてはほとんど議論されなかったものの、会期が短かったこともあって改正案は審議未了で廃案となります。


 
しかし、原法相は諦めませんでした。

議会の承認を得ずに政府が制定する「緊急勅令*3を抜け道としたのです。

その要件に鑑みて明らかな濫用であり、田中内閣議会軽視との批判を受けますが、枢密院審査委員会第6回審査会において同勅令は5対3の僅差で可決されます。

さらに本会議での審議が行われますが、このとき昭和天皇枢密院史上初めて「如何程遅くなりても差支なし、議事を延行すべし」との要望を出しており、表決が1日延ばされました。

しかしながら、最終的に反対5賛成24の賛成多数で緊急勅令は可決されます。

そして事後の議会では目的遂行罪や法案改正以前に取り締まりを充実させることなどが議論されますが、議会多数を占める政友会は討議を打ち切り、賛成249反対170で事後承認が成立します。

 

(当ブログのコメント:

1928年の第55議会(5月6日閉会)で、特高警察の大拡充の追加予算が認められ、それとともに、思想検察(裁判所のチェックを外して、独自権限で犯人の逮捕状を発行できる機関)の創設の経費が認められる。(「思想検事」2000年9月20日発行(荻野富士夫著)34ページ))

 

  • 改正後の運用


 
改正から3ヶ月後には民政党の浜口内閣が成立し政権交替が起きます。

浜口政権は当初社会運動に対する取り締まりについて柔軟な姿勢*4を見せますが、1930年2月の第三次共産党検挙を機に挫折します。

同検挙においては共産党外郭団体に目的遂行罪が適用され、治安維持法の拡大の一端を示しています。

裁判の場でも目的遂行罪は存在感を示しました。

1931年5月20日の大審院判決では、当人の活動が結社の目的に合致すると客観的に判断できれば(主観的な意図がなくても)目的遂行罪は成立するとの判断がくだされます。

検察や警察による恣意的な運用が認められたも同然の判決でした。

 

 

---引用:治安維持法とゲーム規制--- 

治安維持法

裁判所のチェックを外して犯人を逮捕しました。


-----引用-----------

 共謀罪は自白で立証することになるので、自白調書さえ取れれば有罪にできる。捜査機関は長期間の身柄拘束をして取れるまで取り調べるでしょう。
-----引用おわり------


治安維持法は、犯罪の理由を政治思想としましたので、

犯人の自白が必ず「証拠」として必要になりました。

 

「犯人の自白」を、刑事犯の証拠にした治安維持法は、

思想を取り締まるので、冤罪を生まないよう、

厳密な取り調べで犯人かそうで無いかの区分けをしたようですが、

それでも、かなり冤罪が多かったと聞いています。

 

A:治安維持法 第18条 ① 検事ハ被疑者ヲ召喚シ又ハ其ノ召喚ヲ司法警察官ニ命令スルコトヲ得

検事が司法警察官に命令して逮捕(召喚)状を発行させる。

(中略)

③ 召喚状ノ送達ニ関スル裁判所書記及執達吏ニ属スル職務ハ司法警察官吏之ヲ行フコトヲ得

司法警察官は裁判所の権限を持って逮捕(召喚)状を発行することができる。


治安維持法は実質的に、裁判所を外して、警察官だけの独断で犯人を逮捕できたので、大きな弾圧を生みました。

 

「思想検事」(岩波新書)「荻野富士夫 著」

に、治安維持法が詳しく書いてありました。


(207ページ)

治安維持法の特徴は、単に法的な処罰だけでなく、

>より広く社会的な処罰ないし威嚇としても機能したことにあった。

・・・

>国法にふれたという嫌疑をかけられるということは、

>倫理的には悪人、ひとでなし、信仰上からは罪人、

>非国民、はなはだしい場合、公敵、売国奴になってしまう。

 

治安維持法の前身の「集会条例」に類似する規定もあるようですので、

児童ポルノ単純所持違法化法案などの、治安維持法と同じく

裁判所のチェックを外して逮捕するという、令状主義に反する法案には気をつける必要があると思います。



今の日本の公安警察は、戦前の治安維持法の実行部隊をそのまま引き継いでいるそうです。

警察には、今も、戦前の治安維持法を再現しようとする勢力が根強くあるそうです。

今も、戦前の治安維持法を引き継いだ憲法違反の治安律法が多数あり、

それらが戦前の治安維持法のように実施されていない理由は、ただ、


それ(治安維持法)に反対する多くの市民運動の存在だけが、

治安維持法の実施を抑えている、

きわどいバランスに日本があるようです。


「思想検事」(岩波新書)210ページに、以下のように書いてありました。

>だが、この治安体制の継承によってただちに戦前の状況が再現されるわけではない。

>それを許さなかったのは、破防法反対運動、そして60年安保闘争とつづく

>大衆運動の高まりであったし、

>いまも、かたちを変えつつ、ねばりづよく展開されるさまざまな市民運動である。

>つまりは戦後の民主主義の存在であり、

>それこそが戦前の再現を防ぐ最大の保障なのである。


現在の日本は、このように際どいバランスにあるようです。


安心な社会というのは、個々人の起こす問題を少なくする事と、

政治権力の起こす問題とを少なくすることで実現すると思います。

安心な社会を維持するために、

危険な「戦前の治安維持法」の実施と同様な体制を招かない事が

先ず第1に優先されると思います。

 -----------------引用おわり---------------------

 

 

1930年代に入り、治安維持法はその膨脹期に入ります。1928年から1940年にかけての検挙者数は6万5153人にのぼった一方で、起訴者数は5397名にとどまります。

治安維持法の運用においては、起訴・裁判を通じた処罰よりも身柄拘束に重点が置かれていたことが窺えます。

また31年から33年だけでこの期間の半分を占める3万9000人が検挙されますが、その背景には外郭団体への取り締まり強化がありました。

 

目的遂行罪を積極的に適用して、結社罪の適用が難しい外郭団体の摘発を行っていったのです。


 
他にこの時期には、大量増加する起訴されない検挙者を対象として転向政策の充実を目指した改正も試みられました。

司法省は思想犯の社会復帰を危惧し、予防拘禁も含めた協力な転向政策の実現を企図します。

予防拘禁の導入1934年改正案の中で司法省が最も重視した点の一つでしたが、特に貴族院で異論が噴出して同条項が削除されたため、小山内相らは両院協議会を開いて衆議院貴族院の対立を先鋭化させることで法案を廃案に持ち込みます。

不本意な法案が通過するよりもあえて廃案にする道を選んだのです。



 
さらなる拡大適用の端緒となったのが、1935年の第二次大本教事件でした。

公称40万人の信者が国家主義運動に参入することを恐れた内務省が取り締まりに踏み切ったのです。

本件は共産主義活動ではなく国家主義運動に治安維持法適用された唯一の事例であると同時に、

宗教団体への取り締まりが本格化するきっかけとなりました。

予審調書では出口王仁三郎が日本の統治者になることを目的としていたとの認定がなされ、内務省は「国体変革」の罪を大本教に強引にあてはめて宗教団体に治安維持法適用する前例を作ったのです。

その後仏教系・キリスト教系の団体が幅広く摘発されていきます。

しかしながら国家主義運動を対象とした取り締まりはその本丸である右翼団体に及ぶことはありませんでした。 

各団体が「忠君愛国」を掲げて天皇制を奉じている以上、警察は限定的な指導を行うことしかできませんでした。


 
前年の1934年の改正案では国家主義運動の取り締まりが争点になっていましたが、松本警保局長が右翼思想は共産主義と異なり体系化しておらず、思想として取り締まることが難しい。

テロを起こした右翼は一時的に集まったに過ぎず(恒久的な結社ではない)一時的の現象」であると答弁するなどし、結局右翼対策は盛り込まれませんでした。

またファシズム対策の一環として、1925年の成立時に削除された「政体変革」が政党の手で再度盛り込まれる可能性もありました。

しかし筆者は、自らの合法的政治変革の可能性を守るために規制対象から「政体変革」を削除した1925年の段階の政党に対して、1930年代政党は自らをテロから守るために「政体変革」を積極的に改正案に盛り込もうとしていたと指摘し、政党凋落を如実にあらわしていると述べています。

 

  • ここまでのまとめ

 

  内務省司法省法律と現状との間に齟齬を認めると、まず拡大解釈、ついで法改正を志向することで穴を埋めようとしました。

2度に渡る改正の試みは失敗しましたが、目的遂行罪を中心とした摘発の増加により、共産党・その外郭団体共に1935年までにほぼ壊滅します。

 

あらたな取締対象を開拓

 1937年6月の思想実務者会同で、東京地裁検事局の栗谷四郎が、検挙すべき対象がほとんど払底するという状況になっている状況を指摘し、特高警察と思想検察の存在意義が希薄化させるおそれが生じている事に危機感を表明した。

(1935年から1936年にかけて、予算減・人員減があった)

 そのため、あらたな取締対象の開拓がめざされていった。

 

治安維持法適用対象を拡大し、宗教団体、学術研究会(唯物論研究会)、芸術団体なども摘発されていきます。

 

こういった適用対象の成立当初の目的を逸脱した拡大は思想検事たちも認めるところであり、だからこそ彼らは改正を志向しましたが、もはやその改正は誰かの政治的リーダーシップのもとに行われるものではありませんでした。

 

思想検事の一人・中村義郎は、「制度というものの通弊で、ひとりでに増殖していく」と回顧しています。


 
筆者によれば、最大の問題は政党凋落でした。1930年代の各党は政争に明け暮れ、治安維持法を制御できないばかりかそれに守ってもらおうとすらする有様でした。

また陸軍の台頭についても筆者は言及しています。

人民戦線事件の背景には陸軍皇道派の影響が指摘され、内務省陸軍との関係で運用に恣意的にならざるを得なかったのです。

 

 

*1:第1条で指定されている国体変革などの事項を目的とした協議を行うことに対し課される罪で、第1条より量刑は軽い

 

*2:ただし日本国内において治安維持法のみで死刑を執行されたケースは存在しない。治安維持法適用された中で起訴者が死刑を科され唯一のケースはゾルゲ事件だが、本件については治安維持法違反ではなく国防保安法違反を理由として死刑が科された

 

*3:もちろん無条件に発動できるわけではなく、公共の安全を保持し災厄を避ける目的であること、議会が閉会中であること、緊急の必要性があることが要件とされ、また事前に枢密院の審査を受け事後に議会の承認を受ける必要がありました

 

*4:学生検挙者への寛容な処置、合法的な社会運動共産主義運動の峻別、思想犯に対する取り扱いの改善

 

マジありえない共謀罪

【特集】マジありえない共謀罪・盗聴法・マイナンバー

2017年2月16日 IWJ


 特定秘密保護法、安保関連法の次は「共謀罪」の創設か。

 「共謀罪」の創設は国民の「思想・信条の自由」を奪う法律に他ならない。憲法で保障された基本的人権を蔑ろにした、途方もない悪法である。

 

「戦争を実施する国では自由と民主主義体制は維持できない」〜安倍政権が「共謀罪」で民主主義を壊す「理由」を元外務省国際情報局長の孫崎享氏が解説! 2017.2.16

 

 「戦争を実施しようとする国では、自由と民主主義の体制を維持できないということだ」

 なぜ「共謀罪」の新設が急がれるのか。2017年2月16日(木)、衆議院第一議員会館共謀罪に反対する超党派の第2回勉強会が開催された。

 共謀罪の導入で市民の「表現の自由」は大きく侵害されるおそれがある。元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、米軍の「下請け」として日本が戦争に参画するため、安倍政権は自由・民主主義体制の破壊に迫られているとの見方を示した。

 


日弁連は共謀罪に反対します(共謀罪法案対策本部)

 

1945年

 占領軍の指揮官のマッカーサーは、日本の徹底改革&天皇制維持の姿勢を決めていた。ワシントン政府は、日本の改革・天皇制いずれにもフラフラしてた。結局はマッカーサーが独断専行で決めていく。

 そのマッカーサーを、日本国民は熱烈歓迎する。
ここで労働基準法を作り組合活動を合法化し、戦前・戦中に拘束されていた社会主義者・共産主義者が釈放される

1945年10月4日、

 マッカーサーから治安維持法共謀罪)の廃止を要求された日本の東久邇内閣は、それを拒絶し総辞職した。

 すなわち、日本の支配層は、敗戦後に、弾圧した国民の復讐を恐れ、日本占領軍に逆らってでも治安維持法を守ろうとした

 

 しかし、戦後にアメリカから与えられた民主主義体制によって日本の治安が良好に保たれたので、

戦前の治安維持法共謀罪)も、共産主義者の暗殺行為も、思想善導も必要無かった。

 

「児童を保護するため」と言った児童ポルノ規制法は、実際は、

「児童ポルノ単純所持罪は児童を逮捕するための法律かも」

でした。

http://sightfree.blogspot.jp/2014/03/blog-post.html

(このグラフの元データは、警察庁の生活安全の確保に関する統計のうち、「平成25年中の少年非行情勢について」の報告による)

 

同様に、「国民をテロから保護するため」と言うテロ準備罪は、

「国民を逮捕するための法律」のようです。

 

また自民党は、テロ準備罪(治安維持法)の成立に向けて、以下の憲法改悪案で運用したいと考えているようです。

憲法36条)公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

自民党案では:「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、これを禁ずる。」に変えます。
テロ準備罪(治安維持法)の運用等で止むお得ないと総理大臣(安倍)が判断した場合は、拷問を許可するようです。 

 

 

治安維持法――なぜ政党政治は「悪法」を生んだか(その2)  

 

 その1では1925年の成立に至るまでの過程をまとめましたが、本記事(その2)では1940年頃までの運用と改正についてまとめたいと思います。

成立当時の政権は「言論文章の自由の尊重」(内相・若槻礼次郎)をうたっており、宣伝ではなく結社を取り締まるものとして制定された同法ですが、運用の実態はいかなるものだったのでしょうか?

そしてなぜ改正を必要としたのでしょうか?

第3章から第5章までをまとめました。

 

  • 赤化宣伝


 
結社を取り締まる法律として成立した治安維持法は、本来赤化宣伝を直接取り締まるものではありませんでした。

日ソ基本条約には「宣伝禁止条項」が含まれていましたが、

同条項はあくまでも「政府の命令を受けた人間と政府から財政支援を受けた団体」が宣伝をすることを禁止したに過ぎず、

コミンテルンが事実上ソ連政府と密接な関係をもっていたにも関わらず、その宣伝行為をも取り締まることは困難でした。

まして幣原協調外交のもとでは、宣伝禁止条項の厳格な運用を達成することもできず、同条項は条約締結から1年を待たずに形骸化します。

その結果、当局は治安維持法適用対象拡大に動くことになります。



1925年11月、同志社大学軍事教育に反対するビラがまかれ、京都府特高課は京都地裁検事局検事正と協議の上で京都大学社会科学研究会の一斉捜索を決定します。

内務省は若い学生の検挙に消極的でしたが、司法省は本件への治安維持法適用に積極姿勢を見せていました。

予審の結果、本件では治安維持法第1条によるところの「結社罪」ではなく、第2条で定義されている「協議罪」*1適用が争われることになります。

結果としては第一審において、「私有財産制度否認」を目的とした「協議罪」で有罪が宣告されます。

治安維持法はその最初の事案において、投書の目的である「結社を取り締まる法律」としては機能しなかったのです。



日本共産党1925年上海会議でコミンテルンから再建を指示され、「君主制の廃止」をうたった27テーゼに基づいて活動を展開していきます。

テーゼ君主制の廃止」を明記していたため、それまで曖昧だった共産主義が「国体変革」を禁止する治安維持法と一直線に接続されることになります。

1928年の第1回男子普通選挙において、共産党は11名の党員を労農党から立候補させます。

この公然とした活動は内務省を刺激し、治安維持法第1条の「結社罪」適用を目的とした全国一斉検挙につながることになります。

1928年3月15日、全国で1600名が一斉に検挙されます。

ところが、共産党事務局長の家から押収された名簿に記載されていたのは409名であり、検挙者の大半は共産党に加入していないことが発覚します。

さらに第1条の結社罪の定義においては、結社には「情ヲ知リテ」すなわち「結社の目的を知った上で」加入していることが要件となっており、名簿に名前があっても結社(加入)罪が成立しないケースさえありました。

最終的な起訴数は488名となりましたが、治安維持法はその最初の大規模検挙から、怪しい容疑者を手当たり次第検挙するという「粗雑な運用」を許してしまったのです。



 
この時の改正は2つの目的を持っていました。

一つは結社罪の最高刑を死刑としたこと*2

もう一つは目的遂行罪(結社に加入していなくても、国体変革等を目指す結社の目的に寄与する行動を罰するもの)の設定でした。

特に後者について、改正後に拡大適用されて猛威を振るうことになります。


 
3.15事件は治安維持法適用という意味では「失敗」だったとはいえ、共産主義勢力の伸長に対して政府危機感を抱くには十分なものでした。

田中内閣の原司法相と小川鉄道相は同事件を受けて治安維持法改正に積極的に動くことになります。

1928年4月25日、治安維持法改正案は内閣に提出され、次いで第55特別議会で議論されることになります。

大きな問題を孕んでいた目的遂行罪についてはほとんど議論されなかったものの、会期が短かったこともあって改正案は審議未了で廃案となります。


 
しかし、原法相は諦めませんでした。

議会の承認を得ずに政府が制定する「緊急勅令*3を抜け道としたのです。

その要件に鑑みて明らかな濫用であり、田中内閣議会軽視との批判を受けますが、枢密院審査委員会第6回審査会において同勅令は5対3の僅差で可決されます。

さらに本会議での審議が行われますが、このとき昭和天皇枢密院史上初めて「如何程遅くなりても差支なし、議事を延行すべし」との要望を出しており、表決が1日延ばされました。

しかしながら、最終的に反対5賛成24の賛成多数で緊急勅令は可決されます。

そして事後の議会では目的遂行罪や法案改正以前に取り締まりを充実させることなどが議論されますが、議会多数を占める政友会は討議を打ち切り、賛成249反対170で事後承認が成立します。

 

(当ブログのコメント:

1928年の第55議会(5月6日閉会)で、特高警察の大拡充の追加予算が認められ、それとともに、思想検察(裁判所のチェックを外して、独自権限で犯人の逮捕状を発行できる機関)の創設の経費が認められる。(「思想検事」2000年9月20日発行(荻野富士夫著)34ページ))

 

  • 改正後の運用


 
改正から3ヶ月後には民政党の浜口内閣が成立し政権交替が起きます。

浜口政権は当初社会運動に対する取り締まりについて柔軟な姿勢*4を見せますが、1930年2月の第三次共産党検挙を機に挫折します。

同検挙においては共産党外郭団体に目的遂行罪が適用され、治安維持法の拡大の一端を示しています。

裁判の場でも目的遂行罪は存在感を示しました。

1931年5月20日の大審院判決では、当人の活動が結社の目的に合致すると客観的に判断できれば(主観的な意図がなくても)目的遂行罪は成立するとの判断がくだされます。

検察や警察による恣意的な運用が認められたも同然の判決でした。

 

 

---引用:治安維持法とゲーム規制--- 

治安維持法

裁判所のチェックを外して犯人を逮捕しました。


-----引用-----------

 共謀罪は自白で立証することになるので、自白調書さえ取れれば有罪にできる。捜査機関は長期間の身柄拘束をして取れるまで取り調べるでしょう。
-----引用おわり------


治安維持法は、犯罪の理由を政治思想としましたので、

犯人の自白が必ず「証拠」として必要になりました。

 

「犯人の自白」を、刑事犯の証拠にした治安維持法は、

思想を取り締まるので、冤罪を生まないよう、

厳密な取り調べで犯人かそうで無いかの区分けをしたようですが、

それでも、かなり冤罪が多かったと聞いています。

 

A:治安維持法 第18条 ① 検事ハ被疑者ヲ召喚シ又ハ其ノ召喚ヲ司法警察官ニ命令スルコトヲ得

検事が司法警察官に命令して逮捕(召喚)状を発行させる。

(中略)

③ 召喚状ノ送達ニ関スル裁判所書記及執達吏ニ属スル職務ハ司法警察官吏之ヲ行フコトヲ得

司法警察官は裁判所の権限を持って逮捕(召喚)状を発行することができる。


治安維持法は実質的に、裁判所を外して、警察官だけの独断で犯人を逮捕できたので、大きな弾圧を生みました。

 

「思想検事」(岩波新書)「荻野富士夫 著」

に、治安維持法が詳しく書いてありました。


(207ページ)

治安維持法の特徴は、単に法的な処罰だけでなく、

>より広く社会的な処罰ないし威嚇としても機能したことにあった。

・・・

>国法にふれたという嫌疑をかけられるということは、

>倫理的には悪人、ひとでなし、信仰上からは罪人、

>非国民、はなはだしい場合、公敵、売国奴になってしまう。

 

治安維持法の前身の「集会条例」に類似する規定もあるようですので、

児童ポルノ単純所持違法化法案などの、治安維持法と同じく

裁判所のチェックを外して逮捕するという、令状主義に反する法案には気をつける必要があると思います。



今の日本の公安警察は、戦前の治安維持法の実行部隊をそのまま引き継いでいるそうです。

警察には、今も、戦前の治安維持法を再現しようとする勢力が根強くあるそうです。

今も、戦前の治安維持法を引き継いだ憲法違反の治安律法が多数あり、

それらが戦前の治安維持法のように実施されていない理由は、ただ、


それ(治安維持法)に反対する多くの市民運動の存在だけが、

治安維持法の実施を抑えている、

きわどいバランスに日本があるようです。


「思想検事」(岩波新書)210ページに、以下のように書いてありました。

>だが、この治安体制の継承によってただちに戦前の状況が再現されるわけではない。

>それを許さなかったのは、破防法反対運動、そして60年安保闘争とつづく

>大衆運動の高まりであったし、

>いまも、かたちを変えつつ、ねばりづよく展開されるさまざまな市民運動である。

>つまりは戦後の民主主義の存在であり、

>それこそが戦前の再現を防ぐ最大の保障なのである。


現在の日本は、このように際どいバランスにあるようです。


安心な社会というのは、個々人の起こす問題を少なくする事と、

政治権力の起こす問題とを少なくすることで実現すると思います。

安心な社会を維持するために、

危険な「戦前の治安維持法」の実施と同様な体制を招かない事が

先ず第1に優先されると思います。

 -----------------引用おわり---------------------

 

 

1930年代に入り、治安維持法はその膨脹期に入ります。1928年から1940年にかけての検挙者数は6万5153人にのぼった一方で、起訴者数は5397名にとどまります。

治安維持法の運用においては、起訴・裁判を通じた処罰よりも身柄拘束に重点が置かれていたことが窺えます。

また31年から33年だけでこの期間の半分を占める3万9000人が検挙されますが、その背景には外郭団体への取り締まり強化がありました。

 

目的遂行罪を積極的に適用して、結社罪の適用が難しい外郭団体の摘発を行っていったのです。


 
他にこの時期には、大量増加する起訴されない検挙者を対象として転向政策の充実を目指した改正も試みられました。

司法省は思想犯の社会復帰を危惧し、予防拘禁も含めた協力な転向政策の実現を企図します。

予防拘禁の導入1934年改正案の中で司法省が最も重視した点の一つでしたが、特に貴族院で異論が噴出して同条項が削除されたため、小山内相らは両院協議会を開いて衆議院貴族院の対立を先鋭化させることで法案を廃案に持ち込みます。

不本意な法案が通過するよりもあえて廃案にする道を選んだのです。



 
さらなる拡大適用の端緒となったのが、1935年の第二次大本教事件でした。

公称40万人の信者が国家主義運動に参入することを恐れた内務省が取り締まりに踏み切ったのです。

本件は共産主義活動ではなく国家主義運動に治安維持法適用された唯一の事例であると同時に、

宗教団体への取り締まりが本格化するきっかけとなりました。

予審調書では出口王仁三郎が日本の統治者になることを目的としていたとの認定がなされ、内務省は「国体変革」の罪を大本教に強引にあてはめて宗教団体に治安維持法適用する前例を作ったのです。

その後仏教系・キリスト教系の団体が幅広く摘発されていきます。

しかしながら国家主義運動を対象とした取り締まりはその本丸である右翼団体に及ぶことはありませんでした。 

各団体が「忠君愛国」を掲げて天皇制を奉じている以上、警察は限定的な指導を行うことしかできませんでした。


 
前年の1934年の改正案では国家主義運動の取り締まりが争点になっていましたが、松本警保局長が右翼思想は共産主義と異なり体系化しておらず、思想として取り締まることが難しい。

テロを起こした右翼は一時的に集まったに過ぎず(恒久的な結社ではない)一時的の現象」であると答弁するなどし、結局右翼対策は盛り込まれませんでした。

またファシズム対策の一環として、1925年の成立時に削除された「政体変革」が政党の手で再度盛り込まれる可能性もありました。

しかし筆者は、自らの合法的政治変革の可能性を守るために規制対象から「政体変革」を削除した1925年の段階の政党に対して、1930年代政党は自らをテロから守るために「政体変革」を積極的に改正案に盛り込もうとしていたと指摘し、政党凋落を如実にあらわしていると述べています。

 

  • ここまでのまとめ

 

  内務省司法省法律と現状との間に齟齬を認めると、まず拡大解釈、ついで法改正を志向することで穴を埋めようとしました。

2度に渡る改正の試みは失敗しましたが、目的遂行罪を中心とした摘発の増加により、共産党・その外郭団体共に1935年までにほぼ壊滅します。

 

あらたな取締対象を開拓

 1937年6月の思想実務者会同で、東京地裁検事局の栗谷四郎が、検挙すべき対象がほとんど払底するという状況になっている状況を指摘し、特高警察と思想検察の存在意義が希薄化させるおそれが生じている事に危機感を表明した。

(1935年から1936年にかけて、予算減・人員減があった)

 そのため、あらたな取締対象の開拓がめざされていった。

 

治安維持法適用対象を拡大し、宗教団体、学術研究会(唯物論研究会)、芸術団体なども摘発されていきます。

 

こういった適用対象の成立当初の目的を逸脱した拡大は思想検事たちも認めるところであり、だからこそ彼らは改正を志向しましたが、もはやその改正は誰かの政治的リーダーシップのもとに行われるものではありませんでした。

 

思想検事の一人・中村義郎は、「制度というものの通弊で、ひとりでに増殖していく」と回顧しています。


 
筆者によれば、最大の問題は政党凋落でした。1930年代の各党は政争に明け暮れ、治安維持法を制御できないばかりかそれに守ってもらおうとすらする有様でした。

また陸軍の台頭についても筆者は言及しています。

人民戦線事件の背景には陸軍皇道派の影響が指摘され、内務省陸軍との関係で運用に恣意的にならざるを得なかったのです。

 

 

*1:第1条で指定されている国体変革などの事項を目的とした協議を行うことに対し課される罪で、第1条より量刑は軽い

 

*2:ただし日本国内において治安維持法のみで死刑を執行されたケースは存在しない。治安維持法適用された中で起訴者が死刑を科され唯一のケースはゾルゲ事件だが、本件については治安維持法違反ではなく国防保安法違反を理由として死刑が科された

 

*3:もちろん無条件に発動できるわけではなく、公共の安全を保持し災厄を避ける目的であること、議会が閉会中であること、緊急の必要性があることが要件とされ、また事前に枢密院の審査を受け事後に議会の承認を受ける必要がありました

 

*4:学生検挙者への寛容な処置、合法的な社会運動共産主義運動の峻別、思想犯に対する取り扱いの改善

 

共謀罪はなぜ過去3回廃案になったのか

共謀罪はなぜ過去3回廃案になったのか

2017年01月21日 保坂展人


 今年の通常国会に提出される法案のうち、過去3回廃案となった「共謀罪」に注目が集まっています。

政府は「テロ等準備罪」と名称変更して看板をかけかえましたが、骨格も内容も以前と大きな変更はありません。

対象犯罪を676とした上で提出すると伝えられてきましたが、最近になって「対象犯罪が広すぎるので、絞り込む」という話題が出てきています。


 私は、2005年から2006年にかけて、衆議院法務委員会で野党の一員として「共謀罪」をめぐる国会論戦を担いました。

2005年は、小泉純一郎内閣が突然の郵政解散で圧勝した後で、自民・公明の連立与党は圧倒的多数の議席でした。「数の力」からすれば、3回も廃案となるという結果を予想したメディア関係者は皆無に近かった状況です。


ところが、国会で議論をすればするほどに、政府・法務省提出の共謀罪への疑問はふくらみ、自民・公明の与党側からも、たびたび修正案が国会に提出される異例の事態となりました。

「数の力」では勝敗は明らかでしたが、あまりに筋が悪い法案だったことと、今回の「カジノ法」等のような形式的な特急審議ではなく、国会論戦にふさわしい議論を許容する「品格」が、当時の与党側にも存在していたからこそ、深く掘り下げた議論ができたのだと思います。


今の私に、「共謀罪はなぜ、過去3回廃案になったのか」をテーマに、「長文の大論文」を書く時間はありません。日々の仕事のかたわらで、当時の経験をもとに、再度国会に上程される「共謀罪」(テロ等準備罪)について言えることも加えて、このブログでお伝えしたいと思います。

1年半前の2015年11月20日、朝日新聞の「天声人語」に、「共謀罪」をめぐる国会論戦が取り上げられました。


また共謀罪なのか 2015年11月20日 朝日新聞(天声人語)


目くばせとまばたきの違いを述べよ。2006年5月、国会でこう質問したのは当時の保坂展人(のぶと)衆院議員だ。法務省の局長は直接には答えず、保坂氏が代わって説明した。


「目くばせは意思の伝達行為であり、サイン。まばたきは生理現象だ」


▼珍問答に見えるが、真面目な論戦である。


共謀罪」の新設が焦点だった。犯罪を実行しなくても、相談して合意するだけで罪に問えるようにする法案だ。


会話による相談がなくても、誰かが誰かに目くばせするだけでも共謀は成立しうる、というのが法務省の見解だった


▼先の局長はさらに、まばたきでも成立すると答えたため、保坂氏に追及されることになった。生理現象が共謀罪になるなら、人類はみな共謀罪ではないかというわけだ。人権侵害の危険性をよく表す攻防だった


▼そもそも日本では、犯罪は「既遂」での処罰が基本で、「未遂」は例外、着手前の「予備」はもっと例外だ。さらにその前段階の共謀で罪を問うのはこの原則に反するとの批判があった。政府はこれまで3回法案を出し、いずれも廃案になっている


▼パリのテロ事件を受け、自民党首脳が再び共謀罪に言及し始めた。過去の法案並みに、万引きなども含む幅広い処罰を考えるつもりか、テロ組織対策に限るのか。現段階ではわからない。いずれにせよ、性急に進めていい話ではない


公明党山口那津男代表は昨日の会見で、慎重な検討を求めた。ここは自民党に目くばせをし、自制を促してほしいところだ。


この「共謀罪は一定の条件が整えば『目配せ』でも成立する」と答弁したのは、大林宏法務省刑事局長(当時)でした。

大林氏はその後、札幌高検検事長、東京高検検事長を歴任して、2010年には検察トップである検事総長に就任しています。

「目配せでも共謀罪が成立する」という大林刑事局長の答弁は、驚きと共に大きな反響を呼びました。

それまで、共謀罪における共謀は「犯罪を綿密に計画し、具体的に実行できるまで練られたもの」と説明されていました。

会話を交わさなくても、「犯罪の計画実行についての内容を犯罪組織が共有されている状況」であれば,、「目配せ」(=サイン)でも共謀罪が成立するとした答弁は、従前の理解を塗り替えたものとなりました。


(参考)→「目配せ」でも成立する共謀罪と特定秘密保護法案 - 太陽のまちから - 朝日新聞デジタル&w 2013年12月3日


天声人語」にもありますが、刑法によって、犯罪は実行された「既遂」の段階で処罰されるのが通常で、例外的に「未遂」について処罰され、特定の重大な犯罪についてのみ例外中の例外として「予備」で処罰されます。

この手前の、犯罪を話し合ったり計画する「共謀」の段階で処罰しようという「異次元の法体系」を導入しようとしたのが、過去3回廃案となった共謀罪の内容でした。


報道では、「テロ等準備罪」と名称を変えたにもかかわらず、共謀罪を創設する「対象犯罪が広すぎる」という議論が紹介されています。まずは、この議論を追ってみます。


「共謀罪」対象676から50超減 政府原案修正、提出へ(2016年1月15日・産経新聞)

 組織的な重大犯罪の計画段階で処罰対象となる「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案をめぐり、対象犯罪を676とした政府原案を修正し、過失犯や結果的加重犯など50罪以上を除外する方向で検討されていることが14日、関係者への取材で分かった。公明党内から対象犯罪を絞るよう求める声に配慮したもので、事前に犯罪を計画できない業務上過失致死罪など50罪以上を除外する方向で法務省などが調整している。


このニュースを見た時、「対象犯罪676では広すぎるから、50に絞り込んだのか」と受けとめました。

よく記事を読めば、「676-50=626」ということでした。

例示されているように「業務上過失致死罪」の共謀罪とは、実際にはありえないことは少し考えてみればわかります。

「業務上過失」を複数人で相談・計画(共謀)した場合には、「過失を偽装した故意」であり、そもそも「過失」ではなくなるからです。

過去3回廃案となった議論の中で、とっくに明らかになっていた事柄です。さらに新たな数字が出てきました。今度は「300」です。


共謀罪:対象半減へ...犯罪300前後に 政府、公明に配慮 - 毎日新聞(2016年1月17日)

 組織犯罪の計画段階で処罰を可能とする「共謀罪」の成立要件を絞り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法の改正案について、政府が対象犯罪を原案の676からテロの手段となり得る犯罪を中心に300前後に減らす方向で調整していることが、政府関係者への取材で分かった。対象犯罪の多さに懸念を示している公明党に配慮した形で、今後の与党内協議の行方が注目される。


300になったから、文字通り「半減」ということになります。過去にさかのぼると、3度目の廃案の後で、2007年に自民党法務部会「条約刑法検討に関する小委員会(笹川尭委員長」で、さらに「123から155」まで削減するという修正案が了承されていました。


「テロ等謀議罪」を了承/「共謀罪」修正で自民部会 | 全国ニュース | 四国新聞社 (2007年2月27日)

 「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法などの改正案の修正作業で、自民党法務部会の「条約刑法検討に関する小委員会」(笹川尭委員長)は27日、共謀罪を「テロ等謀議罪」と変更し、対象犯罪を政府案の600以上から123-155と4、5分の1程度に絞り込んだ「修正案要綱骨子」を了承した。


小委員会の早川忠孝事務局長は、修正案を来月中にも民主党側に示し、実務者レベルでの協議を進める考えを示した。継続審議となっている政府案の修正が狙いだが、参院選前の法案成立は困難視されている。


小委員会では共謀罪の名称を「テロ・組織犯罪謀議罪」と改名することで大筋了承していたが、さらに短縮。対象犯罪も修正原案では116-146だったが、傷害や窃盗などを加えた。


過去3回も、廃案になった共謀罪法案は、複数回にわたって自民・公明の与党側修正案も提示されてきました。2007年2月の段階では、対象犯罪をさらに絞り込んで「テロ・組織犯罪の謀議罪」として修正案をまとめようと自民党法務部会小委員会で決定をみたことも、記憶に刻んでいただきたいと思います。


共謀罪を創設するにあたり、国会審議に入ってみると、 対象犯罪が広すぎるという懸念を当時の与党側も有していたことがわかります。しかしながら、当時から10年後に政府がとりまとめた共謀罪を創設する「テロ等準備罪」は、676もの対象犯罪を列挙している内容でありながら、国会提出前に「50を減らす」「300まで半減」という議論が報道されること自体が、不可解でならない。

バナナの叩き売りのように、対象犯罪を減ずれば問題は解消するというほど、問題点は浅くはないと感じています。

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そもそも、共謀罪、陰謀罪はすでに限定的に存在しています。

共謀罪爆発物取締罰則第4条、特定秘密保護法第25条第1項(特定秘密の取扱業務従事者による同秘密の漏洩等) 第2項(特定秘密を業務により知得した者による同秘密の漏洩)等にあり、

ほぼ同一の陰謀罪については、刑法第78条(内乱) 、第88条(外患誘致又は外患援助)、

第93条(私戦)、破壊活動防止法第39条(政治目的のための放火)、第40条(政治目的のための騒乱等) 等にあります。


また何らかの準備行為をともなう予備罪については、組織的な犯罪及び犯罪収益の規制等に関する法律第6条(組織的な殺人) 第10条3項(犯罪収受等隠匿)、

銃砲刀剣類所持等取締法第31条2(けん銃・小銃・機関銃又は砲の輸入)、航空機の強奪等に関する法律第3条(航空機強奪等)、

化学物質の禁止及び特定物質の規制等に関する法律第40条(化学兵器の使用等)、

41条(化学兵器の製造)、サリン等による人身被害の防止に関する法律第5条第3項(サリン等の発散)、

41条(サリン等の製造等)、放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律第3条第3項(放射性物質の発散等)、

第6条第3項(特定核燃料物質の輸出入等)...。

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およそ「テロ」に関連するのではないかと考えられるすでに存在する共謀罪・陰謀罪・準備罪を列挙してみました。ところが、法務省によるとまだ「穴」があるといいます。

「例えば人身売買、詐欺(刑法)、航空機の危険を生じさせる罪(航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律、人質による強要などの罪(人質による強要行為等の処罰に関する法律)、営利目的の覚醒譲渡(覚せい剤取締法)には、予備罪、共謀剤等が設けられていない」と指摘していると聞きます。

テロに関連して現存する共謀罪・陰謀罪・予備罪に穴があると認められるなら、その穴をふさぐ立法措置をしてはどうでしょうか。


金田法相、テロ等準備罪「一般人は対象とならない」(TBSニュース2017年1月20日)

 テロなどの組織犯罪を計画した段階で処罰の対象となる「共謀罪」。その構成要件を厳しくした「テロ等準備罪」を新設する法案について、金田法務大臣は「一般の人が対象になることはあり得ない」と強調しました。


「一般の方々が対象となることはあり得ない」(金田勝年法務大臣


これまでの「共謀罪」から名前を変え、構成要件を厳しくした「テロ等準備罪」。「共謀罪」は、集団で重大な犯罪を行うことを合意した段階で罪になるというもので、過去にも複数回、国会に関連法案が提出されましたが、全て廃案となりました。


「適応対象となる団体をテロ組織、暴力団、薬物密売組織など組織的犯罪集団に限定」(金田勝年法務大臣


今回、政府は、対象者を限定した上で、さらに対象とする罪も絞り込むことも検討しています。


政府は、こうした説明を繰り返して、「ああテロ対策を厳重にする法案で、一般の人とは無縁のものだ」という印象を広げようとしています。

「いやいや問題がある法案」だと疑問を投げかけると、「テロ対策に反対するのは、どうしてなのか」という声も出てくることでしょう。

過去3回、廃案になった共謀罪を看板替えして、「テロ等準備罪」として国会提出するのであれば、立法目的は「テロ対策」であるはずですが、これまで見てきたように、ほとんどのテロ行為を実行段階の手前の共謀、予備、準備等で処罰する法律はすでに存在し、

あえて「穴」があるとすれば、そこに限って立法措置をするべきだと思います。

これで、「テロ対策」は強化されるはずですが、政府は、こうした選択肢をとらずに「676の対象犯罪」に包括的な共謀罪を設ける過去3回廃案となった法案と同じ体系で国会提出を進めています。


実は「テロ等準備罪」という名称の本質は、「テロ」ではなく「等」に込められているのではないでしょうか。

「テロ対策」であれば、なぜ「テロ準備罪」とすっきりと呼べないのでしょうか。

「テロ」の後に「等」をつけることで、

「テロ対策」以外の「等準備罪」と呼ぶ広い範囲で共謀罪を成立させておきたいという意図はないでしょうか。


かつての国会論戦を思い起こすと、そもそも、日本には「共謀罪」を必要とするような社会状況(立法事実)はないというのが、法務省の説明です。

それでは、なぜ共謀罪を創設するのかと問えば、国際組織犯罪条約を批准するためには共謀罪が必要だからだという説明が、かつても今も繰り返されています。


ところが、国際組織犯罪条約はテロ対策ではなく、薬物取引やマネーロンダリング(資金洗浄)の組織犯罪対策を目的としています。

すでに、187の国・地域がこの条約を批准していますが、条約締結のために国内法で共謀罪を創設した国はどのぐらいあるのでしょうか。


「共謀罪」新設、2国だけ 外務省説明、条約締結に必要なはずが:朝日新聞 2017年1月20日


 犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案をめぐり、外務省は19日、他国の法整備の状況を明らかにした。政府は「国際組織犯罪防止条約の締結のため、国内法の整備が必要だ」としているが、すでに条約を結ぶ187の国・地域のうち、締結に際して新たに「共謀罪」を設けたことを外務省が把握しているのは、ノルウェーブルガリアだけだという。


民進党内の会議で外務省が説明した。英国と米国はもともと国内にあった法律の「共謀罪」で対応。フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、中国、韓国は「参加罪」で対応した。カナダはすでに「共謀罪」があったが、条約の締結に向けて新たに「参加罪」も設けたという。


民進党は187カ国・地域の一覧表を出すよう求めていたが、外務省の担当者は会議で「政府としては納得のいく精査をしたものしか出せない。自信を持って説明できる国は限られている」と述べた。


政府はこれまで、条約締結のためには「共謀罪」か、組織的な犯罪集団の活動への「参加罪」が必要だと説明してきた。20日召集の通常国会に法案を提出する方針だ。(金子元希)


国際組織条約のために国内法を整備した国は、わずかであることがわかります。新たに「共謀罪」を創設しなくても、国際組織条約を批准することができるという見解が、日本弁護士連合会の「共謀罪新設に関する意見書」(2006年9月)で述べられています。


わが国においては、組織犯罪集団の関与する犯罪行為については、合意により成立する犯罪を未遂前の段階で取り締まることのできる処罰規定が規定され、整備されているのであり、新たな立法を要することなく、組織犯罪の抑止が十分可能な法制度は既に確立されている。


したがって、政府が提案している法案や与党の修正試案で提案されている共謀罪の新設はすべきでない。それでも犯罪防止条約を批准することは可能である。


10年の歳月を経て、かつての国会論戦を思い起こしながら書き出したら、次々と「書くべきこと」が連なってしまいました。まもなく、10年ぶりの本格的な国会論戦が始まりますが、さらに必要な論点があれば次の機会に記したいと思います。3回廃案になったのは、相応の理由があるということを御理解いただけたでしょうか。時間の関係で、すべてを書くことはできませんでした。以下の書籍も参考にしていただけたら幸いです。


(参考)


共謀罪については、新刊で私も共著者となった『共謀罪なんていらない』(合同出版) と、3回目の廃案となった国会論戦の直後に書いた『共謀罪とは何か』(2006年10月・岩波ブックレット)が出版されています。新刊本で私の書いた部分と、10年前のブックレットは一部重複していますが、どちらかをお読みいただけたら幸いです。


日弁連は共謀罪に反対します(共謀罪法案対策本部)

 

1945年

 占領軍の指揮官のマッカーサーは、日本の徹底改革&天皇制維持の姿勢を決めていた。ワシントン政府は、日本の改革・天皇制いずれにもフラフラしてた。結局はマッカーサーが独断専行で決めていく。

 そのマッカーサーを、日本国民は熱烈歓迎する。
ここで労働基準法を作り組合活動を合法化し、戦前・戦中に拘束されていた社会主義者共産主義者が釈放される

1945年10月4日、

 マッカーサーから治安維持法共謀罪)の廃止を要求された日本の東久邇内閣は、それを拒絶し総辞職した。

 すなわち、日本の支配層は、敗戦後に、弾圧した国民の復讐を恐れ、日本占領軍に逆らってでも治安維持法を守ろうとした

 

 しかし、戦後にアメリカから与えられた民主主義体制によって日本の治安が良好に保たれたので、

戦前の治安維持法共謀罪)も、共産主義者の暗殺行為も、思想善導も必要無かった。

 

「児童を保護するため」と言った児童ポルノ規制法は、実際は、

「児童ポルノ単純所持罪は児童を逮捕するための法律かも」

でした。

http://sightfree.blogspot.jp/2014/03/blog-post.html

(このグラフの元データは、警察庁の生活安全の確保に関する統計のうち、「平成25年中の少年非行情勢について」の報告による)

 

同様に、「国民をテロから保護するため」と言うテロ準備罪は、

「国民を逮捕するための法律」のようです。

 

また自民党は、テロ準備罪(治安維持法)の成立に向けて、以下の憲法改悪案で運用したいと考えているようです。

憲法36条)公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

自民党案では:「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、これを禁ずる。」に変えます。
テロ準備罪(治安維持法)の運用等で止むお得ないと総理大臣(安倍)が判断した場合は、拷問を許可するようです。